イケメンが彩る中国時代劇、女性の生き方がテーマの現代劇など多様な中国ドラマが日本上陸
女性チャンネル♪LaLa TVの中国ドラマ編成・宣伝担当者に聞くCS放送局の大切な役割
2022年12月28日 18:15 17
近年、中国ドラマの人気上昇に伴い、日本でも歴史ものだけでなく、ラブ史劇、ブロマンス、サスペンスなど放送・配信される作品が多様化してきた。その幅広いジャンルの多くをカバーし放送しているのが「女性チャンネル♪LaLa TV」だ。LaLa TVでは、中国ドラマの人気を牽引している時代劇だけでなく、家族や女性の生き方をテーマにしたヒューマンドラマも積極的に放送。ドラマファンの間で存在感を発揮している。
今回、映画ナタリーではLaLa TVの編成・宣伝担当の渡辺江見にインタビューを実施。同局で中国ドラマが放送されるまでのプロセス、作品を決めるときに大切にしていること、サブスク全盛期における放送の役割などを語ってもらった。
取材・
「中国の役者さんってこんなにかっこいいの!?」とすごく衝撃を受けました
──「女性チャンネル♪LaLa TV」がどんなチャンネルなのか、コンセプトや強みを教えてください。
女性向けの総合エンタテインメントチャンネルです。男性にもご覧いただいていますが、視聴者の90%が女性で、大人世代の方が比較的多いですね。現代は、女性が年齢で「こうでなければならない」と区切られる時代ではなくなりました。そんなエイジレス時代の女性にワクワクやドキドキ、好奇心を満たしていただけるよう、世界の最新・名作ドラマから食・旅・音楽などこだわりのライフスタイルの情報までをお届けしています。女性雑誌を見ているようなラインナップを目指していますね。
──テレビ局の編成というのはどんなお仕事ですか?
私は、もともとはプロモーションをメインで担当していたのですが、自らコンテンツを見つけ出すことにも興味を持ち、編成も兼任するようになりました。編成は簡単に言うと、作品の情報をキャッチアップして、LaLa TVで放送できるかどうか交渉のテーブルに載せるという仕事です。海外ドラマの場合、具体的には、まず日本にまだ来ていない作品、つまり本国で制作発表や放送中という段階から作品の情報を集めたり、日本で権利を購入している企業がないかリサーチするところから始まります。情報は、年に数回開催されるコンテンツマーケットを通じて得たり、インターネットで探すこともあります。中国ドラマは韓国ドラマと比べて情報を得られるサイトがまだ少ないため、SNSやレビューサイトの一般視聴者の感想も参考にしています。中国ドラマは人気が出てきたところなので、「こんな作品がある」「こんな俳優さんがいる」と、視聴者の方と一緒に育てていきたいですね。公式サイトでもリクエストを常に受け付けていますので、これぞという作品があればぜひお知らせください。
──渡辺さんは宣伝も担当されています。まさに作品が日本に入るところから視聴者の手に届くまでを一手に引き受けてらっしゃるのですね。
そうですね。宣伝では、海外作品の場合は放送月が決まったら、その3~4カ月前から作品をどうアピールできるかなどの資料作りを始めます。皆さんがご覧になるテレビ画面のタイムテーブルも作っていますね。LaLa TVでは国内ドラマも取りそろえているので、キャストのインタビューのセッティングなども行います。
──では担当はジャンルや製作国ごとに分かれていないのですか?
オールジャンルでやっています。今、編成担当が9名、宣伝担当が5名、それぞれが「何でもできるプロフェッショナル」を目指してジャンル問わずにやっています。
──いろんな番組を担当されているのですね。中国ドラマでは、過去にどんな作品を担当されましたか?
たくさんあるのですが、中でも非常に印象に残っているのが、2020年にLaLa TVで初放送した
──シュー・カイ! 彼の登場は中国イケメン史から見てもとても衝撃的でした。中国の伝統的なイケメン観を感じさせつつすごく洗練されていて、幅広い年齢層に支持されていますよね。中国で「国宝級イケメン」と呼ばれているぐらいですし。
そうですよね。イケメンで言うと、同じ年の「お嬢さま飄々拳~プリンセスと御曹司~」も「主演のビー・ウェンジュンがすごくかっこいい!」「こんなキラキラ、胸キュンの中国ドラマがあるんだ!」という発見がありました。
──ビー・ウェンジュンはスタイルもオーラもまるで少女マンガの王子様みたいで、「ご出身は二次元ですか?」と思うくらいです。「お嬢さま飄々拳」のキラキラで甘酸っぱいストーリー展開との相性は最高でした。ほかにはいかがですか?
現代ドラマでは、2021年7月に編成した「30女の思うこと ~上海女子物語~」も印象深いですね。現代中国を舞台に懸命に生きる女性を描いたドラマなのですが、実はこのような作品を放送するのはLaLa TVでは初めてのことだったんです。これまでの中国ドラマというと、宮廷もの、ラブ史劇が多く、現代ものはあってもラブコメくらいしかありませんでした。その中で、「30女の思うこと」の登場は中国ドラマの幅が広がってきたことを感じました。現代ドラマは、現在放送中の「それでも、家族~All is Well~」は家族がメインテーマ。来年1月に放送予定の「猟罪図鑑~見えない肖像画~」は「相棒」のような年の差バディものサスペンス、ほかにも医療ものなど、多種多様なジャンルがワッと生まれてきている。傾向として多ジャンル化しているなと思います。
──ジャンルが広がっているということは、中国ドラマ人気がかなり高まっていると見ていいでしょうか? 現場ではどう感じられますか?
非常に人気が高騰しています。各社で争奪戦状態ですね(笑)。人気の高まりに伴い、LaLa TVでも放送枠が増え、LaLa TV公式サイト上でも2021年頃から中国ドラマが独立したカテゴリになりました。中国ドラマ人気の流れとして、「陳情令」の登場は非常に衝撃的でした。一大ブームになって、その後、「山河令」に引き継がれて。
──「陳情令」と「山河令」はLaLa TVでも放送されましたが、反響はどうでしたか?
「陳情令」はナビ番組の反響が大きかったです。作品自体は、すでに各所で放送されていたので、「LaLa TVで何か新しいことはできないか」とメイキング映像を含めた30分のドラマナビ番組を制作しました。ビッグタイトルだけあって、制作にはかなり頭を悩ませたのですが、放送後、視聴者からの「いい番組を作ってくれた!」という声に社内の制作チームがとても喜んでいましたね。
──視聴者の立場で言うと、ナビ番組の放送はありがたかったです。未視聴の方はもちろん、視聴済みの方も復習にもなるので、機会があれば再放送をお願いします(笑)。では、「山河令」のほうはいかがでしたか?
「山河令」は爆発的な反響をいただきました。傾向として中国ドラマは、韓国ドラマほどSNSでシェアされないのですが、山河令はTwitterでたくさん応援いただき、SNSとの親和性が高い作品だったと思います。私たちも、イケメンが出ている作品は、SNSでの反応がいいので情報発信に力を入れています(笑)。
「こんなイケメンがいますよ」と紹介できたらいいねと言うのがスタート
──イケメンと言えば、「中国のイケメン観るなら♪女性チャンネル LaLa TV!」の特集がドラマファンの間で話題になりました。ストレートなのが清々しくて私も好きです。いつ頃からどういうきっかけで始まったのですか?
2021年7月です。第1弾では、「蝶の夢~ロマンスは唇から~」のローレンス・ウォン、「琉璃」のチョン・イー、「万華楼〈ばんかろう〉~金糸が紡ぐ運命の恋~」のライ・イーとファン・イールンの4人をピックアップしました。きっかけは、2021年5月の「天舞紀~トキメキ☆恋空書院~」のシュー・カイの反響が非常に大きかったことです。SNS上で「許活(シューカツ)」としてファン活動をされている方がたくさんいるのを知り、中国ドラマの視聴者の中に俳優にときめく方がこんなにいるのであれば、シュー・カイのほかにも「こんなイケメンがいますよ」と紹介できたらいいねと言うのがスタートですね。イケメン特集は継続して行っていますが、おかげで視聴者、Twitterのフォロワーから「イケメン見るならのLaLa TV、〇〇の出演作をよろしく」とリクエストされるようになってきています。
──ちなみに渡辺さんはイケメン特集で取り上げた俳優では、誰が好きですか?
シュー・カイですね。やはり最初に衝撃を受けたのはシュー・カイなので、私の中で推し中の推しです(笑)。普段あまりコメントを出されないのですがLaLa TV独占で動画コメントを頂戴したときは、とてもうれしかったです。
──LaLa TVでは華やかなイケメン作品が充実している一方で、「30女の思うこと」のような社会テーマを掘り下げたいわゆる骨太な作品も多く放送しています。骨太系ドラマもやっていこうというきっかけや、かける思いを教えてください。
2年ほど前から、リサーチの中で、中国で家族や社会問題をテーマにするなどさまざまなジャンルの作品が出てきていることがわかり、変革期を迎えていると感じていました。その中で「30女の思うこと」「それでも、家族」「家族の名において」などの、国境を越えて共感できる、ハートに刺さる作品と出会ったんです。LaLa TVの視聴者は家族をお持ちの方が多く、心に訴えかけるような作品を好む方も多い。ちょうど家族ものだと韓国ドラマでは実績があったので、それなら中国ドラマでもハートに刺さる作品をぜひ届けたいとスタートしたのがきっかけです。
以前と比べて、中国の現代ドラマのクオリティは格段に上がっています。私が初めて中国ドラマに触れた2014年頃は、まだ韓国ドラマほど成熟していない印象がありました。でもここ数年で、内容はもちろん、演出やファッションもおしゃれで、俳優も日本人がキュンキュンしちゃうようなビジュアルやスタイルの方が出てきましたね。
──そうなんですね。ちょうど渡辺さんが初めて中国ドラマをご覧になった頃、中国では韓流エンタメが大旋風を起こしていて、ドラマやアイドル、ファッションも韓流が流行っていました。渡辺さんはお仕事で韓国ドラマにも携わられていますが、今の中国ドラマと韓国ドラマに共通点を感じることはありますか?
演出面でたまに感じることがありますが、中国は中国で独自性がありますね。「それでも、家族」や「30女の思うこと」などのヒューマンドラマは、中国の現代社会を映し出していますし、引き続き中国でしか作りえない作品がたくさん出てくるのかなと思います。まだまだ伸び代があるジャンルではないでしょうか。
──成長中のジャンルもどんどん放送していく、とてもチャレンジングな印象を受けます。放送後の手応えはどうでしょうか?
まだ手探りですね。LaLa TVでは中国ドラマの歴史ものは長く放送していて、そちらの傾向は見えているのですが、現代ドラマは本当に手探り状態です。視聴者の皆さんと一緒に「こんなドラマもあるね」と発見しながら編成できるといいなと思っています。
何よりも視聴者に合うものでないと意味がない
──どんどん新作が日本上陸していますよね。最近では早いものだと中国で放送数カ月で日本初放送というケースもありますが、放送のタイミングはどう決めているのですか?
全体の流れとほかの放送作品とのバランスですね。LaLa TVでは、いろんなジャンルを観られるからこそ価値があると思うので、偏らないように編成しています。例えば、この月は韓国ドラマがラブコメだから、中国ドラマの史劇はかための宮廷もの、現代ドラマはヒューマンドラマにしようという感じですね。
──悩んだ末に作品調達の交渉をあきらめたということはありましたか?
あります。日本でもとても人気の俳優が主演で、いいストーリーのドラマがありまして。個人的にはすごく面白かったんです。でも、LaLa TVの視聴者には史劇ジャンルの人気が高いことを考えるとちょっとファンタジー色が強い印象が否めなかったので……。やはりどんなに面白くても視聴者にマッチしていない作品はあきらめざるを得ないですね。その作品に限らず、ほかのジャンルでもあきらめたものはありますね。何よりも視聴者から愛される作品でないと意味がないので。
新しい発見や驚きを感じていただけるようなドラマの編成をしていきたい
──「好みに合う」という点では、今は動画配信サービスやレンタルDVDで、視聴者自身が自分に合うものを探せるのではないでしょうか。その中で放送の価値や、放送ならではの楽しみ方というのはどういうふうに考えたらよいでしょうか?
動画配信サービスには一度にいろんなものの中から選べるというよさがありますよね。ただ私の母の例なんですが、どれがいいのか選びきれずに迷いに迷って、まだ同じ作品を繰り返し観ているなんてこともあって。
───私も探すだけで30分くらい経っていて、探し疲れて結局同じ作品を観たり、「この時間で何か1話観れたな」ということがよくあります。
ありますよね。それは、たくさんあるがゆえの迷いだと思うんです。その中でCS放送局の役割というのは「我々がおすすめしたいのはこれです、この中国ドラマを本当に観てほしいんです」「今、旬の作品はこれですよ」「こういうジャンルもあるんですよ」とお伝えすること。つまり、ナビゲーターの役割だと思っています。
同席した担当編集 確かに配信作から“お宝”を自分で探し当てるのもすごく楽しいですが、自分1人のアンテナだけでは本当に出会うべき作品を見つけられない場合もありますよね。好みじゃなさそうかも……と思っていた作品がテレビ放送をきっかけに、お気に入りのドラマになったりもします。同じ作品を観ている方の実況を見るのも楽しい。
──放送だからこその出会い、ありますよね。配信だと視聴履歴からのおすすめが便利ですが、ソースがあくまで視聴履歴なのでその人の興味を100%カバーしているとは限りません。私も配信終了直前に作品の存在を知り「この情報を知っていたら観ていたのに」と悔しい思いをしたことがあります。
視聴者への情報発信でも、LaLa TVの公式サイトでは、丁寧な作品解説を心がけていますし、プレスリリースの発信やメディアでの紹介なども力を入れています。単に作品をボーンと世に出すだけでは、次々と日本上陸する作品の中に埋もれてしまって、視聴者に知っていただく機会がないまま消えてしまう……。それって、すごくもったいなくて残念なことだと思うんです。そんな悲しい思いを作品やファンにさせないよう、私は少なくともLaLa TVが編成した作品に関しては、「これでもか!」というほどしっかり作品のよさを伝えていきたいと思っています。
──めちゃくちゃ心強いです(笑)。では、今後、視聴者にどのような中国ドラマを届けたいと考えていますか?
新しい発見や驚きを感じていただけるようなドラマの編成をしていきたいですね。「このドラマがあるから仕事をがんばろう、家事をがんばろう」というような楽しみや原動力にしていただけると同時に、「こんなドラマもあるんだ!」とワクワクしていただけるといいなと思います。
今後の主なラインナップ
「山河令」
2022年12月30日(金)12:00~1月1日(日・祝)24:00
※一挙放送
※全36話
「猟罪図鑑~見えない肖像画~」
2023年1月4日(水)スタート 毎週月曜~金曜 21:00~22:00
※全20話
「陳情令」
2023年1月6日(金)再放送スタート 毎週金曜 28:00~
※4話連続放送
※全50話
「烈火士官学校 ~ステキ男子とイケメン女子」
2023年1月14日(土)再放送スタート 毎週土曜 20:00~
※4話連続放送
※全48話
「策略ロマンス~謎解きの鍵は運命の恋~」
2023年2月1日(水)スタート 毎週月曜~金曜 20:00~21:00
※全34話
「マイ・ヒーリング・ガーデン~僕の恋する葡萄園~」
2023年2月1日(水)スタート 毎週月曜~金曜 21:00~22:00
※全36話
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