ホラーやゾンビをこよなく愛する著名人らにお薦め作品を紹介してもらうリレー連載「今宵も悪夢を」。集まった案内人たちは身の毛もよだつ恐怖、忍び寄るスリル、しびれるほどの刺激がちりばめられたホラー世界へ読者を誘っていく。
第30回は
文
ポイントは脳みそクッキング!食テロなシーンが毎度登場
みなさん、こんばんは。「今宵も悪夢を」案内人のすいか生肉ゾンビが大好きな南波志帆です。
私は遊び心とユーモアがあって、どこか笑えるゾンビ作品が大好物で、勝手にひとり、このホラーコラムでもお届けしております。そんな私ですので、今回もホラーと言っていいのか若干怪しくはありますが、愛しのゾンビたちが出てくる、大好きなドラマ「iZombie」をご紹介したいと思います。
こちらのドラマは、ゾンビの検視官が死体の脳みそを食べることにより、その記憶や性格や能力や癖を継承して、刑事の相棒(人間)と力を合わせて事件を解決してゆくという、ゾンビ要素だけでなく、クライムドラマの要素や、なんならコメディやラブストーリーの要素も含んだ、とんでもなく面白いドラマです。
この世界に生きるゾンビたちは定期的に脳みそを食べることで、所謂ゾンビ的な醜い見た目にならずに済み、人間の時のままの知能で、喋ったり、恋をしたりします。ただ、ゾンビになってしまった瞬間に肌や髪も白くなってしまうから日焼けサロンに通い、ヘアカラーをし、味覚も鈍くなるので何を食べるにも激辛のホットソースをかけまくり、なんとか人間たちにその存在を知られないように奥ゆかしく生きています。健気で愛しいゾンビたちです。
注目すべきは、主人公のオリヴィア・“リヴ”・ムーアを演じる、ローズ・マクアイヴァーの演技力! 凄すぎる……! 新しい脳みそを摂取する度に、実際に別の人が乗り移ったとしか思えないほど、ころころと人格が変わります。まるでカメレオンのように七変化! そこが見どころです。スーパーキュート。
そして、もうひとつ。私の大好きなポイントは、脳みそのクッキングシーン。シーズンが進むにつれて、脳みその食べ方が進化して、あらゆる料理にして、ポップにキュートに楽しみながら食べているのが最高なんです。アメリカンなピザやフレッシュなセロリの上に刻んで可愛く乗せたり、オムレツの具にしたり、唐揚げにしてケチャップにつけたり、チーズバーガーにしたり、手巻き寿司にしたり、ゾンビ作品ではありえない食テロなシーンが毎度あります。脳みそをあんなに可愛く、おいしそうに調理するゾンビ作品なんて初めて観ました……!
このドラマはカラッとした独特のテンポ感とチャーミングさで、どんな気分の時にも楽しく観ることができます。しかしながら、それだけじゃない、複雑かつ深みのある人間ドラマにもハッとさせられます。
良いゾンビ作品って、結局は良い人間ドラマなんですよね。ゾンビは、元は自分の大切な人だったり、友達だったりする人。不可抗力で姿を変えられてしまった彼らを完全なる悪として見ることができないところがどうしようもなく、やるせない。だから、そこで人は苦悩する。自分だったらどうするのか、特にこのドラマでは考えさせられます。
果たして、人間とゾンビは共存できるのか。壮大な展開と結末を迎える、この物語。シーズン5までありますが、1話40分程度と観やすい尺感なので、毎日の眠る前のお供にぜひ……! そして、素敵なゾンビの夢を見てください~!
南波志帆(ナンバシホ)
1993年6月14日生まれ、福岡県出身のシンガー。2008年11月にミニアルバム「はじめまして、私。」でデビューを果たし、デビュー10周年を迎えた2018年には初のベストアルバム「無色透明」をリリースした。2014年からNHK-FM「ミュージックライン」のDJを務めている。
ドラマ「iゾンビ」シリーズ(2015年~2019年製作)
将来有望な研修医だったリヴことオリヴィア・ムーアは、あるきっかけでゾンビに変異。遺体解剖室で検視医として働くようになるが、彼女は“食べ物”である脳みそを口にすると死者の記憶がビジョンとして見えてしまうのだった。その才能を見出した同僚に勧められ、リヴは殺人課の事件捜査を手伝うことになり……。
キャストにはローズ・マクアイヴァー、
「iゾンビ」<ファースト~サード・シーズン>DVDコンプリートボックス(24枚組)販売中
税込価格:2万8380円
発売元・販売元:ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
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選者 / 南波志帆「iゾンビ」 | ホラーを語るリレー連載「今宵も悪夢を」 第30夜 https://t.co/lK7QwdGju4