〇〇の異常な愛情 Vol. 5 [バックナンバー]
クッキー作家・おなかいたいの場合:映画モチーフのアイシングクッキー作りにのめり込んだ女性は如何にして欧州ジョージアに至ったか
2021年9月26日 19:30 3
何かに並外れた愛情を注ぐ人や、著名人の意外な趣味にスポットを当てる連載「〇〇の異常な愛情」。第5回は、“おなかいたい”というユニークな名前で活動しているクッキー作家にインタビュー。さまざまなモチーフのアイシングクッキーをInstagramで発表している彼女だが、とりわけ多いのが映画を題材にした作品だ。再現度の高さのみならず、独特な視点や少しとぼけた表情など、唯一無二の魅力を放つクッキーの数々には誰もがときめいてしまうはず。
今回、映画ナタリーのために新作「
取材・
クッキーは渋々焼いてます(笑)
──最初にアイシングクッキーを作ったきっかけから教えていただけますか。
今の主人と付き合っていた頃、ビートルズ好きの彼のためにメンバーの似顔絵アイシングクッキーを載せたバースデーケーキと、イエローサブマリン号の顔ハメパネルを作ったんです。それが始まりでした。
──すごい! さぞかし喜ばれたでしょうね。
サプライズで驚かせるつもりだったんですが、段ボールで作った顔ハメパネルは1.5mと巨大で隠し場所がなかったので、主人もうすうす勘付いていました(笑)。でも喜んでくれましたね。
──顔ハメパネルも気になりますが、今日はクッキーのお話をお伺いします(笑)。最初は見よう見まねで作ったんですか?
2014年頃の当時は今ほどYouTubeが活発ではなかったので、ネットで記事を読みあさり、いろいろな方の制作技術を組み合わせながら作りました。初めてにしては案外うまくいったので「これならできるな」と思って。その後も特に教室に通ったりはせず、独学でやってきました。だからいまだに難しい技術は身に着いてなくて、基本をやり続けた結果、アレンジも入れられるようになった感じです。
──もともとお菓子はよく作られていたんですか?
いえ、私は主人が料理人ということもあって料理はあまりしないですし、当時も今もクッキー作りをしたくてしているわけじゃなくて、ただアイシングしたいがためなんです。
──なるほど、クッキーは土台でしかないんですね?
そうなんです。渋々焼いています(笑)。
──それは面白いですね(笑)。いつもどんな工程で作っているんでしょうか。
イメージを見つけて、まずは設計図を書きます。複雑な作品になるとアイシングを載せていく順番も肝になるので、塗る順序を書いておいたり。立体的な作品はあらかじめ模型を作ったりしますね。そのあと土台のクッキーを焼いて、アイシングはまず縁を取ってから中を塗っていく。塗り絵に近いです。全工程でだいたい1週間ぐらい掛かりますね。
「ラ・ラ・ランド」で“ゴズリングの屍”が山のように……
──ちなみに映画モチーフの中で一番時間が掛かったのは……。
「
──特殊メイクにも近いものがありますね。ほかに難しかった作品は?
人の顔系は似ないと満足がいかないので苦労します。イラストレーターの友人とコラボして「
──世に出せなかった“ゴズリングの屍”が(笑)。
すごくかっこいいんですけど、目立った特徴があるわけじゃないので、本当にただのおじさんになってしまって(笑)。これまで200個ぐらいのクッキーを作ってきましたが、中にはうまくいかずお蔵入りになったものもあります。
──すごい数ですね! 昔から手先が器用だったんでしょうか。
美大ではデザイン科に通っていたんですけど、デザインよりも自分の手で何かを作る作業が小さい頃から好きでした。手芸をはじめいろいろなものに手を出してきましたが、だいたい何作品か作ったら満足する感じでしたね。
──そんな中でアイシングクッキー作りは7年続けられています。なぜそこまでとりつかれてしまったんでしょう。
飽きっぽくて面倒くさがりなので、長く続けられていることに自分でもびっくりしています。2017年頃からInstagramに投稿し始めたんですが、だんだんと作品集を作っているような感覚になっていって。自己満足で始めたアカウントでしたが、見てくださる方がどんどん増えて、みんなにも楽しんでもらいたいという気持ちになりました。フォロワーにはアイシングクッキーが好きな方もいれば、映画好きな方もいるので、交流する中でいろんなお話が聞けるのも面白いです。
“激太りソー”は作るしかない!と思った
──これまでもらった感想で心に残っているものは?
あまり人と被りたくないなという思いがあるので、「こういうの見たことなかった!」と言われるのはとてもうれしいです。
──確かに、おなかいたいさんの作品は題材選びの面白さ、少しとぼけた表情など、ひとさじの “らしさ”があって目を引かれます。「
まさにちょっとひねりのあるシュールな感じが好きなので、狙いが伝わっているならよかったです! ソーは劇中で「リボウスキ」と呼ばれていましたけど、その元ネタになっている映画「ビッグ・リボウスキ」も好きだったので、作るしかないと思って(笑)。
──アベンジャーズのほかのメンバーも作っていましたよね。
みんなが知っているキャラクターなので「いいね」も多かったです。たまにマイナーな作品を作ると反応が薄くて、あれ?って感じですけど……でも、いいね欲しさにやっているのではなく「作りたいものを作る」というポリシーなので気にしてないです。
──「レオン」のクッキーの投稿で「この2人も最高なのだけど、
本当ですか!? ああいうイケオジは大好きです。一押しは
──いつか渋いマッツクッキーが見られる日を夢見てます。クッキーを作りたい衝動に駆られるのは、どんな映画ですか?
キャラクターにインパクトのある映画。特にホラー系が好きなんですが、
──悪夢と言えば「
「AKIRA」はフォロワーさんが薦めてくれたんです。クッキーを作ってから映画を観たという、いつもと逆のパターンでした。
実はあんまりおいしくはないんです(笑)
──イラストレーターとのコラボ作品も多いですが、どういったところに楽しさがありますか?
あまり絵を描くのが得意じゃないので、上手な方には憧れがあって。色使いやタッチをマネしながら作っていると、改めて感動してしまいます。例えば「
──Instagramの別アカウント「おなかいたいの“きままにGEORGIA”」では、おしゃれなホテルを訪ねたのをきっかけに「
まだInstagramにアップしてないんですけど、もう作りました! こういうファッションや美術にこだわりがある映画も、観ていてクッキーが作りたくなります。
──かわいいです! ほかにもバレエを観たあとにその演目をイメージしたクッキーを作られていたり、日記を付けるような感覚でクッキー作りをしているのが素敵です。
うれしいです。ジョージアに来て、日本で見られないようなもの、味わえないような感覚に触れる機会も多く、インスピレーションにつながることは増えましたね。
──作品を見ていると、クッキーになるだけで、どうしてこんなにときめいちゃうんだろうと不思議に思います。
そういうふうに言ってくださる方は多いです! はかない感じがいいのかなって。
──消えものだと思うと刹那的でいいですよね。実際に食べてみたくなりますし。
実はあんまりおいしくはないんですよ(笑)。アイシングってただの砂糖なので、量が多くなるほど味は微妙に……。だからアイシングの少ない「
──そうなんですか! どれもおいしそうな色なのに(笑)。
ユマ・サーマンを実際よりさらに巨乳に作ってしまいました
──今回は映画ナタリーのために新作を作っていただきました。立体的で素晴らしい完成度です! なぜ「パルプ・フィクション」を題材に?
(クエンティン・)タランティーノの映画はもともと好きなんですが、たまたま「パルプ・フィクション」を見返す機会があったんです。そこでこういう映画ファンに喜んでもらえそうな“THE映画”なクッキーを作ってみたいなと思って。
──この構図は立体的な表現がとても合いますね。
私もいい案が思いついたなって思いました。1つひとつは平面のクッキーなんですけど、置き場所を変えるだけで奥行きが生まれて、かわいい仕上がりになったと思います。保存は大変ですが、平面よりも世界観が伝わりやすくなるので、最近は立体で作ることが多いですね。
──作ってみていかがでしたか?
ユマ・サーマンを実際よりさらに巨乳に作ってしまいました(笑)。それから特徴的な顔ではあるんですけど、目や口の位置が少しズレるだけで全然違う顔になってしまうので難しかったです。
──また屍たちが(笑)。ちなみに今後題材にしたい映画はありますか?
さっきのお話で出たイケオジシリーズはいいですね。あとはファッションモチーフ。以前作った「
──車でしたら「マッドマックス 怒りのデス・ロード」をぜひ作ってほしいです。イモータン・ジョーもいいし、ギターを弾いている人も色合いがビビッドでよさそう。
確かに! 面白いですね、メモしておきます(笑)。
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映画ナタリー @eiga_natalie
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