映画館で待ってます 第2回 [バックナンバー]

劇場のコロナ対策最前線:東京・ユーロスペース編

「耐え凌げば生き残っていける、今はみんなで収束を待つことも大事」

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支配人・北條誠人が語るコロナ禍と現在

イラスト / 松崎りえこ

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お客さんの支援が励みに

非常事態宣言を受け、4月8日から5月31日まで休館したユーロスペース。支配人の北條誠人は「3月下旬、休日の外出自粛要請が出た頃にはもう完全に劇場から人が離れてしまいました」と振り返る。スタッフから「まれに来るお客さんとの接触より、通勤での感染リスクのほうが怖い」という声も上がっていたそうで、「非常事態宣言がなくても休館していたと思う」と打ち明けた。

全国の映画館が休館に入ってから、ミニシアター・エイド基金やSAVE the CINEMAといった小規模映画館の支援プロジェクトが発足。ユーロスペースも参加したミニシアター・エイド基金は、総額3億円を超える寄付を集めて大きな話題となった。劇場スタッフは「ミニシアターを応援してくださっているのが目に見えてわかってうれしかった」と、全国のファンの気持ちを受け止めていたという。

参加団体に分配される支援金の使い道を尋ねると、ユーロスペースの場合、大半は人件費に割く想定とのこと。北條は「映画館は人が集まるハブのような場所。制作者、役者、配給や宣伝と深くつながっている」と語り、「ミニシアターの場合は特にそう。劇場スタッフにしても経営スタッフにしても後継者を育てるのに時間がかかるんです。だから『スタッフを守らなければ』という思いはどこの劇場もあったはず」と支配人としての責任に言及する。休館中はアルバイトも含めてスタッフに給与を支払っていたそうだ。

業界で巻き起こったプロジェクトとは別に、観客からの個人的な支援もあったとか。ユーロスペースの岡崎真紀子は「一般の方から現金書留で支援をいただきました。お礼状と招待状をお送りしたら、それに対してもお礼状をくださって(笑)。うれしかったです」と深く感謝する。北條も「30年以上前に劇場でバイトしていた元スタッフが『給付金をもらったら寄付します』と声を掛けてくれたり。お客さんから励ましのお手紙もいただきました」と、さまざまな形での応援に勇気付けられたと伝えた。

再開後の上映作品は「図らずもいいラインナップに」

6月1日からの営業再開ラインナップには、映画産業が崩壊したスーダンで一夜限りの映画館復活を目指す人々を映したドキュメンタリー「ようこそ、革命シネマへ」や、ユーロスペースが配給したアキ・カウリスマキ監督作「希望のかなた」の再上映などが並んだ。岡崎は「図らずもいいラインナップになった」というこの作品群について「コロナとは関係ないテーマの作品ですが、困難なときにどう助け合うか、どう立ち向かうかという今の状況に通ずるものがあって。いい作品には、どんな状況でも当てはまる本質が描かれているんだなと。改めて映画の力を感じました」と語った。

6月20日に韓国映画「はちどり」が封切られると、週末は座席数が半分ながらも満席に。活気を取り戻しつつあるように思えるが、北條は実情を吐露する。「映画館って稼ぎ時にうんと稼いで、あとはひたすら耐えるしかないんです。座席数がフルで埋まるのが前提でも充足率や回転率は年間37%ぐらい。それが半減するのは本当に厳しいし、半分しか埋まらないのは気持ちも下がっちゃいますよね」。

“第2波”を押さえることも大事

映画館の支援に直結するのは、やはり「映画を観に行くこと」だ。一方で、北條は「あまり無理しなくていいですよ」とも呼びかける。1年後にはコロナ禍による負債の返済も始まり、厳しい状況は長期化していくだろう。だが一番避けたいのは“第2波”によって再び休館を強いられること。全国各地からファンが訪れるユーロスペースだが、北條は「映画館はなくなったり逃げたりしません。耐え凌げば生き残っていけるでしょう。だからあわてなくても。それより今はみんなで収束を待つことも大事だと思います」と未来を見据えてメッセージを投げかけた。

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ユーロスペース @euro_space

劇場のコロナ対策最前線:ユーロスペース編 | 映画館で待ってます 第2回 https://t.co/2AI1Amg3k4
↑当館を取り上げていただきました。ぜひご一読ください。

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