「火憐だぜ」「月火だよ」でチューニング
──「かれんビー」「つきひフェニックス」ではオープニング曲も、火憐と月火それぞれのキャラクターソングでした。
喜多村 オープニングを飾るキャラクターソングも〈物語〉シリーズのポイントですよね。私の「marshmallow justice」は、meg rockさんが歌った仮歌がすでに仕上がっちゃってて、それを自分のキャラクターソングとして表現するのが難しくて。
井口 いやいや、かわいいよ。その苦労を感じさせない。
喜多村 特にAメロの「今朝目が覚めたら忘れちゃった」ってフレーズは、「火憐ちゃんのセリフに聞こえるぐらいのニュアンスで、でもピッチは離れない程度で」って言われて、「そんな難しいこと無理ですー!!」って(笑)。歌い出しのフレーズなので、「火憐ちゃんが歌い出したぞ」っていう感じが出せるようにすごくこだわりましたね。
井口 ファイヤーシスターズって、当時アニメの「化物語」しか知らない人には、まだなじみのないキャラクターだったんですよね。なので、歌で「こういうキャラクターなんだ」って掴みができるといいなと思ってましたし、“月火で歌う”ってどうしたらいいかずっと考えて、「お兄ちゃん朝だよ、起きないと遅刻しちゃうよ」って何度もセリフを言ってから歌に入ってました。
喜多村 私もそうだった! 「火憐だぜ」って何回も言ってから録りましたね。
井口 チューニングするみたいなね(笑)。
喜多村 相方はいないけど、「2人合わせてファイヤーシスターズ」ってやったりとか。
井口 結果「白金ディスコ」はできあがった絵もすごくかわいくて、いろんな月火ちゃんが見れて、大満足でした。
──そして「猫物語(黒)」なんですが、これは2012年12月31日の大晦日に特番で放送されるという異例の試みでした。神谷さんは〈物語〉シリーズがいろんな放送形態でファンに届ける新たなきっかけを作ったということで、印象に残っているとおっしゃっていて。
井口 もちろん我々は演じるうえで、「特番だから」「劇場版だから」といったことで区別をつけるようなことはないんですが、〈物語〉シリーズのファンの方って、新作ができるだけでも「うれしい」って言ってくださると思うんですよね。そのうえでさらに、特番で一気に見せようとか、アプリで配信しようとか、「もっと特別なことしてやんよ」っていう、スタッフさんたちの心意気が、すごいなと思います。誰が考えているんでしょうね?(同席したスタッフの方を見ながら)
──きっと偉い人ががんばってくれているんだと思います(笑)。
2013年「〈物語〉シリーズ セカンドシーズン」
撫子と月火は大親友!
──特番を経て、2013年にセカンドシーズンがスタートします。
喜多村 私、「なでこメドゥーサ」が超好きなんですよね。
──「なでこメドゥーサ」では、月火ちゃんが撫子に「撫子ちゃんはどうして暦お兄ちゃんが好きなの?」と迫るシーンがありました。
喜多村 大親友なんでしょ?
井口 大親友だからね(笑)。「撫子ちゃんをいじめるな!」みたいに言われかねない立ち位置でもありましたが……。
喜多村 必要性があったというか、キャラに奥行きが出て、私はすごく萌えました。
──月火ちゃんは、真理を突ける子ですよね。
井口 グイグイいきますね。火憐ちゃんと一緒にいるときは、長いものに巻かれてる感があるんですけど。
喜多村 お兄ちゃんと撫子に対しては割と“詰め寄り月火ちゃん”だよね。
井口 隠しごとが嫌いだからかな(笑)。
喜多村 それも正義だね。
井口 火憐ちゃんはわかりやすいから、詰める必要がないのかもね。
──確かにそうかもしれないですね。このあたりでは火憐ちゃんと月火ちゃんの違いもはっきり見えてきて。火憐ちゃんはヒロインの中で、一番裏表がないように感じます。
井口 ない。
喜多村 真っすぐですよね(笑)。
井口 ビックリするぐらい。
──等身大というか、ほかのヒロインと比べると突飛さは意外とないかも。
喜多村 そんなことないですよ、兄ちゃんのこと大好きですよ。
一同 (笑)。
2014年「憑物語」
ヒロイン×暦がすべて成立している
──2014年の「憑物語」は、新キャラ・斧乃木余接がメインとなる話でした。
喜多村 「僕はキメ顔でそう言った」、衝撃的でしたね。
井口 「誰がやるんだろう?」と思ったら、はやみん(早見沙織)がぴったりで。私たち、早いうちに〈物語〉シリーズに入れてよかったよねえ(笑)。
喜多村 よかったねえ(笑)。本当にクリエイティブなキャラがどんどん出てくる。
井口 「よつぎドール」にはときどき姉妹で出させていただいたんですが、休憩中もずっと台本を練習している神谷さんと、静かに台本を確認するはやみん、2人ともすごく集中していて。我々は一瞬の清涼感を与えに現場に行って……(笑)。
喜多村 職人の部屋に閉じ込められる私たち(笑)。本当に匠の現場っていう感じでした。
井口 そこを度外視してにぎやかにするという(笑)。
──ちなみに、〈物語〉シリーズには新しいヒロインがどんどん出てきますが、「お兄ちゃんを取られちゃう」みたいな、「もっと火憐と月火も出たい!」と思ったりはしませんか?
喜多村 全然ないですね。マルチエンディングじゃないですけど、各ヒロイン×暦が、ちゃんと全員成立してるんですよね。なので、むしろ「まだ隠し玉があるんだ!」って西尾維新ワールドに驚愕して、「もっとちょうだい!」ってなります。
──なるほど。「よつぎドール」では、歯磨きに負けないぐらい話題を呼んだ、暦と月火のお風呂シーンもありましたね。
井口 ああ、都条例(笑)。
──都条例(笑)。こちらも兄妹でお風呂に入るという、ちょっときわどいシーンが話題を呼びました。
喜多村 私なんてOB気分でしたよ。
井口 絵としては観る人がドキドキするような、都条例に引っ掛かりそうなところはあっても(笑)、キャラクター本人たちは、全然そんなつもりはないですからね。あんまり自分でも気にしてなかったですね。
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“CV:花澤香菜”の絶対正義感
- 「続・終物語」
- 全国劇場にてイベント上映中
- あらすじ
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高校生でも大学生でもない、そんな時期に阿良々木暦が体験した、終わりの、続きの物語。
高校の卒業式の翌朝、顔を洗おうと洗面台の鏡に向かい合った暦は、そこに映った自分自身に見つめられている感覚に陥る。
思わず鏡に手を触れると、そのまま指先が沈み込んでいき……。気がついたときには、暦はあらゆることが反転した鏡の世界に迷い込んでしまっていた。
- スタッフ
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原作:西尾維新(「続・終物語」講談社BOX)
キャラクター原案:VOFAN
監督:新房昭之
キャラクターデザイン・総作画監督:渡辺明夫
アニメーション制作:シャフト
- キャスト
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阿良々木暦:神谷浩史
戦場ヶ原ひたぎ:斎藤千和
八九寺真宵:加藤英美里
神原駿河:沢城みゆき
千石撫子:花澤香菜
羽川翼:堀江由衣
阿良々木火憐:喜多村英梨
阿良々木月火:井口裕香
斧乃木余接:早見沙織
老倉育:井上麻里奈
©西尾維新/講談社・アニプレックス・シャフト
- 喜多村英梨(キタムラエリ)
- 東京都出身、8月16日生まれ。声優・ボーカリストとして活躍。主な出演作に「魔法少女まどか☆マギカ」シリーズ(美樹さやか役)、「フレッシュプリキュア!」(蒼乃美希 / キュアベリー役)、タイムボカン24(ビマージョ役)、「立花館To Lieあんぐる」(三井そのあ役)、「ガイコツ書店員 本田さん」(ホウタイ役)など。
- 井口裕香(イグチユカ)
- 1988年7月11日生まれ。2003年にTVアニメ「デ・ジ・キャラットにょ」のうさだあかり役で声優としてデビュー。2013年にはソロアーティストとしてもデビューを果たす。主な出演作に「とある魔術の禁書目録」シリーズ(インデックス役)、「ヤマノススメ」シリーズ(雪村あおい役)、「宇宙よりも遠い場所」(三宅日向役)、「ゴブリンスレイヤー」(牛飼娘役)など。