単純に「昔の絵を載せました」では絶対にダメ

──コスメ、フィギュア、アパレル、ステーショナリー、そして劇中のアイテムを模した玩具など、この半年ほどの間に多種多様な商品が次々に発表されてきました。今日はその制作の裏話をじっくりと伺えればと思います。おさBUさんは原作の担当編集ですが、グッズの開発にも参加してるんでしょうか。

おさBU　はい。（武内）先生ともども、細かく商品企画やクオリティのチェックをさせていただいてます。色々とグッズを出してきた中で、ただ漫然と企画してもダメということは見えてきた気がします。ファンの方の気持ちにフィットしたものはすごく反応が良いけど、単純に「昔のアニメの絵を載せました」みたいなものは絶対に受けない。当時読者だったいま20代後半から30代前半の女性が、持ち歩いてて不自然じゃないデザインであることが大前提のようですね。

──いかにもなアニメグッズではなくて、日常に溶け込むもの。

おさBU　はい。そういう意味ではコスメはもうドンピシャでした。「シャイニングムーンパウダー」はバンダイさんの制作チームがかなりこだわってくださいました。もちろん武内先生にも見ていただいて、厚さとか、かなりディスカッションして。コスメはおかげさまで予想を遥かに上回る好評をいただきました。

三石琴乃　うん、すっごくかわいかった！（コミックナタリーの過去記事を見ながら）このしまむらって、ファッションセンターの「しまむら」ですよね？ 意外なコラボ。

おさBU　いろいろな世界観との融合を提案していただいてありがたいです。この記事が上がる頃にはPEACH JOHNさんのインナーも出てると思うんですが、それもすごくインパクトあるデザインですよ。20周年グッズで一番最初に発表されたのは「S.H.Figuarts セーラームーン」でしたが、この評判が良かったことが、この後に出るいろいろな商品を引っ張ってくれた気がします。これがコケたらこの後の商品は出せないなと思っていました。

三石　そんなこと考えてたんですか？

おさBU　はい。不安でした、やっぱり。

中野ブロードウェイに1体もなくて「世の中どうなってんだー！」

三石　売れるに決まってるじゃないですか！ 皆の心はセーラームーンを求めてカラッカラに乾いてましたよ。私ね、10年くらい前に中野のブロードウェイに行って、「セーラームーンのフィギュアはないのかい？」ってフロア中回ったことがあるの。でも1体もなくて、「世の中どうなってんだー！」って。

おさBU　ははは（笑）。その頃はそんなに種類は出てなかったかもしれないですね。

三石　もう飢えてたもんだから、この「S.H.Figuarts」の現物いただいてすごくうれしかったです。でもね実は、最初見たとき「ちっちゃい！」って思ったの（笑）。

おさBU　「S.H.Figuarts」のサイズは女の人にも受け入れられているそうです。ポーズを色々変えて、机に飾ったり、スマホで写真を撮ってみたりして楽しんでいるとか。フィギュアってもともと男性向けのものだったからどう転ぶかわからなかったですけど、実際女性にすごく買っていただいたみたいです。三石さんは動かして遊んでいただけました？

三石　はい！ でも立たせるのが大変で……。あと「月にかわっておしおきよ！」のポーズを取らせたかったんだけど、なんかイマイチ決まらなかったです。

おさBU　可動フィギュアって、コツを掴むまではなかなか難しいみたいですね。ちょっと顔の角度を変えるだけで、ポーズがビシっと決まることもあるんだけど。

三石　特訓しないとなあ。

おさBU　「S.H.Figuarts」シリーズって通常は表情パーツが4種類なんですけど、セーラームーンは初回限定の特典も含めると6種類もあったんですよ。動かし甲斐があると思います。セーラームーンファンの目は厳しいので、最初からフルボリュームで入れていただきました（笑）。

三石　ふふふ。昔はこんなに細かく動かしたり取り外したりできるフィギュアってなかったから、おもしろいですね。