コミックナタリー PowerPush - 映画「Z~ゼット~」
相原コージが自らゾンビになるほど入れ込んだ 描き下ろしマンガの先行公開も
やっぱりギクシャク動くゾンビはいい
──相原先生はゾンビのメイクをして実際に撮影にも参加したと伺いました。
エキストラで出演しています。メイクをしてもらった自分を見て、すごくリアルだったので感動しました。頬の傷なんて本当にぱっくりと開いているみたいでしたよ。コンタクトレンズは、専用の黒目部分が小さいやつを入れたんですけど、視界が悪くて周りが全然見えない。
──視界がぼんやりしている中で演技を。
やっぱり観るのと実際に演技するのでは全然違いましたね。斬られて倒れたあとにキョロキョロしすぎて1度リテイクを出されてしまいましたし。
──撮影中に動くゾンビを実際に見てみてどうでしたか。
ゾンビの動きに関しては、基本的にジョージ・A・ロメロのギクシャク歩くゾンビ像を踏襲してもらったんです。
──先ほど仰っていた、「腐敗していたら走れないだろう」という。
ええ。そうやってギクシャク動くゾンビを見て「やっぱこれだよな」って思いましたね。あと映画の中で「これはいいな」と感じた部分があったんです。住宅街に現れたゾンビを駆除するシーンなんですが。
──冒頭のシーンですね。
僕はマンガの中ではゾンビを見つけると、火炎放射器で焼きつくすっていうのをやってたんです。でも映画だとゾンビを網で捕獲するんですよ。それもゴミ捨て場にあるようなネットで。絵としては火炎放射器で焼いたほうがいいんでしょうけど、住宅街のど真ん中で火炎放射器を使って、火だるまになったゾンビが暴れたら危ないですから。一応そうならないように原作にはゾンビの足を切り落とすっていう描写があるんですが、捕まえてからどこかに連れて行って燃やしたほうが効率的ですよね。
映画のアクションシーンは作画の資料になる
──原作と映画では登場人物の造形に少し違いがありますよね。このあたりは相原先生から何か要望があったのでしょうか。
特に要望があったわけではないんです。ただ映画で主人公を務めている凛子のアイパッチに関しては、最初に話を聞いた時に「なんで?」と思いましたね。「女子高生がアイパッチするかなー」って。ものもらいができてるならわかりますけど。
──アイパッチの由来は映画では語られませんでしたね。
でも実際に観てみると違和感がなかったんですよね。逆に凛子というキャラクターを作っていく上で参考になった部分があったくらいです。
──それはどのような。
実は凛子をマンガの中で描くのにすごく苦労していて。物言いが男っぽいし、クールなキャラなので「これってリアルな女子高生なのかな」と自問自答していたんです。
──凛子は薙刀を手に、臆せずゾンビに立ち向かっていきますし。
そうですね。あと台詞もどう書いてもリアルな感じにならない。映画だとそこを吹っ切ってしまって、アイパッチをさせたりして、よりフィクショナルにしているんですね。マンガだと中途半端にリアルな部分も持ち合わせたキャラクターだったので、このくらい思い切ったほうが絵になるんだなとわかりました。あと凛子が薙刀を振り回すシーンは、今後のいい資料になるなと思ったり。
──映画化で思わぬ副産物が。
薙刀を持ってる人間を描くのってすごく難しいんですよ。刀なんかと違って資料も少ないですし。それなら著作権侵害で怒られることもなさそうですしね。
──(笑)。凛子と行動を共にしていたあかりや恵のイメージはいかがでしたか。
あかりに関しては、ひとつ主張したいことがありまして。劇中であかりのちょっとしたエッチなシーンがあるんですけど、服のボタンをひとつ外し、ふたつ外したくらいでカットが変わってしまうんです。「あれ?」って(笑)。
──もっと見せてほしかったと。
僕が中学生とか高校生だったら悶々としちゃうでしょうね。これは完全に趣味趣向の話ですが(笑)。もちろんキャストさんは、「実写化したらこうなるんだな」と思わせるぐらい、いい感じでしたよ。
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7月26日(土)より、シネマート六本木、シネマート新宿ほか全国順次公開
女子高生のあかりは幼なじみの親友・恵に失恋の悩みを打ち明けていた。他愛の無い会話に興じる2人の日常が一変する──。釣り人に突然襲いかかった男が2人にも襲い掛かって来たのだ。絶体絶命の2人を救ったのは1人のアイパッチの少女。少女はナギナタを振りかざし、Zと呼ばれる生ける屍たちを斬り倒した。3人は妊娠中のあかりの姉・香澄と合流し、市の総合病院へと向かう。病院はZたちに占拠されたかに思えたが、7階に少数の人間が立て籠もっていた。生き延びていたのはたった6人。襲いくるZたち、非日常下での異常な精神状態、香澄の死を賭した出産、そしてZ出現の謎──。果たして彼等は無事、生き延びることができるのか──!?
- 出演:川本まゆ、木嶋のりこ、田中美晴、佐藤永典
- 監督:鶴田法男
- 脚本:酒巻浩史・鶴田法男
- 製作:香月淑晴
- エグゼクティブプロデューサー:櫻井由紀
- 企画:小野誠一
- プロデューサー:鈴木伸明・西前俊典
- 制作プロダクション:Takujiクリエイト
- 製作:エスピーオー
- 原作:相原コージ「Z~ゼット~」(日本文芸社「別冊漫画ゴラク」連載)
「コージ苑」「サルでも描けるまんが教室」「ムジナ」など、日本ギャグマンガ界の重鎮的存在である相原コージが、満を持して描くゾンビ・パニック・ホラー「Z~ゼット~」。
発生初期、発生中期、発生後期の3段階でストーリーは展開されるが、その構成は毎回バラバラのオムニバス。また、ゾンビ化も人間だけには留まらず、細分化された肉体さえもゾンビとして襲ってくるという、まさに手の付けようのない状態。
一筋縄ではいかないゾンビ・ホラーの傑作誕生!!
相原コージ(アイハラコージ)
1963年5月3日北海道登別市生まれ。日本デザイナー学院まんが専攻科卒業。1983年、漫画アクション(双葉社)にて「八月の濡れたパンツ」でデビュー。ギャグマンガの方程式を覆す革新的な手法に定評がある。1989年、ビッグコミックスピリッツ(小学館)にて連載された竹熊健太郎との合作「サルでも描けるまんが教室」は、人気マンガの分析・パロディといった業界風刺的内容が話題を呼び、現在も根強い人気を誇る。また、ビッグコミックスピリッツ(小学館)にて同じく竹熊健太郎とともに審査員を務めた「相原賞」は、榎本俊二やほりのぶゆきなど後に人気マンガ家となる新人を数多く輩出した。近年は「漫歌」「真・異種格闘大戦」「下ネタで考える学問」などを発表し、現在は別冊漫画ゴラク(日本文芸社)にて「Z~ゼット~」を連載中。2013年に画業30周年を迎えた。
(c)2014 相原コージ/日本文芸社・エスピーオー