コミックナタリー Power Push - コミック百合姫

リニューアルでさらに読者を挑発 編集長×デザイナー対談

女の子同士がイチャつくだけじゃない高度な百合

──表紙イラストはカズアキさんが1年間担当されるということですが、起用の理由はなんだったんでしょう。

中村 カズアキさんって乙女ゲーム「Starry☆Sky」のキャラクター原案で人気の方ですけど、その前から見ていた僕としては、むしろ魅力的な女子を描く方っていう印象があって。しかも百合がホントにお好きな方なので。非常に高度な百合を描ける方ですし。

──高度な百合というのは?

百合姫表紙

中村 女の子同士がイチャイチャするだけじゃない、魂のレベルでの関係性を表現できることです。かつては女の子同士が表紙でイチャイチャしてたらすぐ百合だってわかったんですけど、今やもう百合じゃない雑誌の表紙でもそういう絵って普通にあったりして。そういう状況で百合姫が特別な存在であり続けるためには、「このふたりは何かものすごい関係性があるんだろうな」って思わせなきゃダメなんですよ。ナイフ喉元に突きつけてるとか、首絞めてるとか(笑)。

──この表紙イラストもちょっとSMちっくで、どんな関係!? と想像力をかきたてますね。百合っぽい表紙が多いということですが、今世間には百合ブームがきてるということですか? 百合系のアンソロジー本も「つぼみ」「ひらり、」をはじめ増えてきていますが。

中村 いや、ブームという意味だと、もうとっくに終わって拡散してしまってますね。

──定着してしまっている?

中村 浸透して、一般化してしまったんだと思います。例えば「マリみて」はここ最近では最大の百合ヒット作だったわけですが、その後いっぱい百合な要素を持ったアニメが出てきましたよね。「とある科学の超電磁砲」や「ストライクウィッチーズ」とか。でもそれらは百合であることを特にアピールはしません。百合が特別視されなくなったというのが今の状況なんです。

──ガチな百合で言うと、「青い花」や「ささめきこと」もアニメになりましたが。

中村 私もそうですが、もともと原作のファンが、原作をどれだけ忠実に再現しているか確かめるために観た、という感じでしたね。それじゃブームにはならないんですよね。

BLはファンタジー、でも百合は綺麗なだけじゃない

──なるほど。そういう意味ではBLもとっくにブームは過ぎ去って定着しています。同性カップリングという面では百合とBLは共通していますが、大きな相違点はなんでしょう。

中村 BLと違って百合は綺麗なだけじゃない、ということですかね。この表紙のキャッチ「きれいな君も、きたない君も、私のもの。」ってまさにだと思うんです。BLの場合は「きれいな君」がまず何よりも大事。ファンタジーであるべきなので。でも百合はそれだけじゃない。ドロドロした描写も大事なんです。フワフワしたものばっかだと嘘臭いんですよ。女子同士ってそんなに綺麗なもんじゃないと思います。

──百合はリアルで、BLはファンタジーを指向するものだと。染谷さんは百合姫のほかに一迅社のBLレーベル「gateau」のデザインもなさってますよね。

染谷 百合も初心者ですが、BLももちろん初心者で。まあ男なので、やっぱりどちらも最初はよくわからなかったですけど、読んでるうちにだんだん百合脳、BL脳が開いてきましたよ。

──「けいおん!」や「セーラームーン」が百合だっていう考え方も、百合脳が開いてない人間からすると、そこが百合なの!? という驚きがありますよね。

インタビュー風景

中村 今回、百合姫の特集記事で「百合脳を鍛える大人のためのGLトレーニング」というページがあります。みんなが百合ではないと言っているものも百合として扱って楽しめば、世界が倍に広がるよ! という。百合姫作品と、「けいおん!」などの百合なのかも? という作品と、「グラップラー刃牙」みたいな絶対百合じゃないもの3つを並べて、百合として妄想できるのはどこまでか? という(笑)。

──それってBLの考え方と近いですよね。二次創作的な。

中村 「キャプ翼」だって「幽白」だって、どこにも直接的な描写はないのに女子は妄想したわけですよね。コマとコマの間に描かれていない行間の世界がある。

染谷 その行間の妄想で萌えるのって、ヲタ趣味の共通言語ですよね。そういう意味で考えると、百合を読んだことない人が読んでもハマれる気がする。僕も最初は怖くて読めなかったけど読んだらハマったし。そうやって自分の趣向の幅が広がるって楽しいですよね。より充実したオタクライフを過ごせる。

中村 食わず嫌いなだけで、本当はこれが一番あなたが求めていたものかもしれない、と(笑)。

コミック百合姫 / 2011年1月号 / 2011年11月18日発売 / 定価:880円(税込) / 一迅社

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2011年1月号ラインナップ

カズアキ×深見真「GIRLS UPRISING」/竹宮ジン「憧れの愛しい人」/テクノサマタ「宵待群青姫王子」/さかもと麻乃「パイをあげましょあなたにパイをね」/源久也「ふ~ふ」/田仲みのる「メッてされてキャッ♡」/倉田嘘「それでもやっぱり恋をする。」/タカハシマコ「小箱の手紙」/なもり「ゆるゆり」/柏原麻実「雪の妖精」/森田季節「相思相愛のこわしかた」/藤生「パーラーゆりひめ」/三浦しをん「百合の花粉は落ちにくい」/タアモ「ロストガール」/高崎ゆうき「むげんのみなもに」/北別府ニカ「Twinkle,Little★Secret」/紺野キタ「おんなのからだ」/影木栄貴+蔵王大志「恋愛遺伝子XX」/東雲水生「紅色らせん」/乙ひより「オセロ」/三国ハヂメ「妄想HONEY」/藤枝雅「飴色紅茶館歓談」/森島明子「レンアイ♡女子課」/八色「きものなでしこ」