コミックナタリー Power Push - コミック百合姫
リニューアルでさらに読者を挑発 編集長×デザイナー対談
読者にトラウマを残す雑誌になりたい
──こんなに凝ったパッケージだと、なかなか捨てられないし、持っておきたいと思いますよね。
中村 大抵の人は単行本が出たら、もう雑誌いらないって思うじゃないですか。でも、これ捨てると後で絶対手に入らないんだよなって読者に思ってもらいたい。なんなら買わなくてもいいから、店頭で見かけた人の心に刻みたい。手に取って開いたら、「何これ怖い!」って棚に戻しちゃうような。存在を刻み付けるというか、トラウマになりたいというか(笑)。
染谷 なんというか、“痛い雑誌”にしたいんです。10代の子が見たらトラウマになるような。痛いけどその痛さがたまらないんだよね、っていう。作り手と読者の間に共犯関係みたいなものを作りたい。オシャレな尖ったマンガを読むのが気持ちいい、みたいな。それが2年後くらいに急に恥ずかしくなって、全部火つけて燃やす!(笑) でも、また5年後くらいにやっぱりあれ手元に置いときたいな……って買い直しちゃったり。そういう雑誌になればいいなって思います。
──燃やした5年後に買い戻すっていうの、すごくわかります。中2病的なものに近いのかもしれませんね。
染谷 中2病感って、みんな恥ずかしいもんなんですけど、でもマンガにおいては中2的なるものって一種の原動力だと思うんです。そういう意味では、表紙を描かれてるカズアキさんの絵はサイコーだな、と。悪い意味じゃなくて、いい意味で中2心をくすぐる。
──表紙から続く巻頭カラーで、カズアキさんのイラストと深見真さんの小説が始まるんですよね。
中村 手に取るだけじゃなくて、開いてほしいな、という思いから、表紙に小説の冒頭が書かれています。
染谷 この深見さんの文もまたいいんです。カズアキさんの絵にこの文を合わせてきたのは本当にすごい。特にここです。「あたしが愛用しているライフルの名前はSCARという。スペシャルなんちゃらアサルトなんちゃらという長い正式名称があるのだが、忘れてしまった。(声を大きくして)大事なのは、この銃から7.62ミリ口径のライフル弾が撃てること。当てれば人間を殺せること――それだけだ。」……サイコーだな、と(笑)。
中村 そこなんだ(笑)。
染谷 ビンビンきますよ!(笑) 「あ、もうこれデザイン振り切っちゃっていいや」と思ったんです。僕、装飾にケイ線を入れたりするの、恥ずかしくて普段は絶対やらないんです。こういうシャレオツなデザインって、“デザイン中2病”なんですよ。デザイナーって、1回シャレオツなところに行って、やっぱりそういうことじゃないってベタなほうに戻り、またシャレオツなほうに引き戻されてく。このカズアキさんの絵を見たとき、安心してシャレオツなことやっていいんだなって思いました。
──ベタとシャレオツの間を揺れ動く永久運動なわけですね。
中村 そういうのって絵描きさんでもありますね。行きつ戻りです。編集でもありますよ。
2011年1月号ラインナップ
カズアキ×深見真「GIRLS UPRISING」/竹宮ジン「憧れの愛しい人」/テクノサマタ「宵待群青姫王子」/さかもと麻乃「パイをあげましょあなたにパイをね」/源久也「ふ~ふ」/田仲みのる「メッてされてキャッ♡」/倉田嘘「それでもやっぱり恋をする。」/タカハシマコ「小箱の手紙」/なもり「ゆるゆり」/柏原麻実「雪の妖精」/森田季節「相思相愛のこわしかた」/藤生「パーラーゆりひめ」/三浦しをん「百合の花粉は落ちにくい」/タアモ「ロストガール」/高崎ゆうき「むげんのみなもに」/北別府ニカ「Twinkle,Little★Secret」/紺野キタ「おんなのからだ」/影木栄貴+蔵王大志「恋愛遺伝子XX」/東雲水生「紅色らせん」/乙ひより「オセロ」/三国ハヂメ「妄想HONEY」/藤枝雅「飴色紅茶館歓談」/森島明子「レンアイ♡女子課」/八色「きものなでしこ」