コミックナタリー Power Push - コミック百合姫

リニューアルでさらに読者を挑発 編集長×デザイナー対談

ロゴのデザインソースは化粧品

──リニューアルでデザインが一新されて、だいぶイメージが変わりましたね。まず、染谷さんにデザインを依頼したきっかけから教えてください。

インタビュー風景

中村 染谷さんが企画やライティングからデザインまで全部なさった「オタクとデザイン」という同人誌がありまして、それを愛読してたんです。最初はライティングや編集の方なのかな、と思ってたらデザイナーの方で。これからの雑誌作りには、デザイナーにも編集的な視点があってほしいと思うし、一方で編集者にもデザイナー的視点が必要だと考えていたので、この方と仕事をしてみたいな、と。

──染谷さんはもとから百合にご興味をお持ちだったんですか?

染谷 いえ、普段は男の子が読むマンガのお仕事をやっているので、百合の知識はまったくなく。最初は宝塚的な、甘々の、「お姉さま~!」みたいなイメージしかなくて。

──「マリみて(マリア様がみてる)」みたいな。

染谷 そう、まさに「マリみて」みたいなイメージしかなくて。だから今回お声が掛かって、百合とはなんぞや、ということを最初にすごく考えましたね。中村さんにレクチャーをお願いしたら「女の子×女の子という形を借りて描かれた人間の根源的な感情のやり取り」だと。少女マンガの恋愛や感情の部分をソリッドに煮詰めていくと、男女の性別すら超えてしまう。そういう濃ゆい心理描写を描くために、女の子と女の子という関係性を使って描く、というのが百合なんじゃなかろうか、と。あくまでひとつの見方ですが。

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──「百合とはなんぞや」というディスカッションを編集長としたことで、ロゴのイメージも見えてきたのでしょうか?

染谷 男の子の求める女の子らしさ、っていう目線じゃなくて。そういうのを抜きにした、女の子のかっこよさだったり綺麗さだったり繊細さだったり、そういうイメージなんだってことが、中村さんとお話してるうちに見えてきましたね。

中村 女性に好かれるシャープさって難しいと思うんですよ。なのにこの新しいロゴ、女性らしいかわいさもあるし、鋭角でスッとしていて。女性向けだと曲線を主体にしてしまいがちだけど、これはソリッドなのに、女子が見てかわいいと思うデザインだと思いました。

インタビュー風景

染谷 凛としたものなんだろうな、と。男の子目線じゃない美しさって何だろう、って考えたときに出てきたのが、化粧品のイメージだったんですね。それも男の子に見せることを意識しない、女の子の主体的な美しさを追求した、資生堂の広報誌「花椿」とかのイメージ。

──デザインのヒントは資生堂ですか。

染谷 それが百合姫の目指す女の子の強さ、美しさに近いんじゃないかと思って。ロゴが決まってからはビジョンがはっきりしたので、ほかの部分のデザインも僕と中村さんの間でブレることはなかったですね。

百合姫読者は森ガールに近い!?

──「女の子から見た女の子の美しさ」を根底のテーマに据えているんですね。やはり想定読者層の大半は女子?

中村 そうですね。男性の隠れ百合ファンももちろんいますけど。だから読者コーナーとかの記事ものの方向性は、文化系女子、いやもういっそ、森ガール向けくらいに考えていて。

──森ガール!?

中村 森ガールってメディア的には「森にいそうな女の子」っていう定義があるじゃないですか。でも森ガールは絶対森に行かない(笑)。彼女たちは部屋にいるのが大好きなんですよ。ホーローの容器を並べてみたり、リネンに凝ってみたり。それって、オシャレは捨ててないインドアなオタクの人に感覚的には近いと思って。百合姫の読者さんはそういうオシャレな嗜好を持った人が多いんじゃないかと。

染谷 特に今の20歳前後の人たちって、オタクなのにオシャレ、マンガ好きなのにオシャレであるっていうことにまったく抵抗がない。コミティアとかその辺が好きな人って、オシャレなもの、素敵なものが好きだって精神的風土がありますよね。ガチで知的なものを楽しむとサブカルにいっちゃうけど、あくまで趣味として知的なものを楽しむスタンスというか。説明が難しいですけど(笑)。

──なんとなくわかります。それから、普通は巻末にある読者コーナーが雑誌の真ん中にあるんですね。

中村 マンガ以外の記事ページはできるだけ1カ所にまとめたいと思いまして。マンガの間に記事を挟んでいくよりも絶対に多くの人が読んでくれると思うんです。マンガはマンガ、記事は記事。逆に巻末は必ず読んでくれるので、一番伝えたいことを載せる、だから次号予告。また目次ページは普通の雑誌と同じように前に配置しました。

インタビュー風景

──目次ページにはトレーシングペーパーを使った、これまたギミックが。

中村 ちょっと前にネットで流行った、エロく見えるフィルターです(笑)。

──トレペをめくってみると……これは買った人だけのお楽しみですね(笑)。目次以外にもデザインやページ構成、いろいろと劇的に変わっていますが、逆に意識して変えなかったところはありますか?

中村 マンガの部分ですね。そこはまったく変えなくていいと思いました。元から良質な作品ばかりだし、読者の満足度は低くないはずなので。リニューアルでは中身よりもパッケージの部分を変えて、そこでいかに見せていくかということに留意しました。どんなにいいマンガが載っていても、入れ物の部分が時代に追いついてないと買って楽しくないですから。

コミック百合姫 / 2011年1月号 / 2011年11月18日発売 / 定価:880円(税込) / 一迅社

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2011年1月号ラインナップ

カズアキ×深見真「GIRLS UPRISING」/竹宮ジン「憧れの愛しい人」/テクノサマタ「宵待群青姫王子」/さかもと麻乃「パイをあげましょあなたにパイをね」/源久也「ふ~ふ」/田仲みのる「メッてされてキャッ♡」/倉田嘘「それでもやっぱり恋をする。」/タカハシマコ「小箱の手紙」/なもり「ゆるゆり」/柏原麻実「雪の妖精」/森田季節「相思相愛のこわしかた」/藤生「パーラーゆりひめ」/三浦しをん「百合の花粉は落ちにくい」/タアモ「ロストガール」/高崎ゆうき「むげんのみなもに」/北別府ニカ「Twinkle,Little★Secret」/紺野キタ「おんなのからだ」/影木栄貴+蔵王大志「恋愛遺伝子XX」/東雲水生「紅色らせん」/乙ひより「オセロ」/三国ハヂメ「妄想HONEY」/藤枝雅「飴色紅茶館歓談」/森島明子「レンアイ♡女子課」/八色「きものなでしこ」