コミックナタリー PowerPush - 「ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章 ~紋章を継ぐ者達へ~」
藤原カムイがヤングガンガンでの10年を語る
ドラクエのシリーズ全体を見据えた構成
──「ロトの紋章」が完結した後は、ドラクエVIIのコミカライズ作品「ドラゴンクエスト エデンの戦士たち」を手がけられました。あれは「ロトの紋章」で培われた少年マンガの雰囲気とはまた違う描き方を試されていますよね。
そうですね。タッチもちょっと変えてますし。ギャグもけっこう入れて、ほのぼの系のテイストでいこうかなという考えがありました。あれはオリジナルのゲームがありきなんで、それをどう表現するかというのが重要だったんです。
──特に序盤の方は、ゲームのストーリーをかなり忠実に再現していますよね。それも「ロトの紋章」との差別化を考えた上でのことだったんでしょうか。
いや、物語冒頭の部分がゲームに忠実というのは、堀井さんからのアドバイスで、まずそこをしっかり丁寧に描いてほしいという要望があったからなんです。最初の予定では、そこらへんをすっ飛ばして、いきなり冒険から始めようかとも思っていたんですけどね。
──そして、ヤングガンガンの創刊に合わせて「ロトの紋章」の続編である「ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章 ~紋章を継ぐ者達へ~」が連載開始します。これは、物語として完全に前作を踏まえたものになっていますね。
そうですね。この先の展開については、まだはっきり決まっているわけではないですけど「エデンの戦士たち」や、コミカライズしていないゲームも含めた、ドラクエのシリーズ全体を包み込むような世界観を作っていけたらいいなと思っています。
──「ロトの紋章」でも、竜王がああいう立場で出てくるのはゲームの「I」にうまくつながっていますしね。
「紋章を継ぐ者達へ」のほうでは、竜王は味方として登場するんですけどもね。それがまたなぜ、ゲームの「I」で敵になるのかというところも、ちょっと思いついちゃったんです(笑)。
──ゲーム世界との関連についても、かなり構想されているんですね。
前作でも気になっていたところがあって、それは「II」のラスボスであるシドーの登場する部分なんですよね。「ロトの紋章」は「I」の前日譚なので、「II」のアイテムである邪神の像とか、シド―なんかが出てくるのはちょっとおかしい。でも、魔物だから2~300年やそこら生きるだろうと。それを解決させるために、今回また「紋章を継ぐ者達へ」で、まだ若く力不足のシドーとして新たに登場させることにしました。そのシドーを倒し、帰ってきた勇者から竜王がシドーの名前を聞くシーンがあるんですけど、本当は知ってるのにとぼけるんですよ(笑)。つまり竜王は、シドーの存在自体は異魔神の時代から知ってはいたけど、邪心の像を通信機扱いするなど、眼中になかった。しかし、放っておくと、のちのち厄介な存在でもあることも知っている。で、アロスに倒させた。 結局はこれも問題を先送りにしただけではありますが。竜王が「I」で再び勇者の前に立ちはだかる事になる大きな理由になればと考えています。
「紋章を継ぐ者達へ」の10年間
──掲載誌がヤングガンガンに移るにあたって、特に青年誌であるということは意識しましたか?
そんなに意識はしてないですね。まったく違わないというわけではないんですけども、そんなに違和感がなくできていると思います。違うのは読者のテンションですかね。少年誌は、子供が一生懸命に応援してくれるんです(笑)。手紙なんかも、毎回どさーっと届いて、それには励まされました。
──タッチや演出が前作から変化していますが、それは掲載誌を意識したわけではなく、純粋に作風として変えてみようということだったんでしょうか。
ここまでは読者の方でも受け入れてくれるだろうっていう気持ちで、多少難しい演出とかを加えたように思います。
──このシリーズを読んできた読者が、次第に大人になってきたからということでしょうか?
それもありますね。だけど、技の名前を叫びながら繰り出すみたいな少年誌的なノリは残したい感じです(笑)。前作でも、「いつまでも子供じゃないよな」ということは考えながらやっていました。それで、後半に進むにしたがって凝ったことをやっていたんです。まあ、ひとつの雑誌、少年誌でやるんだったら、最後まで同じその少年誌のテンションで終わらせるべきだったとも思うんですけどね。
──ヤングガンガンでは創刊から10年間、ずっと連載を続けてきたことになります。12月5日発売のヤングガンガンNo.24では、創刊10周年記念として藤原さんが描き下ろしたヤングガンガン連載作品のオールスターイラストも付いていますね。
いま載っている作品でキャラクター大集合の絵をという依頼だったんですけど、作業をどうするかが大変でした。資料として連載作品の単行本が全部ドサッと送られてきても困りますからね。だからスクエニにつめて、3日ぐらいかけてやってましたね(笑)。
──絵としては、どういうロケーションのイメージなんですか?
エッシャーのだまし絵ですね。多少アレンジはしてますけども。スクエニっぽさって何だろうと考えたんですけど、なかなか難しかったんです。お城とかにしようかと思ったんですけど、作品によっては、特に萌え系のキャラクターなんかはお城にいることにすると全然そぐわないじゃないですか。それで、ダンジョンならいいかと思ってダンジョンということにしました。
──エッシャーとかメビウスとか、もともと藤原先生のお好きな作家のテイストは、こういうイラストとか、あるいは「ロトの紋章」シリーズのような少年マンガを描くのにも影響してくるものですか?
全部影響してますね。絵とかに出てきちゃいます。でも、キャラクターのほうが怖いですよね。自分が描くとどれも自分の絵になっちゃうんですよ。だから顔はかなり似せてるんですけど、体とかはどうしても全部こっちの絵になっちゃうんです。なかなかそれぞれの特徴を出すのは難しいですね。
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創刊10周年記念号!
- 藤原カムイ描き下ろし創刊10周年ピンナップ付き
- 原作:七月鏡一 作画:梟「牙の旅商人 ~The Arms Peddler~」連載再開
- 原田雅史の集中掲載「トゥー・マッチ・ペイン」スタート
「ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章~紋章を継ぐ者達へ~」連載10周年記念Twitter企画実施!
詳しくはYG公式サイトにて。
- 作画:藤原カムイ 脚本:梅村崇 監修:堀井雄二「ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章~紋章を継ぐ者達へ~」20巻 / 12月25日発売 / 576円 / スクウェア・エニックス
- 「ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章~紋章を継ぐ者達へ~」20巻
新時代の賢王、覚醒!
蜃気楼の塔へとやってきたポロン、レーベン、ベゼル達。塔の中で異空間の迷宮へと迷い込んだレーベンとベゼルは、賢王となるための試練を課せられることになる。はたして、無事新たなる賢王が誕生し、この迷宮から抜け出せるのか!? その時、ジパングには神器を狙うハロルドの魔の手が迫っていた。イサリは、自らの使命を帯びて、人ならざる者へと変貌しつつあるハロルドと対峙するが!? 導かれし者達の物語、第20幕。
藤原カムイ(フジワラカムイ)
1959年生まれ。1981年マンガ宝島(宝島社)にて「バベルの楽園」でデビュー。以降読み切りを中心に活動し、1987年に月刊コミックバーガー(スコラ)にて原作に寺島優を迎え「雷火」を連載。邪馬台国を揺るがす陰謀に立ち向かう青年を描き人気を博す。1991年には月刊少年ガンガン(スクウェア・エニックス)にて原作に川又千秋を擁し「ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章」をスタート。TVゲームであるドラゴンクエストの設定を活かしヒット作に。同作は1996年に映画化され、2004年からはヤングガンガン(スクウェア・エニックス)で続編「ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章~紋章を継ぐ者達へ~」を連載中。