物語終盤に、報瀬がぐんと成長する(花澤)
──ここからはすでに放送されている第10話までの内容にも触れながら、ネタバレありでお話を聞いていけたらと思います。最終話までのアフレコを終えられたということですが、ご自身が演じられているキャラクターへの印象は、最初の頃と変化しましたか?
水瀬 変わりましたね。私が最初、キマリに感じていたのは、どこかほっとけない感じのかわいさだったり、天真爛漫な子に見えるけど意外と小心者だったりという部分だったんですけど、後半にいくにつれ、そんな彼女が精神的に成長していくのが、セリフひとつをとってもわかって。キマリにはリンという妹がいるんですが、「あっ、やっぱりお姉ちゃんなんだな」って思うシーンが増えたんです。
──“お姉ちゃんらしさ”みたいなものが出てきた。
水瀬 意識してそう変わったんじゃなく、周りが変えてくれたというのもあると思うんです。キマリがあきらめないとか、必ず進むんだっていう気持ちでいる限り、ほかの3人も絶対付いてきてくれる。そういう絆が、最後に向けて強まっていくので。キマリが持っている潜在的な明るさ、温かさというのは、どのキャラクターにとっても大きなポイントになるんですけど、キマリはきっと、そういうキャラクターをがんばって演じているんじゃないんだろうなって。そうわかるところが、彼女のすごい部分だと思います。
──第8話でも、船酔いで気落ちしているみんなに、キマリが前向きなひと言を放つのが印象的でした。
水瀬 「選んだんだよ、自分で!」のところですね。あの空気の中で、なかなか言えることじゃないですよね。そこもそうですけど、この4人であることにすごく意味があるシナリオになっていて。どのキャラクターも、あと数センチ性格が違ったらこうはうまく噛み合わなかったんじゃないかというポイントがいっぱいある。奇跡のような4人だなって思います。
花澤 報瀬ちゃんは最初、学校で「南極」ってあだ名で呼ばれているくらい、ずっと南極、南極って言っている子で。これまでにも一緒に南極に行こうと声をかけてくれた人はいたっぽいけど、結局離れちゃって、今までずっと1人だったんですよね。南極に行くことで頭がいっぱいだったろうし、実際100万円を貯めるためにずっとバイトもしていて。
──友達とも遊ばず、ただ南極に行くことだけを目指してきた。
花澤 そう、だからほかの3人とのやり取りの中で、ようやく彼女のかわいらしい部分、等身大の女子高生らしさみたいなものが見えるようになったのかなって。でもやっぱり、絶対南極へ行くんだっていう芯の強さで、ちゃんとみんなを引っ張っていく。考え方としてはすごく、わかりやすいキャラクターですよね。日向ちゃんとの言い合いのときもそうでしたけど、一本筋が通ってるというか。
──日向と報瀬の言い合いというと、第6話の、シンガポールでの出来事ですね。
花澤 そうです。みんなで行かなきゃ意味がないって考えに変わってはいるんだけど、絶対南極に行くんだ、失敗したくないんだって思いはブレないんだなっていうのが伝わってきました。成長というと物語終盤、11話・12話のあたりに、彼女がぐんと成長するエピソードがあります。南極には着いたけれども、それだけではあまり実感が湧いていないというか……。南極に行きたい、行きたいと思っていたけど、そこで自分は何をすればいいのか、何を感じるんだろうかというのが、最初はわかっていない。
──報瀬はもともと、お母さんが南極で行方不明になって、未だ見つかっておらず、だから自分が行って見つけるんだと言っていましたが、その目標はある意味では漠然としたものですもんね。
花澤 そこの落としどころをちゃんと見つけられたときに、何か変化があるんじゃないかなと思います。ぜひ彼女の成長を見届けてほしいですね。
噛んでしまったテイクが、あえて使われた(花澤)
──今、花澤さんから、報瀬の等身大の女子高生らしさについてのお話がありましたけど、第1話を観たときは彼女があんなにポンコツキャラだとは思わなくて。
花澤 あはは(笑)。うん、あんなにかわいくて、クールビューティという感じもあるのに、緊張するとすごく固くなっちゃうとか、残念なところがいっぱいあるんですよね。第1話でも、トイレで「しゃくまんえん……」って泣いていたあたりから出てたと思うんですけど(笑)。
──ビデオカメラに向かってレポートをするシーンとか、報瀬はセリフを噛んでいるような場面もたびたびあるじゃないですか。そういうときのお芝居がすごく自然だと思ったんですが、何かコツとかあるんでしょうか。
花澤 もちろん噛んでいる演技をすることもあったんですけど、噛んでいるところは、本当に噛んでしまったテイクが使われてるんですよ(笑)。アフレコ中、ちょっと噛んじゃったくらいなら止めずにキリがいいところまで進めちゃうことがあるんですけど、後で「ここ噛んだと思います……」って自己申告したら、「このまま使うからいいよ」って言われて。
水瀬 逆に、本番では普通に言えてたけど、テストの時に噛んじゃってたのがリアルだから、そっちを使いますみたいなのもあったんじゃないかなあ。
──そうだったんですね。噛んだんじゃないかと思って、思わず巻き戻してしまったくらいリアルでした。
水瀬 結月にもそういうシーンがあったよね?
花澤 あった!
水瀬 第10話で、キマリと結月が食堂で会話するシーンがあって。途中、キマリが「結月ちゃんはおかわりいる?」って席を立つんですけど、それに対する結月の「え、あ、でも……」みたいな声が、台本にはないセリフだったんですけど、言いよどむ感じがすごくリアルで。こういう温度感あるよね、使おうって話になったんです。そういうの結構、あったよね。
花澤 採用されがちだったね。
──アフレコ中はどんなお話をされていたんですか?
花澤 みんなで物語の内容を話すことが多かったです。「この話、何回観ても泣いちゃうよね」みたいな。ほかには……保奈美さんのキャラが強かったなって。
水瀬 あっ、保奈美さんはそうですね(笑)。
──保奈美さんは小松未可子さんが演じていらっしゃる、ちょっと甘えたような、語尾に特徴のあるしゃべり方をされる女性キャラですよね。
水瀬 そうですそうです。何かにずっと甘えてる感じで。
花澤 小松さんはあれでもまだ「甘えが足りないなー」って言ってたよね(笑)。
水瀬 途中から出てくる大人チームのキャストの方々は、キャラクターの色の付け方がさすがだなと思っていました。メインキャラが食われちゃわないよう、がんばりました。
友達とこんな関係になれたら、怖いものなんてない(水瀬)
──全話を通して、何か印象に残っているセリフはありますか?
花澤 私はやっぱり「ざまーみろ」ですかね。報瀬ちゃん、南極に着いたら今まで自分をバカにしてきたやつらに「ざまーみろ」って言うんだって宣言していましたけど、それがしっかり……実ったというか(笑)。「ざまーみろ」という言葉のチョイスもいいなと思いました。言いたくなるとき、きっとあるよなあって。
──花澤さんはラジオ(「ラジオ 宇宙よりも遠い場所~南極よりも寒い番組~」)でも、普段使わない言葉だけど、言ってみたら気持ちよかった、とおっしゃっていましたね。
花澤 そうなんですよ。 だから皆さんにも、配信やDVDで第9話を観直すときは、テレビの前でぜひ言ってみてほしいです。せーので「ざまーみろー!」。
水瀬 隣の部屋からいきなり聞こえたら怖いかもですけどね、「ざまーみろー!」って(笑)。
──確かに(笑)。水瀬さんはいかがですか?
水瀬 キマリは窮地に立たされたときに発揮する主人公力みたいなものがすごくあるキャラクターだと思ってて。ぼそっと言ったひとことがナチュラルに名言だったりするんですけど、そんな彼女が子供っぽくなるというか、ちょっと甘えた感じになるのがめぐっちゃんとのやり取りだと思うんです。
──めぐっちゃんというのは、キマリの昔からの親友・めぐみですね。
水瀬 めぐっちゃんとのシーンは、どのシーンも好きなんです。漢字の書き取りをしながら話をしている普通のシーンとか、めぐっちゃんが感情を爆発させる第5話ラストでのぶつかり合いとか。あの「絶交しに来た」「絶交無効」っていうやり取りは、この2人だからこそ生まれたやり取りだと思うし、友達とこんな関係になれたら、きっともう怖いものなんてないんだろうなって思える瞬間でもありました。物語的にも、いよいよ日本を出るっていう節目の回でしたし、その最後にめぐっちゃんとのやり取りを濃密に描いてもらってうれしかったです。自分の中で、すごくめぐっちゃんの存在が大きくなりましたね。
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「しらせ」の中は、本当に迷路みたいでした(花澤)
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- 放送情報
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- AT-X:毎週火曜20:30~
- TOKYO MX:毎週火曜23:00~
- BS11:毎週火曜23:30~
- MBS:毎週火曜27:00~
- スタッフ
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- 原作:よりもい
- 監督:いしづかあつこ
- シリーズ構成・脚本:花田十輝
- キャラクターデザイン・総作画監督:吉松孝博
- アニメーション制作:MADHOUSE
- キャスト
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- 玉木マリ:水瀬いのり
- 小淵沢報瀬:花澤香菜
- 三宅日向:井口裕香
- 白石結月:早見沙織
- 藤堂吟:能登麻美子
- 前川かなえ:日笠陽子
- 鮫島弓子:Lynn
- 高橋めぐみ:金元寿子
- 玉木リン:本渡楓
- 白石民子:大原さやか
- 迎千秋:てらそままさき
- 財前敏夫:松岡禎丞
- 氷見大:福島潤
- 轟信恵:阿澄佳奈
- 佐々木夢:遠藤綾
- 安本保奈美:小松未可子
- 小淵沢貴子:茅野愛衣
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- 水瀬いのり(ミナセイノリ)
- 1995年12月2日生まれ、東京都出身。2010年、「世紀末オカルト学院」の岡本あかり役でデビュー。2013年に「恋愛ラボ」で棚橋鈴音の声を担当したことで注目を集め、以後「ご注文はうさぎですか?」のチノ役、「がっこうぐらし!」の丈槍由紀役、「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」のヘスティア役など数々の作品で主要キャラクターを担当する。2015年12月の20歳の誕生日にはソロ歌手としてデビュー。現在までにシングル5枚、アルバム1枚をリリースしている。近年の出演作に「信長の忍び」の千鳥役、「Re:ゼロから始める異世界生活」のレム役、「少女終末旅行」のチト役など。
- 花澤香菜(ハナザワカナ)
- 1989年2月25日生まれ、東京都出身。2006年放送の「ゼーガペイン」でヒロインのカミナギ・リョーコ役に抜擢され、その後も「To LOVEる -とらぶる-」の結城美柑役、「化物語」の千石撫子役、「海月姫」の倉下月海役などの人気キャラクターを演じる。そのかたわら多くの作品でキャラクターソングを歌い、2011年放送の「ロウきゅーぶ!」では声優ユニット「RO-KYU-BU!」のメンバーとしても活躍。2012年4月にソロデビューを果たし、現在までにシングル12枚とアルバム4枚をリリースしている。近年の出演作に「3月のライオン」の川本ひなた役、「恋と嘘」の高崎美咲役、「夜は短し歩けよ乙女」の黒髪の乙女役など。