コミックナタリー Power Push - 「3×3EYES」高田裕三×「火葬場のない町に鐘が鳴る時」和夏弘雨
WEBマンガで繋がる、ベテランと新鋭の創作論
高田裕三が「3×3EYES」の正統続編「幻獣の森の遭難者」を引っさげ、講談社とエブリスタのWEBマンガサイト・ヤングマガジン海賊版に登場して約半年。6月27日についに単行本1巻が発売される。また同日、サスペンスホラー「火葬場のない町に鐘が鳴る時」1~2巻が同時刊行され、新鋭・和夏弘雨が単行本デビューを果たす。
コミックナタリーでは発売を記念し、高田と、「3×3EYES」の大ファンだと語る和夏の対談をセッティング。WEBマンガで活躍するベテランと新鋭に、お互いの作品やWEB媒体でのマンガ制作について語り合ってもらった。
取材・文・撮影/三木美波
ヤングマガジン増刊海賊版およびヤングマガジン(ともに講談社)にて1987年から2002年まで15年にわたり連載された「3×3EYES」の正統続編。前作の最終回から作中で12年の歳月が経ち、三只眼吽迦羅のパイと、无(ウー)の八雲、その仲間たちにも変化が訪れていた。そして謎の能力を持つ少女たちが、「世界の崩壊を止めるため」八雲たちに戦いを挑む。
- 藤井八雲
- 主人公。パイと一心同体の不死人「无(ウー)」になった少年。
- パイ
- 伝説の妖怪・三只眼吽迦羅の生き残りである少女。
- 葉子
- 化蛇が転生した姿。ハーンと結婚し、娘・セツを出産。
- ハーン
- 八雲とパイの旅の仲間で、秘術商人。想いを寄せていた葉子と結婚。
- 担当編集からひとこと
- WEB版「3×3EYES 幻獣の森の遭難者」には、毎回連載の最後のページに高田先生描き下ろしのフルカラーのあとがきが載っています。単行本には書店チェーンによって描き下ろしペーパーも付きますので、ぜひ手に取ってください。
人口6000人、山あいの小さな町・みとず町。その田舎町では夕方6時になるとある不思議なチャイムが鳴り響く。その音が聞こえたら、夜明けまで外に出てはならない。だが、10年ぶりに東京からこの町に戻ってきた勇人は、この掟を破ってしまう。そこに現れたのは、冥奴様と呼ばれる異形の化け物だった。
- 卯月勇人
- 父親の転勤にともない10年ぶりに生まれ故郷・みとず町に帰って来た高校生。
- 豊橋咲
- 勇人の幼なじみ。勇人がいない間もみとず町にずっと暮らしていた。この町のことに詳しい。
- 冥奴
- 夕方6時のチャイムとともに現れる得体の知れない化け物。
- 担当編集からひとこと
- ヤンマガ海賊版の中でも1、2位を争う人気作です。正体不明の冥奴と呼ばれる化け物に襲われる恐怖や謎解き、極限下での友情など見応えたっぷりです。
ぜひ一度、読んでみてください。
ちなみに単行本の1巻と2巻のカバーイラストは、実はつながった一枚絵になっています。並べてみるとシースルーの冥奴様が現れますよ。
「3×3EYES」の続編は怖くて近寄れなかった(高田)
──和夏さんは、子供の頃から「3×3EYES」の大ファンだとか。
和夏 そうなんです。まさか憧れの高田先生とお話ができるなんて、一生の思い出です……。半年前、僕が「火葬場~」を連載しているヤンマガ海賊版で「3×3EYES」の続編が始まるって聞いて、テンションめちゃくちゃ上がりました。
高田 ありがとうございます。お恥ずかしい……(笑)。
和夏 最終回近くのリバース・ハーンがオリジナルのハーンを助けるために八雲たちと敵対しなきゃいけないシーンとか、すごく熱いですよね! あと綾小路葉子ちゃんが好きで、2部の最後とか本当にかわいそうで……。
──これだけで1時間語れそうなほど、愛に溢れてますね(笑)。いま和夏さんがおっしゃった葉子やハーンは「幻獣の森の遭難者」にも登場します。続編の構想は、いつ頃から生まれたのでしょうか?
高田 続編をっていうお話自体は結構前からいただいていたんですよ。ただ続編って難しくて。1度完結した話を、また練り上げると、大概ダメなものができあがるんですよね。それが怖くて近寄れなかったってのがあるんですけど。
──きっかけみたいなものがあったんでしょうか?
高田 震災……だけではないんですが、そういう体験をすると、自分の中でこだわりがなくなっちゃって。別に失敗してもいいや、せっかく頼まれたんだからやってみようとなりました。ただ最初は長編じゃなくて4コマで考えていました(笑)。
和夏 4コマも楽しそうですね。「幻獣の森の遭難者」は、新しいストーリーが始まっているけど、それを支えるようにいままでのキャラが出てきてファンとしてはワクワクします。敵だった九頭龍将の舞鬼ちゃんとかも大活躍していて! 先生のお話は、はじめは敵だったのにいつの間にか味方になっていることが多い気がします。
高田 そうなんですよ。敵のサイドからお話を描いてしまうと、ただやっつけておしまい!ってならなくて(笑)。
──情が移ってしまう?
高田 ええ、それもあるし、やはり敵には敵の正義があるので。続編でもちょっと前に悪役・ゲゲネイスの側を描いてしまって……(笑)。こんな感じで終わるんじゃないかなって思っていた最初の構想と、もうぶれてきちゃってる(笑)。
和夏 僕は物語の顛末って意外と考えていません。どちらかというと、キャラクターのことをずっと考えているタイプです。このキャラはどういうやつで、何がしたいんだって。
高田 キャラといえば、和夏さんの「火葬場~」に出てくる冥奴様。怖いですねえ。どざえもんみたいで、本当にいそうだから怖いんだと思う。演出がいきすぎてないから。
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ヤングマガジン海賊版
「世界にあふれる海賊版の面白さだけマネしたい」「とびきり面白い作品ばかり集めたい、マンガ界に不敵な波風を立てたい」のコンセプトで1986年から1995年まで刊行されたヤングマガジンの増刊号。マンガ雑誌・ヤングマガジン海賊版の記念すべき第1号の表紙を手掛けたのは大友克洋。
「攻殻機動隊」「3×3EYES」「工業哀歌バレーボーイズ」など数々のヒット作品を生み出した伝説のレーベルである!
その「伝説のレーベル」が今、E★エブリスタ×ヤングマガジン編集部の手によって、WEBコミックレーベルとして堂々復活!! 投稿小説作品のコミック化で、今までにない異端な面白さを追求していく!!
スマホからも楽々読める! ヤングマガジン海賊版のアプリが登場
不老不死の術を持つ三只眼吽迦羅の少女・パイと、その不死身の守護者・无となった少年・八雲。パイの「人間になりたい」という願いをかなえるため、共に冒険の旅に出る。だが、それは人類を滅亡へと追い込む破壊神との、永く激しい戦いの始まりであった。そして……すべてが終わった最終回から12年──、パイと八雲たちの新たな冒険の幕が上がった!コミック3300万部の大ヒット作の正統続編が、完全新作で登場!!
- 漫画:和夏弘雨 / 原案:碧海景「火葬場のない町に鐘が鳴る時」2015年6月27日発売 / 講談社
- 「火葬場のない町に鐘が鳴る時(1)」 / Amazon.co.jp
- 「火葬場のない町に鐘が鳴る時(2)」 / Amazon.co.jp
人口6000人、山あいの小さな町・みとず町。その田舎町では夕方6時になると不協和音の鐘が鳴り響く。その音が聞こえたら、夜明けまで決して外に出てはいけない。だが、10年ぶりに東京からこの町に戻ってきた勇人は、この掟を知らずに破ってしまう。そこに現れたのは、冥奴様と呼ばれる得体の知れない化け物だった。PC&スマホマンガ雑誌・ヤンマガ海賊版発のサスペンスホラー!!