コミックナタリー Power Push - マーガレットコミックス特集 あの頃も、これからも!一生少女マンガ宣言 第7回 やまもり三香「ひるなかの流星」「椿町ロンリープラネット」
カッコいい男性キャラの研究
田舎育ちのマイペース女子が、高校教師と同級生男子の間で揺れ動く三角関係を描き人気を博したやまもり三香「ひるなかの流星」。3年半にわたる連載がついに幕を閉じた。8月25日には「ひるなかの流星 番外編」と、新作「椿町ロンリープラネット」1巻が同時発売される。
コミックナタリーではこれを記念し、やまもりにインタビューを敢行。完結した「ひるなかの流星」に寄せる思いや、新作「椿町」について、そして魅力的な男性キャラクターを生み出す秘訣を聞いた。
取材・文/門倉紫麻
どの家庭にも、何かしら事情はある
──「椿町ロンリープラネット」は、時代小説家の暁と、女子高生で家政婦のふみとの同居生活を描いています。どのような経緯で生まれた設定ですか?
同居ものを描いてみたかったのと、主人公の相手は年上にしよう、というのがありました。今、マーガレットの中で年上との恋愛ものはないので。でも最初は大家族もので、主人公に兄弟がたくさんいるようなコメディを考えていたんです。その後、ギリギリまでファンタジーにしよう、という話にもなっていましたね。
──小説家という設定は?
家で、1人で机に向かってガリガリやるような仕事で、ちょっと汗臭そうな、何日も風呂入ってなさそうだなあ、という感じの人にしたくて(笑)。毎日おしゃれなスーツを着てきちんと会社に行っているような人とかだと家政婦はいらないですし。何かに夢中になっていて、1人では生きていけなさそうな人がいいかなと。
──家政婦としてやってくるふみちゃんは、とってもいい子ですね。友達にも敬語で話してしまうのはなぜなんでしょう。
ちょっとつかめない、天然なところがあるんだと思います。16歳なのにお母さんぽいというか、おばあちゃんぽい感じの子にしたくて。今どきではない感じの。
──前作「ひるなかの流星」の主人公・すずめちゃんも、高校生らしいというよりちょっと達観しているところのある女の子でしたね。叔父さんと2人暮らしでしたし、今回も親と離れて他人と同居していたり、家族でワイワイという家の子ではないというのも共通しています。
そうですね。私自身は兄弟姉妹が4人いて、大家族だったんです。
──単行本のあとがきにも、仲のよい様子を書いていらっしゃいますね。
はい。でもマンガで描くときはひとりっ子とか、縁が薄いような子になる。特に親との縁が薄い子が多いですよね。私は17歳の時に留学して、2年間ホームステイをしていたんですけど、戻ってからも21歳の時には家を出て1人暮らしを始めて。もともと両親も共働きであまり家にいなかったですし、親とずっと一緒にいる状態というのがあまりよくわからないんだと思います。
──それが日常、というか。作中でも、親と離れて暮らしていることをことさら不幸なこととしては描いていないのがいいですよね。そのことに物語が引っ張られたりはしない。
そうですね。何かしら家庭の事情というのはあって、それぞれみんな違うと思うので。そういう家庭も普通なんじゃないかな?って思います。
自然に「普段は何をしているのか」を想像してしまう
──男性キャラクターのカッコよさも大きな魅力です。どんなふうに作っていかれるのでしょう。
映画とかでカッコいい男の人を観たら、「なぜカッコいいのか」「どのしぐさがカッコいいのか」を研究しますね。自然にやってしまうんですけど。この性格なのに、あそこでああいうことを言ったりするからカッコいいんだなあとか、今この人こういうこと考えてるんだよきっと、とかしょっちゅう考えています。昨日「インセプション」を(マンガ家・森下suuの作画担当の)なちやんと一緒に観てたんですけど、ジョゼフ・ゴードン=レヴィットっていう俳優さんに2人でどハマリして。なちやんはさっそく待ち受け画面にしてました(笑)。仕事を淡々とこなす人で、あまり感情を表に出さない役柄なんですけど、急に女の子に「キスしてみろ」とか言うんですよ。「普段からこういう感じなのがうかがえるよね」「きっと何事にも驚かないんだよ」とか、普段は何をしているのかとか話しながら、どんどん想像してしまう。キャラを描くときも、このキャラだったらこういうことするよね、とかそういう想像をしながら作っていきます。
──実際に俳優さんをモデルにしたりもされていますよね。「ひるなかの流星」の馬村は坂口健太郎さんだとおっしゃっていました。
そうですね。「ひるなか」の番外編を描くときに、坂口くんの写真を見て馬村の顔を思い出したりしていました(笑)。中身は自分流なんですけど、外見だけは「あの人の感じでいこうかな」とイメージすることが多いです。あの映画のあの人、とか周りにいるあの人、とか作品に合わせて。「椿町」の暁は、「ロン毛キャラってカッコいいよね!」というところから始まって。「王家の紋章」のメンフィスのような。
──そこだったんですね!
はい。ロン毛、黒髪のキャラってカッコいいなあと。
──暁は伸ばしっぱなしでロン毛になっているんですよね?
そうですね。全然美容院に行ってないので。おしゃれ、ではないです(笑)。
──暁を時代小説家にしたのはなぜですか?
恋愛ものを書くタイプではないだろうなと。ミステリーだと私がわからないですし。時代小説だったら、友人が詳しいので書けるかなと。
──あらすじが少しだけ書いてあって面白そう、と思っていました。
友人が内容を考えているんですよ。「『葉隠れまんじゅう屋』で!」とか。かなり詳しくできているようで、いつマンガに出すのかと思ってるみたいですが、出さないです(笑)。
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やまもり三香(ヤマモリミカ)
10月8日生まれ。石川県出身。天秤座A型。 2006年にザ マーガレット(集英社)にて「キミのクチビルから魔法」でデビュー。 主な作品に「シュガーズ」など。 2011年から2014年にはマーガレット(集英社)にて「ひるなかの流星」を連載。全12巻で累計170万部を突破する。2015年5月、同誌にて「椿町ロンリープラネット」の連載がスタート。
2016年1月22日更新