コミックナタリー PowerPush - 吉河美希「山田くんと7人の魔女」

男子も女子も、入り乱れてキス三昧!「ヤンメガ」の吉河美希が放つ、型破りな学園ラブコメ

入れ替わりものが人気ジャンルなことは知らなかった

──そうして「ヤンメガ」が終わったのが2011年5月、準備期間を経て「山田くんと7人の魔女」は2012年2月にスタートしました。「ヤンメガ」がヒットしただけに、プレッシャーは大きかったのでは。

もちろんプレッシャーはありましたよ。どこで何してても「次は?」って話になって(笑)。とりあえず「ヤンメガ」が終わった後、編集部とそろそろ打ち合わせしますかって集まって、「新連載は来年になっちゃうんだけど、1回別冊少年マガジン(講談社)に読み切りを描かないか」って言われたんですよ。それで「山田くん」のプロトタイプと、小学生が主人公の「魔王の教室」っていう話を作って2つ持っていった。で、後者のほうが載ることになったんです。

「魔王の教室」の扉ページ。

──それは編集部判断で。

はい。「魔王の教室」は主人公が小学生の女の子で、マガジンで連載にするには難しかったので、その別マガのタイミングで載せないとお蔵入りだね、という話になって。「山田くん」のプロトタイプは連載版の第1話まんまだったんですけど、そっちを連載作にすることになりました。次は入れ替わりものをやりたい、っていう気持ちは、実は「ヤンメガ」のときからあったんです。

──そうなんですか! それは、どういうところから興味が。

本当にぼんやりとなんですけど、女の体に入っちゃった男がどんな反応してるのかとか、逆に男の体に入った女の子がどういうことをするのかっていうのが、単純にキャラクターとして描きやすそうだなと思ったんです。私、キャラクターを動かすのが好きなので、これは絶対面白くなるっていう確信も湧いてきて。男と女の脳や体の違いを解説してる医学書というか専門書は、一応「ヤンメガ」のときからちょいちょい手を出してました。

──どのくらい読まれたんでしょう。

そんなにはなくて、10冊くらい。入れ替わる、って非科学的な現象なんであんまり専門的にはならないようにしてますけど、一応そういう本で読んだことを踏まえた上で描いてます。とは言ってもコメディらしさを出すために無視する事が多いですが(笑)。

──入れ替わり(トランスセクシュアル)ものが一大ジャンルとして人気があるっていうことはご存知でしたか?

一大ジャンルなんですか? たとえば戦国ものが好きって人と、同じ次元ってこと?

1巻第2話より。

──そうですね。ちょうど「山田くん」と同じ時期にも、漫画アクション(双葉社)では押見修造さんが「ぼくは麻理のなか」っていう入れ替わりものをスタートさせていたり。

全然知らなかったです。本当に入れ替わることへの興味から純粋に出発しただけなので。

──連載が始まってから、参考に入れ替わりものの作品を読むこともなかったですか?

読んでないですね。読む時間もないし、基本的に昔からマンガをたくさん読んでたわけじゃなくて、どちらかというとゲームしちゃうもんで(笑)。

「みんな先生に楯突かないんだ!」

──ちなみに、どんな学生時代だったんですか? 「ヤンメガ」も「山田くん」も主人公がヤンキー少年ですが、吉河さんも元ヤンだったり……?

しないですよ! 大丈夫です(笑)。ただ育ったのが東京の下町のほうなんで、あんまりお上品ではなくて。だから描きやすいキャラクターを描くと、一般的には「ヤンキー」という分類に入ってしまうみたいです。

──ヤンキーのお友達がたくさんいた。

うん、みんなそんな感じなんですよ。友達のお父さんがヤクザ、とか普通で。高校から地元を出たんですけど、そこで初めて「授業ってちゃんと聞かなきゃいけないんだ!」「みんな先生に楯突かないんだ!」とか、驚きの連続だったんです。「あ、中学で私の周りにいた人たちはおかしかったんだ」って気づいた(笑)。

──(笑)。中学は学級崩壊状態だったってことですか?

「山田くんと7人の魔女」カラーイラスト

頼れるのは仲間と自分、基本的に先生と親は敵、っていう思想だったんですよね(笑)。

──吉河さんはそれを横目に見ながら、真面目に勉強してた?

いや、勉強嫌いだったし、楯突いてましたね。先頭に立って。

──あははは! それはヤンキーじゃないんですか(笑)。

ヤンキーじゃないですよ! まあ、外から見ると総じてみんなヤンキーってことになるのかもしれないけど、……自覚症状がないのでよくわからないです(笑)。今思うと本当に周りの大人には大変ご迷惑をおかけしましたという感じで……学生時代の先生には、いまだにお会いすることがあるのですが頭が上がりません。

あらすじ

進学校である朱雀高校一の問題児・山田は今日も先生に怒られて超不機嫌。そのうえ、優等生の白石うららと一緒に階段から落っこちて、死んだ!
と思ったら白石と体が入れ替わっていた!! 相性サイアクな2人の運命が、不思議な力をきっかけに結びつく!!

キスするとナニかが起こるスクール・ラブ・コメディ開幕!!

最新5巻は2013年2月15日より発売中。また講談社のサイト・コミックプラスでは、スマートフォン&タブレットでも読める第1話が、全ページ公開されている。

吉河美希(よしかわみき)

プロフィール写真

2003年マガジンSPECIAL(講談社)にて「GLORY DAYS」でデビュー。以降、真島ヒロのアシスタントを経て、2005年に少年マガジンワンダー(講談社)に「ヤンキー君とメガネちゃん」を掲載。読み切りや短期連載での掲載を経たのち、翌年、週刊少年マガジン(講談社)にて正式連載が開始した。不良少年とクラス委員長の元不良少女が漫才のような掛け合いを繰り広げるコメディは人気を博し、2010年にドラマ化。2011年に完結した後、2012年2月から「山田くんと7人の魔女」の連載を開始した。


2013年2月18日更新