「ヲタクに恋は難しい」完結記念インタビュー | 「続けてこれたのは読者さんの支えのおかげ」と語るふじたが、今だから明かす「ヲタ恋」で描きたかったこと

成海役の伊達朱里紗、宏嵩役の伊東健人は
「続投がいい!」と駄々をこねた

TVアニメ「ヲタクに恋は難しい」キービジュアル

──2018年にはTVアニメ化もされましたね。当時はまだアニメ化前ですが、以前コミックナタリーの特集には成海役の伊達朱里紗さん、宏嵩役の伊東健人さんに出ていただきました(参照:「ヲタクに恋は難しい」特集 伊達朱里紗&伊東健人のヲタップル声優と作者・ふじたがトーク)。

おふたりとはアニメ化が決まる前のPVからお世話になっていて。アニメも「続投がいい!」って駄々をこねて続投してもらいました(笑)。悲しいですけど、アニメ化で声優さんが変わるってことよくあるじゃないですか。そういう事情もわかってはいたんですけど、いやだーって(笑)。でもこの2人でよかったってずっと思ってます。

──おふたりにとっても「ヲタ恋」は大事な作品になってるんじゃないでしょうか。

そうだったらうれしいですね。こっちはこっちで、「ワシが育てた」みたいな一方的なクソデカ感情を抱えながら……(笑)。全然育ててないですし、もちろんおふたりの実力なんですけど、「昔から知ってるもんね」っていう気持ちはありますね。どんどん活躍していく姿を見てめっちゃうれしいです。

「ヲタクに恋は難しい」2巻より。

──樺倉役の杉田智和さん、花子役の沢城みゆきさんもとてもイメージ通りだなと思いました。

樺倉と花子は編集部さんから声優さんを提案してもらったんですが、最初、樺倉が杉田さんって聞いたときはビックリした記憶があります。樺倉は、内面はけっこう繊細でちょっとヘタレみたいなところがあるので、杉田さんじゃ強すぎるんじゃないかなと思って。強いから、杉田さんは(笑)。

──確かに(笑)。

最初に杉田さんが樺倉を演じてくださったとき、今よりちょっと怖い感じだったんですよ。ドスが利いてて低くて。それで「気持ち、年齢感を下げてください」ってお願いしたら、2回目で一番いいところに落としてくださって。「あ、これ!」ってなって。微調整の仕方が絶妙で、やっぱりすごいなと。結果、すごくいい樺倉ができあがって、ありがたいなって気持ちでいっぱいでした。沢城さんの花子も理想的な花子でしたし。

──尚哉役の梶裕貴さん、光役の悠木碧さんはいかがですか?

「ヲタクに恋は難しい」4巻より。

実は尚哉はキャラクター作るときから、梶さんが演じてそうなキャラクターをイメージしてたんです(笑)。梶さんって今でこそカッコいいキャラとか熱血キャラとかなんでもやられてる方ですけど、私の世代だとかわいらしい声っていうイメージが強くて。贅沢言ってるのはわかってたんですけど、「できれば梶さんみたいな感じの声で……」ってわがままを言ったらまさか通ってしまい……。

──では本当にふじたさんのイメージした通りの尚哉になったんですね。悠木さんはいかがでしたか? キャスト発表されたときは少し意外な感じはしたのですが。

光はアニメで登場させるにあたって、監督さんからご提案いただいたんです。私もどうなるか想像がつかなかったんですが、悠木さんはもう七色の声すぎて……。光のキョドる演技が最高でした(笑)。でもキャラクターに声が付くと新しい魅力も出てきますよね。自分の作ったキャラなのに好きになっちゃう(笑)。自分のキャラを好きって言うの恥ずかしいんですけど、これはもう別物だから好きになるよって思います。

いろんなキャラに私の駄目なところを分け与えている感じ

──キャラクターの話で言うと、こんな質問もありました。「作中でみんながやっているオンラインゲームのキャラクターの強さをランキング形式で教えてください」

「ヲタクに恋は難しい」6巻より。

キャラクターの育成度としてお答えするなら、宏嵩、成海、光、樺倉、花子、尚哉の順かな。光はゲームは得意だけど尚哉に薦められて始めたばかりなのでキャラクターはまだ育ってなくて、ただプレイヤースキルが高いのでけっこう強いっていうイメージ。たぶんもっともっと強くなる。コツコツやってる成海と樺倉がいて、その後に全然やってない花子と尚哉がとんとんぐらいかなと。花子は友達と一緒に長くやってるからそこそこ育ってるけど、アバターがかわいいからっていう理由で始めただけなので、あまりキャラクターを育てる気がない(笑)。尚哉は友達に誘われてやりはじめて、真面目だからキャラクター自体は育ってるけどプレイヤースキルがポンコツなので全然強くない感じですね。

──それぞれの性格が表れていて面白いですね。その中だとゲーマーの宏嵩は……?

宏嵩はちょっと別次元にいる感じですね(笑)。そんなにガチでのめり込んではいないけど、その程度でも基本的なゲーム時間とプレイの効率がよすぎて、サクッと頂点にいけちゃうみたいな。ゲームうまい人って、これ系のゲームはこうやったらいいみたいな要領がわかってるところがあると思うので、短い時間で極められるのかなと思います。

──ちなみに登場キャラクターの中で一番ふじたさんに近いキャラクターというと。

いろんなキャラに私の駄目なところを分け与えている感じなんですよね(笑)。樺倉のガサツさとか花子の行き過ぎた冗談をしちゃうところとか、宏嵩のあまり周りを見てないところとかは、自分を入れたなって感じです(笑)。逆に一番遠いのは、成海か尚哉かな。

──そうなんですね。主人公なので成海に一番ふじたさんが出てるのかなと思いました。

成海はかわいいヒロインにしたかったんですよ。でも私にはかわいいがわからなくて(笑)。よく成海に対しては「サバサバしたヒロイン」って言われるんですけど、サバサバが出てるとしたら私の悪いところが出ちゃったなと思います。本当は「かわいいヒロイン」が描きたいので……。

──尚哉が遠いのはやっぱりオタクじゃない一般人だからですかね。

そうですね、もう尚哉を描くときは空を掴むつもりで描いてます(笑)。一般人というか普通の子よりさらに純粋というか、もはや天然記念物みたいになってしまって、どう扱っていいのかよくわからなくて。尚哉がいるとみんながオタクトークやめちゃうし(笑)。

──尚哉は苦労したキャラだったんですね。

でも途中からちょっとずつ人間味が出てきたなって思います。ただ光との関係についてはどう進めていけばいいのかかなり悩みました。純粋なキャラだからこそ、光を好きになって急に男の子っぽくなられても「えっ?」ってなるじゃないですか。尚哉と光のままで自然に関係値を深めていくにはどうしたらいいのかなと。光はそういうの怖がるタイプだし、負担にならない感じで適度にすれ違いつつ……でもそのすれ違いも「……長え!」って思ってしまって(笑)。描いてる人、せっかちなので(笑)。

──(笑)。

「ヲタクに恋は難しい」8巻より。

本当は8巻のデートで最後に告白して付き合わせるつもりでネームを切ってたんですけど、途中で「ないな」と思っちゃったんですよ。最初は付き合わせるぞと思って光におめかしして、お膳立てして、最後は付き合うのを想定して描いてたのに、そうならなかったんですよね。「友達でいてください」って言ったんですよね、光が勝手に。

──勝手に。

はい。私は付き合わせる気満々だったのに(笑)。もしかしたら光も、その日、玄関を出たときは付き合う気持ちでいたかもしれないんですけど、あの瞬間に出たのは「付き合ってください」じゃなくて「友達でいてください」になっちゃったんだろうな、と解釈してます。でも“尚×光(なおこう)”にはけっこう熱いファンが付いてくれてるみたいで。

──本編で恋が発展していくのはあの2人だけなので、見守ってる分愛着がわくのかもしれないですね。

一番タイトルを回収してるカップルって言われますからね(笑)。大人組は付き合ってからが大変みたいなところだし、“宏×成(ひろなる)”は「その『好き』って本当に恋人としての『好き』?」っていうのがテーマでしたし。これは完結したタイミングだからこそ言えることではあるんですけど。連載中にテーマを作者が口で言っちゃっても冷めるじゃないですか。でもやっと言えました(笑)。

──それを描くのがマンガですからね。

はい。ただ宏×成のテーマって、正直3巻のデートのくだりで宏嵩が「待つよ」って言った時点で結論は出てて。夏祭り編以降からは成海も宏嵩のことを彼氏として見られるようになってきて、自然に解決しちゃったんですよね(笑)。だから最終回では、成海がずっと抱えている「オタクを隠す」っていうトラウマをちゃんと描きたいなと。今の2人なら解決できるんじゃないかなと思って。

──なるほど。

でもけっこうセンシティブな問題じゃないですか。いきなり「じゃあオタクって隠さなくていいんだ!」って吹っ切れるのもなんか違いますし。オタクを隠さなくていいんですよ、ってことを広めようとしているマンガみたいに思われても嫌ですし。だから成海の中では、誰にでも言えるかって言ったらまだ無理だけど、少なくとも信頼してる仲間たちには言えるようになった。怖いものは怖いけど、昔ほどトラウマではなくなって、それは宏嵩や仲間がいたから払拭できたみたいなところで、落としどころはつかめたのかなって思ってます。