コミックナタリー Power Push - 廣瀬ゆい「ワンダーラビットガール」
特殊な性癖持つ美少女との官能学園サスペンス “キレイなエロ”イラストの着色術を作者が徹底解説
廣瀬ゆい&担当編集・林士平氏インタビュー
「変わった性癖」はネタになるんじゃないかって
──ここからは廣瀬先生と担当編集の林さんに作品についてお伺いできればと思います。「ワンダーラビットガール」には特殊な性癖を持った少女が多数登場しますが、どういった着想からスタートしたのでしょうか?
廣瀬 最初は「倒れた兄の復讐のために弟が学園に潜入する」っていう、いたって真面目な話にするつもりだったんです。パンチラとか女の子の着替えぐらいのサービスシーンは入れようと思っていたんですけど、打ち合わせでおかしな方向に話が進んでしまって……。
林 たしか廣瀬さんが、Twitterで出回っていた「変わった性癖」みたいなツイートを見せてきたんだよね。そこから、どういう性癖があるのか調べて。
廣瀬 そうです。「性癖ってこんなにあるんだ、これ何かに使えるんじゃないかな」くらいの軽い気持ちだったんですけど、打ち合わせ中に一気に話が広がったんです。
林 当時SQ.にエッチなマンガが欲しかったというのもあって。ただ廣瀬さん、最初はスポーツものを描きたいって言ってたよね。
廣瀬 そうですね。SQ.19に最初に読み切りが載ったあと、スポーツもののネームを描いたんですけどなかなか通らなくて。それで全然ジャンルの違う「不・純情異性援助交際」という援助交際ものを描いたら、それがSQ.19に掲載されたんです。
林 ヒロインが援交をしてると疑われているけど、実際はそんなことはなくて……っていう話だよね。見開きでキスシーンがあったんですけど、そのシーンがやたらとエロくて。そういう描写は「ワンダーラビットガール」にも繋がっているのかも。ただ「ワンダーラビットガール」の主人公って、最初の時点ではここまで変態じゃなかったような。
廣瀬 1度目のネームを林さんに提出したときは、エロシーンはあるけど話自体は真面目なマンガだったんです。ただ、自分で読み返したらあんまり楽しくないなと思って、主人公の澪に地下アイドルオタクという設定を付け加えたら、だんだんコメディ色が強くなってきたという感じで……。
──どうしてアイドルオタクという設定を足したんでしょう?
廣瀬 とりあえず主人公に何か特徴を付けたくて。それで、自分が描く上で知ったかぶりにならない設定と言ったらドルオタかな、と思い。私も女性アイドルが好きなので!
林 アイドルにハマって女性キャラの描き方が変わるとかってあるの?
廣瀬 アイドルにハマってってことではないですけど、昔はもっと目をシャープに描いていたのを、いまは少し丸みを持たせてより女の子っぽくなるように気を付けてます。自分の絵柄は流行りの萌え絵ではないな……と思っているので、男の人が見たときかわいいと思ってもらえる絵になっているのかという不安が、常にあります。なので、より女の子らしく描こうとは思っています。
男性向け同人誌やエロマンガばかり読んでいる
──「ワンダーラビットガール」はメインで登場する女の子が、1話ごとに交代する構成になっていますね。やはり描きにくいキャラもいましたか。
廣瀬 ビジュアル的な面でいうと、2巻の終盤で出てくる柊さんです。単純に三つ編みを描くのが大変でした。内面的な部分は、各キャラの話を描き終わるころにようやく理解できるって感じで、描き慣れてきた頃にはもう新しいキャラの話になっちゃうという……(笑)。
林 こういう1話完結のオムニバス構成だと、次々にキャラを作っていかなきゃいけないからね。第1話でメインを張った彩花ちゃんは読者の反応がよかった。
廣瀬 いただいたファンレターの中でも、気に入ったヒロインを熱狂的に愛してくれている方もいてうれしいなと思いました!
林 ありがたい話だよ。そういう読者に恋をさせられるっていうのは大事だよね。
廣瀬 そうですね。ただ基本的に私が男性向けアニメに詳しくないので、「かわいいとはなんなのか」を常に悩んでます。
林 でも最近、エロマンガにすごく詳しくなってるじゃん。
廣瀬 あの……、この作品を始めてから男性向けの同人誌とかエロマンガばかり買って勉強してます(笑)。成年系のマンガってエロシーンで、普段より脚がムチッと太くなったり、パースとかも「合っていないんだけどエロい」みたいなシーンがあったりしてそういう研究は常にしてますが難しいです……。
──巻数を重ねるごとに少しずつ描写が過激になってきていますが、研究の成果が出ていると(笑)。
廣瀬 はい。1巻のあとがきに「何がよしあしなのか、どこが境界線なのかまだあらゆる事が手探り状態です」と書いたんですが、この「よしあし」は読者がどういうシチュエーションに萌えるのか、「境界線」は表現的にどこまで肌を出していいのかという意味で言ったんですね。ただ最近はマズかったら林さんが止めてくれるとわかったので、気にせず描いています。
主人公はあくまでゲームのプレイヤー
──先ほど絵柄の話も出ましたが、確かに「ワンダーラビットガール」を初めて読んだとき、少女マンガっぽい絵柄だなという印象を受けました。影響を受けたのもどちらかというと少女マンガなのでしょうか?
廣瀬 たぶんそうです。別冊マーガレットがすごく好きで。最近だと「アオハライド」「ハニー」とか。でも絵柄で影響を受けたのはどちらかというと、Rejetやオトメイトから出ている乙女ゲームだと思います。
──そこからSQ.で連載を始めたのにはどういった経緯が。
廣瀬 少女マンガばかり読むけど自分が描き手になりたいわけではなく……。コミティアで出張編集部に持ち込んだのが最初だったんですけど、そのときにSQ.ってなんでも載ってるなと思って。少女マンガっぽい感じの作品や王道な少年マンガっぽいものももちろんあって。あと絵が全体的にキレイというイメージが強くて、私自身そういう絵柄が好きだったのでSQ.に持ち込みました。
林 まあなんでもアリっていうのが、ウリのひとつですからね。かと言ってあんまりエロくなりすぎると怒られるけど(笑)。
──あはは(笑)。3巻では読者プレゼントで「ワンダーラビットガール」の“薄い本”がが当たるとお伺いしたんですけど。
廣瀬 はい。一応構想はまとまっていて、読者の視点で物語が進行して、ヒロインがエロいことをするっていう内容にするつもりです。完全に18禁の内容にするのはダメと林さんにストップをかけられているんですけど(笑)。
林 連載が終わったあとならいいんじゃないか思うんですけどね……。途中でエロ成分を強めすぎてしまうと、インフレを起こして戻ってこれなくなっちゃうから。
──読者の視点ということは、主人公は出てこないんですね。
廣瀬 そうです。言ってしまえばこの作品では、主人公はゲームのプレイヤーなんです。あくまで目立たせるのはヒロインたちなので、この娘たちがどうなっていくか楽しみにしてほしいです。
──ありがとうございました。では最後に、読者へメッセージをお願いします。
廣瀬 エロ系のマンガって、パッと開いて「あ、ただのエロマンガか」ってそのまま閉じてしまうことも多いと思うんです。私も以前はそうだったんですが、「ワンダーラビットガール」はそれ以外の部分も楽しんでもらいたいと思って、「例のプール」みたいな小ネタを入れてみたり、キャラクターにちょっと変なことを言わせてみたりと、いろいろ盛り込んでいるのでそういう部分を見つけて楽しんでもらえたらうれしいな……と、思います!
「ワンダーラビットガール」3巻記念 コミックスよりちょっぴり過激な(!?)廣瀬ゆい完全描き下ろしの“薄い本”を108名にプレゼント!
- 応募期間
- 2016年5月6日(金)当日消印有効
応募には3巻の帯に付属する応募券が必要。帯に記載された応募要項をよく読み、ハガキに住所、氏名、年齢などの必要事項を明記して投函しよう。
クイーンビーと呼ばれる学園で最上位の女性・百合ヶ丘ねねの指示で澪にハニートラップを仕掛ける柊。彼女は澪に抱いてほしいと迫るのだが、それは彼女が蓮を好きだからという演技抜きの行動だった。そんな彼女の本心を知ったねねは澪にある要求を突き付けてくる──!!
廣瀬ゆい(ヒロセユイ)
ジャンプSQ.19(集英社)にて2013年に「最弱なボクと最強な彼女」、2014年に「不・純情異性援助交際」をそれぞれ読み切りとして発表。2015年にジャンプスクエア(集英社)にて「ワンダーラビットガール」で連載デビューを果たす。