コミックナタリー PowerPush - 築島治「私たちには壁がある。」
デイリーポータルZが「新しい壁ドン」を提案!受けて立つ少女マンガ家の妄想力と創作意欲
空気感より肉体的な接触を描くタイプ
──撮影のときは、いろいろと壁ドンのポーズもリクエストされてましたね。
いつも壁ドンのポーズカタログ集を見たりしているだけなので、こういう機会は貴重なんですよ。自分ではぜったいに撮影できない俯瞰のアングルも撮れたりして、助かりました。足ドンも藤原さん(デイリーポータルZ編集部)にやっていただけたし。いやー、足ドン、生で初めて見ました。
──蹴りで壁ドンする「足ドン」ですね。あれはドラマでもなかなか見ないです。
実際にカッコよくキメられる人間はなかなかいないんだなと思いました。足が長くないと映えないし、体が不安定になりますよね。あ、あと手ではなくてひじでドンする「ひじドン」はやっぱりいいなーと思いました! 関節ひとつ分、距離が近くなりますから。「私たちには壁がある。」でたくさん壁ドンシーンを描いてきましたけど、いまのところ一番のお気に入りは、第1話のひじドンです。
──そもそも、作品に壁ドンを取り入れていこうとしたのはなぜなんでしょうか。
前作の「泣かんもん!」を連載しているあたりから徐々に流行の兆しは感じていたんですけど、そんなタイミングで担当さんが「築島さんの作風には壁ドンがハマる!」と言ってくださって、そうなのかー、と。
──ちょっと素直すぎませんか(笑)。
私自身、空気感で関係性やストーリーを語るというよりは、肉体的に何かが起きたり接触したりしているシーンを描くほうが、描いてて楽しいし得意なタイプだと思っていたんです。だから毎回さまざまな壁ドンが発生するって縛りは自分に合ってると思ったし、実際のところあれこれ考えてキャラにやってもらうのは楽しいです。でも1話につき最低1回は壁ドンってノルマを課してもう10話目ですので、正直そろそろ枯渇気味で……。なので今日みたいなアイデア大会は、ほんとにありがたくて。
床ドンは使いどころを慎重に
──前に壁ドンのポーズを募集なさったりもしていましたよね。参考になるものはありましたか?
ありました、ありました。やっぱりナマの声は違うなと思いましたよ。単純なマニュアル的なものとはまた違うんです。ポーズ集にはただ「床ドン」とだけ書かれているものでも、例えば女の子はこういう設定で、こういう状況で、って詳しく書いてくれてるんですよ。それを読むと想像力がものすごく掻き立てられて、「この床ドンはいつか描こう」と思いました。
──床ドンというのは、壁じゃなくて床に追い詰めているという状況ですね。いつか作品にも出てくるんでしょうか。
床ドンは壁ドンよりもインパクトが強いから、もうちょっと先かな? でも描きますよ。
──要するに、押し倒してるってことですもんね。
そうなんです。だから使いどころを間違えると、ちょっとエグくなっちゃうかなと。まだ「私たちには壁がある。」で主人公の真琴は、怜太の恋心を避けているので、もうちょっと距離が縮まってからかなって思ってます。
最初から距離が近くないと壁ドンできない
──「毎話壁ドン」というテーマが決まっていたとして、ストーリーを幼なじみものにしたのはどういう理由からなんでしょうか。
第1話から壁ドンするには、最初からそうできるくらいには距離が詰まっていないと難しいと思ったんです。出会って間もなしに壁ドンは、ちょっと無理があるかなと。
──なるほど。それで幼なじみ。
ええ。あと、銀色夏生さんの小説に「ミタカくんと私」というのがあって、私ほんと大好きなんですけど、それが幼なじみの話で着想のきっかけになりました。お互いに相手を大事に思ってるんだけど、だからこそそういう関係にはならない。その距離感がすごく絶妙で、とてもよかったんですよ。お話自体がものすごく淡々としているので、結局2人はくっつかないし、そんな予感もなく終わるんですけど。
──真琴と怜太の関係に似ていますね。
そこからもう一歩発展させたつもりです。幼なじみの男の子がいる女の子って、たぶん好きとかそういうものを超越した気持ちを男の子に持っているんだと思うんです。そういう幼なじみの感じがすごく好きなんですよね。幼なじみならではの関係性を描きつつ、ちゃんとイチャイチャさせたり壁ドンしていければいいな、と(笑)。今日、新しい壁ドンのアイデアをたくさんもらえたので、私も林さん(デイリーポータルZ編集長。新しい壁ドンアイデアの発案者)を見習って、読者の方が驚いてくださるような壁ドンのシチュエーションをこれからも繰り出していきたいですね。
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※2巻は人気声優・宮野真守(菊池怜太役)と中村悠一(安孫子祐介役)の「壁ドンボイス」が手に入る特典付き!!
「そんなに彼氏欲しいならさ 俺が付き合ってやってもいいけど?」
菊池怜太と桜井真琴は、家が隣で親どうしが仲が良い、いわゆる「幼なじみ」。女の子にはモテるけどナルシストで俺様な怜太が、ある日突然真琴の「彼氏」になって……!? 俺様幼なじみと山あり谷あり壁あり、ときめき青春ラブコメ!
築島治(ツキシマハル)
デザート2006年1月号増刊のデザートスペシャル1100冬号(講談社)に掲載された「面食いでいこう!」にてデビュー。その後「鬼カレ」「好き・嫌い・好き」「泣かんもん!」などを執筆し、デザート2014年2月号より「私たちには壁がある。」を連載中。