固すぎず、やわらかすぎない「ほどよいだし巻き」

──「府中焼き」のほか、ドラマで気になった料理はありましたか？

ドラマを見たあとは、基本的に全部食べたくなっちゃうんですが（笑）。どれもこれも本当に美味しそうだったけど、一番印象的だったのは「だし巻き卵」ですかね。もともと好物ということもあり、ドラマを見た次の日に思わず自分で作ってしまいました。

──ドラマでは実際の料理を映せますが「だし巻き卵」のようにシンプルなものは、マンガで美味しそうに見せるのはなかなか難しそうですね。

注意したいのは、やわらかいのか固いのかという食感ですかね。固めの「だし巻き」と、やわらかすぎる「だし巻き」、その中間にある「ほどよいだし巻き」ではぜんぜん違うので。あと忘れちゃいけないのが……焦げ目！

──全料理に共通するテクニックなどはありますか？ なんでも美味しそうに見える裏ワザみたいな。

食べ物を美味しそうに見せる一番のポイントは“テカり”です。絵にホワイトを入れて油の美味しそうな感じを表現するんですが、自分でも描いていて一番楽しい作業かもしれません（笑）。あとは湯気もマンガっぽくモクモクさせるのじゃなく、なるべく自然に空気の中にあるような感じで描いたりしています。

──食べ物だけでなく、その周りにある効果や演出も大事なスパイスなんですね。

サイン会を開催したときに、小学生くらいの子供さんが来て「湯気がすごい美味しそうですね」って言ってくれたんです。よく見ているというか、観点がアーティスティックだなと（笑）。気を使って描いてるポイントなので、わかってもらえたのがうれしかったです。

なにを飲むか迷ったら、とりあえず焼酎

──マンガに登場させる料理は、どのように決めているのでしょうか？

みんなが想像しやすい「普遍的な食べ物」というのをテーマにしています。最初の打ち合わせで例にあがったのが「深夜食堂」で。あの作品に登場するのは、ウインナーとか玉子焼きとか、誰でも食べたことのあるものばかりですよね。どこのお店でもあるようなものだからこそ共感できるし、食べたいって気持ちが沸くんじゃないかと。

──食べ物に合わせるお酒のチョイスは、ご自分の経験から？

すごくこだわりがある人じゃなくても、揚げ物にはビール、刺身には日本酒かな、くらいは思いますよね。それぐらいの、感覚的なものなので結構適当です（笑）。よく「お酒の組み合わせ、すごく勉強になります」って言われ、すごくうれしいんですが、お酒って自由なものなので。好きなお酒を、好きな組み合わせで楽しむのが一番だと思います。

──マンガで「目玉焼き」が出てきたとき、ワカコはなにを飲むか迷っていましたね。

目玉焼きでお酒を飲むことって、なかなかないですからね。普段自分がやらないことに挑戦するっていうのは面白いですね。最終的には焼酎を選んだわけですが、これは困ったときの定番。食べ物になにを合わせるか迷ったら、とりあえず焼酎です（笑）。