コミックナタリー Power Push - わぁい!

オトコの娘マガジン・わぁい!発の単行本誕生 性癖を本にし続ける編集長を再インタビュー

第1弾はわぁい!を象徴する2作品

──記念すべきわぁい!レーベルの単行本第1弾は、「さざなみチェリー」と「リバーシブル!」ですね。どちらも装丁がかわいらしいです。

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やはりテーマがテーマなので、書店でレジに持って行きづらいといけないと思い、なるべく買いやすいデザインにしました。男性はもちろんですが、女性も手に取りやすいと思います。

──この2タイトルを第1弾に選んだのは、何か理由があるんでしょうか。

この2作品って、わぁい!の作品の中でも特徴的な2作なんです。両方とも女装少年のエロさとかそういったものだけではなく、もちろんそういうものも大事だけど、その上で女装をしていく中で変わらなくてはいけないものとか、変わっていくもの、主人公や周りの人々の心変わりっていうものがとても如実に出ている。もちろんほかの作品もそれぞれに魅力があるんですが、この2作品はそういう意味で特徴的なんですよね。

──わぁい!の思想的根幹となる2作ということですね。

「さざなみチェリー」は、主人公の女装少年が告白されて、単純に2人がくっついて終わりではなくて、その女装少年にどういう心の動きがあるのか、オトコの娘モノならではの心理描写がある。一方で「リバーシブル!」は、主人公は最初は女装するのを嫌がっているんですけど、まわりのキャラクターも含めて、だんだんと女装や過去のことに対して心が変化していくんです。だから女装をする/させられるというシチュエーションがすごく前向きに活きているんですね。ただ単純に「実はオトコの娘です」だけだと興奮しなかったし、印象に残らなかったと思うんです。多分私が中学生くらいの頃に読んだ作品もそういうところが印象的だったんだと思うんですよね。

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──土方さんが昔に読んだ女装マンガで印象に残っているのはどんな作品なんですか?

中学生くらいの頃よりはもうちょっと最近ですけど、今でも読んだときの衝撃を覚えているのは、やぶうち優先生の「少女少年」です。エロでもなんでもないんですけど、ものすごく女装のシチュエーションがうまく活きていて。小学五年生(小学館)など学年誌での連載だったので、もちろん一切エロはないんですけど、なぜかちょっとエッチな感じがして、そこはかとなく女装の魅力が出ているというのは、なかなかないですよね。わぁい!でも、そういう「想像させる」作品を作っていきたいですね。

自分が好きで、世の中にない本を作る

──今年は土方さんの手がけた「30歳の保健体育」もアニメ化されましたし、今後、わぁい!からもアニメ化作品が出るといいですね。

今後は何かしらそういう作品も出てきたらいいなと思います。

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──土方さんはわぁい!や「30歳の保健体育」以外にも、最近は「袴っ娘だいすき!」「スク水だいすき!」といった「だいすき!」シリーズや、「拘束少女絵巻」「責められ少女絵巻」などの「絵巻」シリーズも手がけられていますよね。このあたりは、すべてマーケットを考えて企画出しを? それとも土方さんの趣味で……。

そうですね。自分が好きだからということに尽きます。5、6年くらい前から、基本的にマーケットを考えて本を作るのはやめましたね。

──やめたんですか! それはなぜでしょう。

やめたというか、「これが流行ってるからこういう本を出せばいい」というのは、頭がいい人が考えて大仕掛けを作って、初めてできることだと思うんです。私にはそんな才能もないし、それはできないと思ったので。だったら会社を使って好きなことをやってやろう! と割り切って作った1冊目が「オンナノコになりたい!」だったんです。

インタビュー風景

──「オンナノコになりたい!」はヒットしましたね。

もちろん市場のことを全く考えないで作ってしまうと同人誌になってしまうんですが。でも基本的には好きなことをやって、それが読者の方々に認めてもらえたら面白いな、という気持ちでやっています。だから、仮にもう袴の本が出ていたら「袴っ娘だいすき!」は作らなくてよかったんですよ。

──世の中に出てないので作った、という感じなんですね。

そうです。出たら少なくとも私が買いますので。わぁい!でも「だいすき!」シリーズでも。今まで全部そうなんですが、発売日に書店に並んだら、全部自分でお金を出して買っています。もちろん領収書を切らないで自腹で。そこで950円とか1500円とか払って家に帰って読んでみて、損をしたなと思ったらたぶんその本は失敗なんですよ。でも今のところそういう本は1冊もないです。自分が欲しくて作っているから当たり前かもしれませんが。

すえみつぢっか「リバーシブル!」(1) / 2011年10月20日発売 / 900円(税込) / 一迅社 / ISBN: 978-4758012423

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あらすじ

生徒の半数が交代で「女装」する規則を持つ全寮制男子校・聖ストケシア学園。 そこへ転校させられた少年・海棠愁は、学園で女装コーディネートを担当する女装少年・ツバキに出会う。慣れないことに戸惑う愁だったが、ツバキの手ほどきを受け、少しずつ女装のことを覚えていく。

神吉「さざなみチェリー」 / 2011年10月20日発売 / 900円(税込) / 一迅社 / ISBN: 978-4758012430

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あらすじ

通学電車でいつもいっしょになる美少女に恋をした少年・汀一弘。彼は意を決して、その娘に告白することに。彼女・高野漣に真摯な思いが通じ、舞い上がる一弘であったが、それに漣はこう付け足した。「ボク男なんだけど、それでもいーい?」

ゑむ「ひみつの悪魔ちゃん」(1) / ドラマCD付き限定版 / 2011年12月20日発売 / 予価1800円(税込) / 一迅社 / ISBN: 978-4758012478

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あらすじ

女っ気がない主人公・総が、脱童貞のために呼び出した悪魔っ娘。喜び勇んだ総だったが、その悪魔っ娘は実はオトコの娘だった!? それ以来、総になつく悪魔っ娘・小紅が巻き起こすハイテンションドタバタギャグコメディ!