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木野咲カズラインタビュー

ルームシェアで経験したあのわちゃわちゃ感を出したい

──「星屑ネバーランドガーデン」では、人見知りな少女・音瀬川弓月が寮の仲間たちとともに生活を送ることで成長していく姿が描かれています。物語のアイデアは、どのように生まれたのでしょうか。

永遠寮の住人たちが、新しい寮生を歓迎。しかし人見知りの弓月は挙動不審になってしまう。

私が友達と3人でルームシェアをしていたことがあって、そのときの楽しい雰囲気を描きたいと考えたところからスタートしました。共同生活といっても、初期のアイデアでは舞台はアパートで、ルームメイトの赤星十日は宇宙人という設定のSFだったんです。ちょっとひねくれた性格のキャラクターと、自由な宇宙人のお話になる予定でした。

──今と全然違う方向性ですね。どうして変更になったんですか?

担当編集さんと打ち合わせをしているうちに、SF要素ってもしかして必要ないんじゃない?と気づいて。キャラクターの関係性や成長を描きたいと思ったときに、宇宙人設定が邪魔になったのでやめて、もっとシンプルに住人に寄せた物語にしようと。必然性なく宇宙人っていう設定を入れていたのは、完全に私の趣味(笑)。不思議っ子が好きなので。

赤星十日の初登場シーン。突然に窓からお風呂に侵入と、宇宙人キャラでなくとも天真爛漫な行動が炸裂する。

──舞台も、元はアパートという設定だったんですね。

建築物が好きで、よく写真集やネットでも画像を見たり、風情あるアパートを見ると妄想が膨らんでお話を描きたいと思ったりするんです。だから舞台になる建物にはこだわりたくて、永遠寮は京都にある銀月アパートメントを参考にしています。

京都の銀月アパートメントをモデルにしたという永遠寮。

──映画の撮影などにも使われている、知る人ぞ知るレトロ物件ですね! 学生寮といえば、同じく京都にある吉田寮も歴史が古く趣きがありますよね。こちらは外見もレトロというかスラム感すらありますが。

吉田寮もいいですね! もしキャラクターが男子だったら吉田寮になっていたかも(笑)。

──木野咲さん自身のルームシェア体験が根底にあるとのことですが、共同生活って吉と出るか凶と出るか、かなりハッキリと分かれますよね。

私の場合は特に何の問題もなく生活できました。みんなで「ルパン」のアニメを見ながら落描きをしたり、ゲームをしたり、お互いの誕生日を祝い合ったり、原稿を手伝ってもらったり……。一緒に遊びに出かけて同じ家に帰ってきてっていう、ずっと一緒にいる感じが楽しかったですね。都合により私はその家を出てしまいましたが、今でも私以外のルームメイトたちは一緒に生活を続けていて。あのときのわちゃわちゃした雰囲気を作品でも出せたらいいなと思って描いてます。

──木野咲さんは今作が初連載となるわけですが、連載が決定したときのお気持ちを率直にいうと、どうでした?

えっ……「困った!」かな。

──「困った」ですか(笑)。喜びよりも不安が先行した?

もちろんうれしい気持ちはあるにはありましたが、不安が大きくて……。読み切りのストーリーは考えたことはあっても、連載として考えたことがなかったので何もかも未知で、今も必死です(笑)。全力で描いているのですが、掲載されたものを見ると絵の未熟な部分ばかり目についてしまって。物語を考えるのは好きなんですけど。

──絵を描くことよりもお話に力を入れている?

そうですね。ちょっとだけ小説家になりたいと思っていた時期もあるんですが、あまりに国語力がないので諦めました。一方で絵はずっと描き続けていたので、どこか「やっぱりマンガ家」という思いもありましたね。

「ぼく地球」「カレカノ」から学んだ、キャラを大切に描く気持ち

学校ではみんなの憧れのお姉様キャラを演じているセルマ。永遠寮に住んでいることは隠している。料理上手で寮のお母さん的存在になっているたまき。バレー部の部長を務めており、部活では寮とは違う一面を見せる。

──永遠寮に住む女の子たちは、どの子も個性豊かで非常に魅力的です。主人公の弓月はもちろん、ほかのキャラクターも丁寧に背景や葛藤が描かれているのが印象的でした。木野咲さんはきちんと全員のことをかわいがっているんだなあと。

私の原点にあるマンガが「彼氏彼女の事情」と「ぼくの地球を守って」で。この2作品は登場人物が多いのに、どのキャラクターもすごく大切に描かれていて、そういうお話っていいなという気持ちが昔からあったんです。

──「星屑ネバーランドガーデン」には、両方の作品のエッセンスが感じられますね。初期案の十日が宇宙人というSFノリは「ぼく地球」を、学生が主役の群像劇という部分は「カレカノ」を思わせます。

ホントだ(笑)。群像劇を強く意識しているわけではないんですが、どのキャラクターも「カレカノ」みたいにイキイキと描きたいですね。

──弓月は大人しくて人見知りですが、十日をはじめとしたほかのキャラクターが明るく元気だからいいバランスになっていますね。

主人公の弓月は成長をしていくキャラなので、気を遣って描いています。唐突に思い出したんですけど、私、高校は進学校だったんですが、実は勉強に全くついていけずに何もかも楽しくなくなって……、かなりの根暗だったんですよ。毎日気分が沈んでて、なんで生きてるんだろうってくらいに(涙)。

──ええっ。

漫研部長のなぎさ。作画資料と称して弓月らにコスプレ衣装を着せてスケッチをする。音楽科に通う歌凛。漫研部長のなぎさとは幼なじみ。

ところが専門学校にいったらみんな楽しそうで、世界が全然違って。いつも一緒にいる友達も次第に増えていったんですけど、最初の頃は「ちょっとモノマネしてみて」とかって言われても面白い返しも何もできなくて、「ああやっぱり私はクズだなあ」って落ち込んで……。

──いや、そんなの誰だって難しいですよ!

そういうふうに客観視ができないくらい、あの頃は本当にネガティブでした……(笑)。でも何年も関係が続くと、そういう気持ちが完全に消えて今は心から安心して付き合えるんです。共同生活や女の子たちの成長をテーマにしたいなと思ったのは、私自身が友達と寝食をともにして変化した経験があったからですし、物語にも多少は反映されているのかもしれません。

木野咲カズラ「星屑ネバーランドガーデン(1)」 / 2015年12月19日 / 648円 / KADOKAWA
木野咲カズラ「星屑ネバーランドガーデン(1)」

寮で共同生活をおくる女子高生たちのドキドキハイスクールライフ♪
父親の勘違いから、廃寮の危機にあった「永遠寮」に入り、高校に通うことになった弓月。特殊な環境から人見知りで引っ込み思案になった彼女は、ルームメイトで好奇心旺盛な元気っ娘・十日をはじめ個性豊かな住人達と触れ合いながら少しずつ心を開いていき──。

菅野マナミ「菅野マナミ短編集 良い子さんと不良先生」 / 2015年12月19日 / 648円 / KADOKAWA
菅野マナミ「菅野マナミ短編集 良い子さんと不良先生」

「ひまわりさん」で人気の菅野マナミが贈るみずみずしい青春物語の数々☆彡
表題作「良い子さんと不良先生」を始め、「きつねとゆりこ」「彼女のひみつ」、TVアニメ「さくら荘のペットな彼女」の劇中内で使用した「なのはな荘」(椎名ましろ作)など、みずみずしい青春物語の数々を収録した菅野マナミ珠玉の短編集。

ポルリン「カフェちゃんとブレークタイム(1)」 / 2015年12月29日 / 994円 / KADOKAWA
ポルリン「カフェちゃんとブレークタイム(1)」

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木野咲カズラ(キノサキカズラ)
木野咲カズラ

新人マンガ家。デジタル媒体@vitamin(アット ビタミン)にて、初めての連載作品「星屑ネバーランドガーデン」を執筆中。