TSUYOSHI vs KONISHI !? 最強コンビニ店員を描いた人気作、新たなステージへ!著者・丸山恭右と声優・小西克幸が対談 (2/3)

「TSUYOSHI」は照と愛之助とツヨシの三角関係の話

──ツヨシの周囲のキャラクターについてもお話を伺っていきたいんですが、小西さんは先ほどの撮影のときに、「照が主人公だと思ってるんです」っておっしゃっていましたよね。

小西 照が主人公です。裏主人公と言ったほうが適切かな。「TSUYOSHI」は照と愛之助とツヨシの三角関係の話なんで(笑)。読んだことがない人は、たぶん「どういうこと?」「格闘マンガじゃないの?」ってなると思うんですけど(笑)。

丸山 作る側としても、実はそこを裏テーマとして作っていた部分があったんです。「世直し編」が始まる前に、照と愛之助が2人で戦うシーンがあるんですよ。そこから「どちらがツヨシとの本当の友情を手にできるのか」っていう裏テーマがずっと動いてて。まさかそれを、ここまで読解してもらえてるなんて(笑)。

第157話より。ツヨシをめぐる言い争いから、2人は拳を交えることになる。

第157話より。ツヨシをめぐる言い争いから、2人は拳を交えることになる。

小西 あんまり普通の人がいない中、照だけ普通の人なんですよね。怖いものは怖いってなるし、立ち向かおうとしないし。普通、逃げるじゃないですか。彼は無理やり巻き込まれて行っちゃうところがあるっていうだけで、たぶんすごい普通の人なんですよね。もちろん、もともと才能はあったと思いますけど。そんな照だから、ツヨシのことも一番理解できてるんじゃないかなって。だから僕は照派ですね。ハゲたときはかわいそうで仕方なかったです(笑)。

丸山 僕は割と愛之助が好きです。愛之助ってちょっと抜けてるじゃないですか。あの空気感を描くのが好きなんですよ。照と2人でしゃべっているときになぜかにじみ出る性格のズレ。

小西 お坊ちゃんって感じですよね(笑)。

丸山 そう、お坊ちゃまで絶妙に察することができないっていう(笑)。あの独特な空気感が描いていて楽しいんですよね。

小西 愛之助だと、八角との戦いが好きです。毒を食らってしまって、あと10秒で動けなくなるというところから、「10秒あれば十分だ」って宣言して逆転する。しかも殴るのかと思ったら、頭突きで倒し切ったんですよね。あれがすごくカッコよかった(笑)。

丸山 そんなニッチなところを拾っていただけるのはめちゃくちゃうれしいです(笑)。

──僕はこの初期キャラ2人が、こんなに成長するとは正直思っていなくて……。

小西 それもありますよね。古武術の達人たちの中にこの2人が入っていって、ちゃんと戦えるのか? そう思わせておいて、ちゃんと勝ってしまう。初期からいるキャラクターが成長して強くなるのはアツいですよね。

小西克幸

小西克幸

──マンガ好き的には熱くなれる展開ですよね。

小西 特に今回、この「世直し編」のバトルで2人ともまた一気に成長したんじゃないかなと思ってます。これまで自分が戦ったバトルはもちろん、見てきたバトルも含めて、戦いの中で得たものを全部自分の経験値に変えていて、その結果が全部つながった。そういうバトルだったのかなって感じられて、そこもすごい熱いポイントですね。ツヨシのお母さんがこの2人は素質があるって言ってたから、たぶんもっと強くなると思います(笑)。

小西克幸が結婚するならこのヒロイン

──「世直し編」から登場したツヨシのお母さん。本作にとってもダークホース的な存在となりました。彼女を出すにあたって、Zooさんとはどんなことを話されましたか?

丸山 物語って常にインフレさせ続けないといけない鉄則がある。じゃあどうやって物語を広げるかっていうと、ツヨシと同等か、それ以上の強い敵を出さないといけないんですけど、それが親族でしか無理だったんですよね(笑)。

──ツヨシを超えられるのはお母さんしかいないと。

丸山 お父さんは子供の頃に金的で倒しちゃったところを描いていたので(笑)。いかに母のキャラを立てていくかっていうところはめちゃくちゃ考えましたね。いわゆる“毒親”のイメージなんですが、毒親だと子は鬱屈とするじゃないですか。ほんとうにツヨシみたいなキャラクターになるんだろうなってところから考えて、客観的に見てすごく“嫌な感じ”のお母さんを、がんばって演出しようとしています。

小西 お母さんのデザインいいですよね。なるほど、ツヨシはお母さん似だったんだなって(笑)。

──ちゃんと戦って強い女性が出てきたのは、実は初めてなんじゃないかって思って。陳さんとかナターシャとか、いろんなヒロインがいますけど……。

小西 この作品のヒロインは長谷川さんですよ?

第66話より。小西イチオシの長谷川美波は、内閣調査室所属の秘書官。主に日本チームの闘士らを献身的にサポートする。褒め上手で、料理なども得意。
第66話より。小西イチオシの長谷川美波は、内閣調査室所属の秘書官。主に日本チームの闘士らを献身的にサポートする。褒め上手で、料理なども得意。

第66話より。小西イチオシの長谷川美波は、内閣調査室所属の秘書官。主に日本チームの闘士らを献身的にサポートする。褒め上手で、料理なども得意。

丸山 またニッチなところを拾っていただいて(笑)。

小西 長谷川さんがいないと何もできないですから。結婚するなら長谷川さんですよね。もう怖くて、この2人(陳とナターシャ)は。

──この2人が一緒にいると、悪巧みをしているようにしか見えませんからね(笑)。そんな彼女たちが第201話で口にしていた「世界革命」が、どうやら新章のキーワードになってきそうです。第263話では、陳とナターシャがいる集会に、紗代子様も合流して……。

小西 そう、あれどうなるんだろうって思って。めちゃくちゃ引きのところで終わっているので、先が気になってます。女の人がいっぱいいましたよね? しかも世界各国の。

丸山 Zooさんから受け取ったシナリオに「世界各国の陳さんとナターシャポジションの子たちがいっぱい」みたいにあって、「うわっ、マジか……」って思いながら(笑)、いっぱい描きました。

第263話より。

第263話より。

先の展開はあえて聞かない

──新章についてはまだ話せないことが多いですか?

丸山 話せないというか、先の展開を教えてもらっていないので、まだ知らないことがたくさんありますね。ストーリーありきで作ってしまうと、キャラクターがストーリーに動かされている感じになって、つまらなくなってしまうんですよ。だから「TSUYOSHI」は、キャラクター同士を立てて、かけ合わせていって、その結果ストーリーができていくという形を意識して作っています。そのライブ感が面白さにつながっていくのかなって。

──それは例えば、バトルの勝敗でもそうなのでしょうか?

丸山 そうですね。描き始めたときは、どっちが勝つか僕にもまったくわからない。だからどちらの技も本気で描く。僕自身、「どういうふうに転んでいくんだろう」って、楽しみながら描いている感じがありますね。

小西 お芝居でも、先のストーリーをわかっていると逆算してそこにたどり着くようなお芝居をしちゃうことがあるので、あえて先の展開を教えないっていうことはありますね。ほかの人はシナリオをもらっていても、メインの人だけはシナリオをもらっていないとか、先の展開を教えてもらっていないとか。

丸山 小西さんがおっしゃるのと似たようなことが実際あって、照とツヨシが戦うエピソードを描くときに、「コンセプト上、最終的には絶対ツヨシが勝つよね」っていうイメージでネームを描いちゃったんですよ。そしたらZooさんから「これはダメ」と全ボツをもらいまして……。照がツヨシに勝ったときの喜びをしっかり描いて、読者にも「本当に照が勝ったの?」と思わせる感じでやり直してほしいと。まさにストーリーを最初に知ってしまっていたから、演出が変わってしまった例かなと思います。

第230話より、相まみえるツヨシと照。

第230話より、相まみえるツヨシと照。

小西 難しいですよね。僕らはできあがっているものに声を吹き込んでいくお仕事なので、マンガの作画とはちょっと違うと思うんですけど、ゼロから絵を描いてどう見せるのか、演出をしていくのかって、相当計算しないと大変なんじゃないかなって思いますね。

丸山 でも作画と声優のお仕事は、もしかしたらけっこう似てるのかもなって思います。あるものをどう表現するかっていう意味では、同じポジションなのかなって。

──「TSUYOSHI」はキレてるときの表情の描写がすごいと思っていて。丸山さんも描くときに力が入るところだと思うんですけど、やっぱり気持ちを乗せて描かれているんですか。

丸山 まったく同じ顔しながら描いていると思います(笑)。

小西 えっ。目が真っ黒のところとかも。

丸山 もうブチギレながら描いていますね。あんまり人には見せられないですね(笑)。

──声優さんも、こういう声のシーンを録るときってやっぱりこういう顔をしますか?

小西克幸

小西克幸

小西 自分で見ていないからわからないですけど(笑)、たぶん普通のお芝居と一緒なので、怒る場面では怒った顔をしているでしょうし、泣いているときは泣いている顔をしていると思います。絵がちゃんとある場合は、その絵を見ながらやっているので、その表情に引っ張られて同じ表情になっていることもあると思います。

──そういう出力部分の気持ちの乗せ方などは、共通点があるのかもしれないですね。