TSUYOSHI vs KONISHI !? 最強コンビニ店員を描いた人気作、新たなステージへ!著者・丸山恭右と声優・小西克幸が対談

サイコミで連載中のマンガ「TSUYOSHI 誰も勝てない、アイツには」(以下、「TSUYOSHI」)。冴えないコンビニ店員・川端強が常人離れした強さを持っており、普通に生きたいという彼自身の思いとは裏腹に世界各国から注目され、大きな戦いの渦に巻き込まれてしまうという物語だ。累計部数は300万部超。そんなサイコミきってのヒット作が、100話以上にわたるエピソード「世直し編」を終え、1つの区切りを迎えた。

コミックナタリーでは作品にとって大きな節目となるこのタイミングで、「TSUYOSHI」の作画を担当する丸山恭右と、以前から「TSUYOSHI」を愛読しているというマンガ好き声優・小西克幸の対談をセッティング。著者・読者双方の視点から、ここまでのエピソードを振り返っての話を聞いた。「TSUYOSHI」愛溢れる小西のトークに、「ここまで深く読み込んでくださっているとは」と何度も驚く丸山。「声をあてるならどんなキャラ?」「結婚するならどのヒロイン?」といった話題も飛び出した。また6月からスタートする新章についても話を聞いている。

取材・文 / 鈴木俊介撮影 / ヨシダヤスシ

作品紹介

史上最強のコンビニ店員現る!
最強を求める空手家・愛之助は終生のライバル・照が、ある男に完全な敗北を喫したことを知る。その名はTSUYOSHI──。「最強」であること以外謎に包まれたその人物は、立川のコンビニ店員だった! しかも彼は、中国から来た怪しい美女・陳さんに狙われていて……。今、東京・立川の地で一人の男を巡る世界規模の格闘サーガが幕を開ける!
※本作は作画を丸山恭右が、シナリオをZooが担当。
(1巻より)

第1話より。

第1話より。

「小西さんの頭の中で二次創作が始まってるじゃないですか」

小西克幸 僕、基本的に電子書籍でマンガを買ってるんですよ。冊数が多くなると置くところもなくなってきちゃいますし、電子なら移動中とか外でも読めますし。そうやっていろいろ買っていたら、「ほかにもこんな本が読まれています」って現れたオススメの中に「TSUYOSHI」があって。“このコンビニ店員、史上最強!”みたいなキャッチフレーズと絵柄を見て、面白そうだなって。いつも直感で買うんですよ。そしたらめっちゃ面白くて……。先生の前で言うのは失礼かもしれませんが、「当たりだ!」って思ったんです(笑)。

丸山恭右 いえ、うれしいです。

左から小西克幸、丸山恭右。

左から小西克幸、丸山恭右。

小西 「TSUYOSHI」は、やっぱりツヨシがめちゃめちゃ強いところがいいですよね。強いキャラクターが無双していく話って面白いし、なおかつツヨシって個性がなさそうでいてものすごく個性があるキャラクターなので、読んでいくとどんどん魅力が増していって、惹かれていきました。あの鬱屈とした性格が最高。だから、「世直し編」の戦いの中で照も言ってましたけど、“ウェーイ”ってなってからは彼の魅力がなくなっちゃうんですよね。「照の気持ち、わかるわあ」って思いながら読んでいました。

第181話より。ツヨシはすっかり垢抜けた姿で現れ、皆を驚かせる。

第181話より。ツヨシはすっかり垢抜けた姿で現れ、皆を驚かせる。

丸山 めっちゃ読み込んでくれてるじゃないですか!(笑)

小西 好きなんで(笑)。一番好きなのはロシアの船の中のエピソードなんですよ。鬱屈しているところとキレてるところ、目が笑っていないところがツヨシの最高なところだと思っているんですが、それが全部出ていますよね。最近はツヨシのお母さんがそこのポジションを担ってくれていますけど、お母さんもいいキャラクターですよね。あと、穂乃果もすげえ強いんじゃないかとにらんでるんですよ。普通なら8時間かかる山道を1時間で登りきっちゃっているお母さんに、穂乃果も普通に付いていってる。これは彼女も、相当なバケモノなんじゃないかなと。

丸山 すごい、描いていないところまで想像してお話ししてくださる(笑)。小西さんの頭の中で二次創作が始まってるじゃないですか。

小西 いやいや、マンガの中にヒントが多いんですよ、「TSUYOSHI」は(笑)。

第245話より、ツヨシの母・珠江とその娘・穂乃果。激しいバトルを目の当たりにしても表情を変えない穂乃果の潜在能力とは?

第245話より、ツヨシの母・珠江とその娘・穂乃果。激しいバトルを目の当たりにしても表情を変えない穂乃果の潜在能力とは?

丸山 ただただうれしいですね。そこまで読んでくれているんだ……っていう。今回ナタリーさんで対談させていただくことになって、(シナリオ担当の)Zooさんとお相手の方はどんな人がいいかって話をしたときに、「是が非でも『TSUYOSHI』をめちゃくちゃ読んでくれている人がいい」って言ってたんです。小西さんが「TSUYOSHI」を読んでくださってるとは聞いていましたが、まさかここまで深く読み込んでくださっているとは(笑)。驚きました。

小西 僕はずっと「メディア化されないのかな」と思ってもいるんですよ。ZooさんがXでポストされていたのも見ましたけど……。

丸山 お話はけっこういただけるんですけど、大人の事情でいつもポシャッています(苦笑)。怪しいところはいい感じに改変して、うまくやっていただけたらいいんですけどね。

小西 ね、できそうな気がするんですけどね。今までもそういうのはいっぱいあったじゃないですか。アニメじゃなくても、実写とかでやっても面白くなりそうですよね。

休暇中に旅行先でトライアスロン?「よくマンガ描けますね」

──作品にとって大きな節目を迎えたわけですが、著者として感慨深い気持ちはありますか。

丸山 正直に言うと、あまり考えている暇がなくて。とにかく忙しく、ひたすら作品を上げていって、気づいたら終わっていたって感じでした。

──新章との間にお休みは取れました?

丸山 いただきました。次のシーズンはどうやら世界が舞台になりそうだとZooさんから聞いたので、世界を見てこようと思って、インドとアメリカを巡ってきました。ずっと部屋の中で作画していると、インプットが足りなくなる瞬間があるので、自分でもアクティブにいろんなものを吸収していかないと続かないですね。

小西克幸、丸山恭右。

小西克幸、丸山恭右。

小西 どうでした? インドとアメリカは。

丸山 まずインドは、めちゃくちゃカオスでした(笑)。

小西 よく、インドに行くと人生観変わるって言いますよね。

丸山 確かにその通りだなって思いました。臭い、汚い、辛いの3Kだったんです(笑)。3日目でお腹壊して……。ごはんもカレーばかりで、どれもこれもスパイシー。パクチーが苦手なので、全部の食べ物にパクチーが入っていたのも困りました。添えてあるだけならよけられますけど、練り込まれてたりするんですよね。

小西 なかなか、記事にはしづらい体験ですね(笑)。

丸山 すみません(笑)。アメリカではトライアスロンの大会に出まして、スイムとチャリとランで、アメリカを横断してきました。

小西 トライアスロンって何キロくらいなんですか?

丸山 スイムが2キロ、チャリが90キロ、ランが20キロです。

小西 え……すごい……鉄人じゃないですか。よくマンガ描けますね(笑)。巻末マンガにもありましたけど、格闘技の試合にも出られたりしているじゃないですか?

丸山 ちょうど今週末に格闘技の試合があって……。

小西 一体いつトレーニングしているんですか?(笑)

丸山 今日この後もジムに行こうかなって思っています(笑)。

転機になったエピソード、ツヨシを描くときに注意していること

──これまでを振り返って、ご自身で「ここが転機だったな」と思うところはありますか?

丸山 「TSUYOSHI」の物語が最初に一番動いたのが、立川の昭和記念公園の地下での戦いからなんですよね。そこでトーナメントでの戦いが始まって、なんとなく「TSUYOSHI」という作品の方向性が見えてきたのかなって気はしますね。

──中国・ロシアがツヨシの“管理権”をめぐって争う「Tマッチ編」ですね。ツヨシが戦わない展開に、当時衝撃を受けました。

第67話より、Tマッチで激突する中国・ロシアの闘士たち。

第67話より、Tマッチで激突する中国・ロシアの闘士たち。

丸山 これは作り手側の事情ですけど、ツヨシを戦いに出すと、一瞬で物語が終わっちゃうんですよ。どうやったらこの物語を長く、面白いまま続けることができるか。そう考えて、ツヨシの周りのキャラクターたちをどれだけ魅力的にできるかっていう方向にだんだんとシフトしていきました。

小西 僕が演じさせていただいているキャラクターでも、「すみません! このキャラクター強すぎて、出したら1回で解決しちゃうんで出せないです!」って言われることはあります(笑)。ツヨシは強すぎますからね。

丸山 コンセプト上、負けさせられないっていうのもあるので難しいんですよね。

──ツヨシを描くときに大事にしていること、気をつけていることってありますか?

丸山 あまりツヨシ目線で描かないようにしています。ツヨシのミステリアスな部分を楽しんでもらうのが、この作品の面白さのポイントの1つにもなっているので、いろんなキャラから見たツヨシを描いていくようにしています。あまり、ツヨシはこういうキャラでって説明しすぎると、つまらなくなっちゃうんだろうなって思っていますね。

──小西さんはツヨシというキャラクターをどう見ていらっしゃいますか。

小西 さっきもお話ししたんですけど、彼の鬱屈したところと、あとはブチギレたときになんでもかんでも言っちゃうところが好きですね。彼の気持ちがよくわかって、例えばニキータと戦ったときとか。ニキータはイケメンだしヒーロー扱いされているから、みんなニキータが言ってることが正義で、逆にツヨシのことは悪みたいな目を向けてくる。ツヨシからすると、さらわれて大変な目にあってるのに、ケンカをふっかけられてるのはこっちなのに、それなのにニキータが“ええかっこ”するから「ぶち殺してやろうか」じゃないですけど、そういう気持ちになるのもわかります(笑)。そういうところでツヨシが爆発して、相手をむちゃくちゃに倒してくれるところが個人的にスカッとして好きです。

第136話より、「邪悪め!成敗してくれる!」と“正義の味方面”をするニキータ。
第136話より、「邪悪め!成敗してくれる!」と“正義の味方面”をするニキータ。

第136話より、「邪悪め!成敗してくれる!」と“正義の味方面”をするニキータ。

丸山 小西さんに共感してもらえるのは、うれしいですけど意外でした。イケボイスのイメージが強いし、奥さんが3人いるキャラとかも演じていらっしゃるわけですから(笑)。

小西 僕も鬱屈としたところはある人間なので(笑)。でも、みんなそう思ってるんじゃないかって思いますよ。人は見た目でいろんなことを判断するじゃないですか。そういうのを全部ぶち壊してくれるからスカッとするんですよね。