コミックナタリー PowerPush - 「紡木たく PICTURE BOOK」
紡木たく7年ぶりの新作は絵本 氣志團・綾小路翔と紐解く紡木作品の魅力
紡木たくにとって7年ぶりの新作、そして初の絵本作品「紡木たく PICTURE BOOK(ピクチャーブック)」が本日8月5日に発売された。「紡木たく PICTURE BOOK」では紡木の代表作「瞬きもせず」と「ホットロード」から、絵と文章が紡木自らの手で選り抜かれ、新しいストーリーへと生まれ変わる。
コミックナタリーでは発売に合わせ、「紡木たく作品をこの世で一番理解しているのは俺だ」と豪語する、氣志團の綾小路翔へのインタビューを敢行。紡木作品の魅力や、自身へ与えた影響、「PICTURE BOOK」を読んでみての感想を語ってもらった。
取材/唐木元 文/宮津友徳
「紡木たく PICTURE BOOK」とは
「紡木たく PICTURE BOOK」は、作者初の絵本。山口の田舎で多感な時期を過ごす少年少女の日々を綴った「瞬きもせず」と、「誰からも必要とされていないのでは」という不安を抱えた少女・和希と不良少年の春山が次第に惹かれあっていく様を描く「ホットロード」から、紡木自らが絵やセリフ、モノローグを選り抜いて、新しいストーリーを紡いでいく。
俺が紡木たくの世界をこの世で一番理解している
──本日翔さんにご登場いただいたのは、紡木先生のファンであるというのはもちろん、「PICTURE BOOK」の発売が決まった際に、Twitterで「絶対買う」とおっしゃっていたのを拝見しておりまして。
「マイ ガーデナー」以来の新作ですからね。それまでは10年近くまったく作品がリリースされていない状況が続いていたので、ここ数年、こうして少しだけでも動きがあることが僕たちファンにとってはたまらなくうれしいです。
──「マイ ガーデナー」は2007年刊行なので、約7年ぶりですね。
ああ、それでもそんなに経つんだ。数多くのファンがいることを承知の上で言わせて頂きますが、紡木たくの世界をこの世で一番理解している人間は、この僕だと自負しています(笑)。もう人格の一部が紡木たく作品でできていると言っても過言ではないです。
──紡木先生の作品の中ではどれがお好きですか。
「瞬きもせず」ですね。というかマンガ、音楽、映画、小説、すべてのジャンルを含めた中で一番好きな作品が「瞬きもせず」なんです。「瞬きもせず」はストーリーやキャラクターはもちろんのこと、モノローグも世界一素敵なんですよ。心の機微とかを「よく思いつくな」っていうような言葉で、詩のように表現してる。もちろんそれは「ホットロード」も同じで、もし紡木先生がいなかったら少女マンガのモノローグは今のものとは違うものになっていたと断言します。それと絵のディテールもすごい。たとえば紺野くんの履いてる学生服の、少しワタリが広がってる感じとか。
──軽いボンタンになっているんですね。ヤンキーが履くドカンとは違った。
そうそう。で、やっぱり輝哉は輝哉のキャラに則したボンタンの形になっていて、次ちゃんは次ちゃんで少し違う。そういうキャラクターの位置づけが、制服を見るだけでわかるんです。あと寂れた部室とか、放課後の教室みたいな、どこにでもあるような景色がしっかり描写されてる。僕もそういう日常の景色が好きで「このシーンを、この風景を、俺だけは一生忘れずに覚えておこう」って思っていました。でも「こんな感覚きっと誰に言っても理解されないだろうな」と諦めていたから、初めて紡木先生の作品を読んだときは勝手ながら猛烈なシンパシーを感じました。そんな経緯で「瞬きもせず」にドはまりして、こんな青春を送りたいから高校に行こうと思ったんです。
──それまでは高校に行くつもりはなかったんですか。
もうね、そのままじゃ進学なんてできないような惨状だったんですよ。だけどあの作品を読んだら、「俺の青春、ホントにこれでいいのか?」と思ったんです。それで友達には「ちょっと、俺ダサいけどごめん」って言って、中3くらいから授業にしっかり出るようにして。それで近隣の高校をリサーチして、外観が劇中の高校に一番近いと思ったところを選んだんです。進学後は「瞬きもせず」のコスプレで生活しているような毎日だったなぁ。
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紡木たく(ツムギタク)
1964年生まれ、神奈川県横浜市出身。1982年、別冊マーガレット(集英社)に掲載された「待ち人」でマンガ家デビューを果たした。当時弱冠17歳。1986年から別冊マーガレットで連載した「ホットロード」が大ヒット。長らくマンガ家としての活動が見られなかったが、2007年に描き下ろしの新作単行本「マイ ガーデナー」を発表した。そのほかの代表作に「瞬きもせず」など。2014年8月16日には「ホットロード」を原作とした実写映画が公開される。
綾小路翔(アヤノコウジショウ)
孤高の“ヤンクロックバンド”・氣志團の團長。1997年、千葉・木更津にて氣志團を結成したのち、2001年に“メイジャーデビュー”を果たす。自ら企画の大型野外ロックフェス、全国アリーナツアー、ロックバンドとしては最速での東京ドームGIG成功などを経て、NHK紅白歌合戦に2年連続で出場。結成15周年を迎えた2012年に地元・千葉で大規模な野外イベント「氣志團万博2012」を行い大成功を収めた。2014年9月には「氣志團万博2014 ~房総大パニック!超激突!!~ Presented by シミズオクト」を開催する。