灰仁はいつから扇言を好きになった？
読者からの熱意ある質問に続々回答

──ここからは、Xで読者の方に募った質問に回答をお願いします。「墜落JKと廃人教師」の結末に関する内容がたくさん寄せられたのですが、まずは「扇言はなぜ保育士になったのか」と気になっている方が多かったです。

36話に、灰仁とJKが、淳人の弟たちの世話をするエピソードがあるんです。それを描いたときにしっくりきて、「扇言は将来保育士になるんだろうな」と決めました。扇言本人が「先生と言われる職業に就きたい」と言うシーンがあるんですが、そのときも保育士になるイメージでしたね。

──なるほど。最終回で登場した学生の善（ぜん）と幼児の真言（まこと）という、灰仁と扇言の息子に、両親と血のつながりはないのか？それはなぜなのか？と気になっている方も多いようでした。

善は血がつながっていないんですが、真言は2人の実子です。設定をとても細かく考えているわけではないんですが、善は最終話を締める役であり、灰仁とJKがつないできたものを受け継ぐ人物だと思っていたので、ただ幸せなキャラクターにはできなくて。いろいろ考えて、そうなりました。

──善の外見は、灰仁によく似ていますよね。

最終巻の描き下ろしエピソードに描いたんですが、善は外見も内面も、自分から灰仁に似せているんです。

「墜落JKと廃人教師」20巻episode.119より、灰葉善。

──父に憧れている、と。素敵ですね。あとは一馬となずなの関係についても、「その後、進展はありましたか？」という質問がありました。

はたから見たら「くっついてるじゃん」と思われていると思うんですが、確定的な言葉をお互いに言っていない状態ですね。たぶん2人は一生こういう仲というか、こういう関係性のまま仲良くしているんじゃないかなって。だから、進展しないんじゃないですかね……。

──想像が膨らみますね。次は「もしスピンオフを描くとしたら誰をメインにしますか」という質問です。後日談や過去編など、いろいろな掘り下げができそうですよね。

これは善くんですね！ 設定をよりちゃんと考えなきゃいけなくなるんですけど、この作品を描き始めたときのJKと灰仁に比べたら、すでに設定がしっかり考えられていると思います（笑）。最終話の善くんの物語の続きを、しっかり描いてみたいです。

──その後の灰仁と扇言も登場するでしょうし、ぜひ読みたいです！ また、「描ききれなかったけど描きたかった話はありますか？」という質問もありました。

48話の遊園地のエピソードは、ページ数があったらもう少し描きたかったですね。遊園地でバイトしている淳人や、ストーキングしに来ていたお兄ちゃんとの絡みを、もっと描きたかった。でもあのエピソードの軸になるのは一馬くんの心境の変化だったので、前後編にするほどでもないな……と思い、断念しました。

──続いては、「灰仁は、いつから扇言ちゃんのことを本気で好きになりましたか？」という質問です。

うーん……わからないですね。口ではずっと本気だと言っていましたけど、灰仁の本心をモノローグで描いたことが1回もないんですよ。そういうところも大人ならではの魅力なんじゃないかなと思うし、わからないのがちょうどいいんじゃないかな、とも思います。

──確かに。そして「登場人物たちの名前はどう考えてつけましたか？」という質問もありました。この方は特に、落合兄妹の名前がお好きだそうです。

「落合」という苗字は、“墜落”の“落下”から拾ったんですが、下の名前は完全にインスピレーションで、響きから決めました。なずなと淳人もそうですね。灰仁もインスピレーションだったんですが、あとから「灰仁……廃人になるじゃん！ちょうどいい！」と決めた記憶があります。

──“廃人”から灰葉仁という名前が導かれたわけではなく、逆なんですね。

作品のタイトルは先に決めていたんですが、あとからつながって「めっちゃいい！」となりました。喫煙するキャラというイメージもできていたので、「灰」もピッタリでしたしね。

──裏話が聞けてうれしいです。ほかにも「明かす機会がなかったけど実は…な設定があれば教えてほしいです！」という質問がありまして。もしほかに、知られざる裏設定があればぜひ。

最後の最後までどこかにねじ込みたいと思いつつ描けなかったのが、灰仁と校長先生の関係性です。灰仁の高校生のときの担任が校長先生なんですね。84話で灰仁の卒業アルバムが出てきたコマで、見切れているんですけど、校長先生の名前をひっそりと出していました。「高長剛（たかながつよし）」という名前なんですけど、高長＝校長からもじっています（笑）。

「墜落JKと廃人教師」15巻episode.84より。

──……細かい！（笑） そんな小ネタも挟まれていたんですね。あとは、sora先生といえば絵柄の美しさに目を引かれますが、「カラーでの色彩が美しいsora先生のイラストですが、特にお気に入りや、思い入れのあるカラー絵はありますか？」という質問がありました。

カラーを描くのは好きなんですが、昔のイラストは今見るとすごく拙くて、「ああ……」となってしまって……。なので、水中で金魚が泳ぐ中に灰仁とJKを描いた、最新のイラストが好きです。花とゆめ18号の付録の着せ替えカバーに使われているので、チェックしてみてください。

花とゆめ18号（2024年9月4日まで販売）に付属する単行本着せ替えカバーのイラスト。

──絵柄はご自身でこまめに研究して、アップデートしているんでしょうか？

かなりしていますね。初期とはだいぶ変わっていると思います。

──続いては、「灰仁の服が毎回センス良すぎで大好きです 私服を描く時に参考にしているものとかありますか？」という質問です。灰仁はシャツを羽織るスタイリングが多いですよね。

自分が着てほしい服を着せているだけなので、いいと言ってもらえるとすごくうれしいですね。昔はファッション誌も見ていたんですが、最近は自分が着せたい服や、描きたい服を着せるのが一番楽しいということに気づいたので、そうしています。ダサくならないようには、気をつけているつもりです（笑）。

──ありがとうございます。残るはあと2問となりました。次は「ep.76のホラー映画小ネタがとても興味深かったです。かなりのホラー好きとお見受けしますが、sora先生おすすめの作品があればぜひ教えてください」という質問です。

ホラーがすごく好きというわけではないんですけど、作中にはけっこう出てきましたね（笑）。1人で観るのは怖いので、誰かと話しながら観ます。友人との鑑賞会も2、3回くらいやったかな。直球のホラー映画よりは少しコメディ要素の入ったホラーが好きで、おすすめは「ハッピー・デス・デイ」。2、3回は観ましたし、同じ監督の別作品も観に行ったくらい好きです。面白いのでぜひ！

──たっぷりと回答くださってありがとうございました！ では最後の質問です。「sora先生が灰仁と扇言に伝えたいことはありますか？」

末永く仲良く、暮らしてほしいですね。そして不慮の事故には遭わないように。どちらかが事故に遭ってしまったら、追いかけてしまいそうなので……。それだけは気を付けてほしいです！