コミックナタリー PowerPush - ツール・ド・本屋さん

全国の書店に自転車でお邪魔 今日は地元・調布でPOP描き あだち充も迷惑

「編集部とのやりとりに関しては、何を描いてもOKとしてくれ」

──今日も横山さんはお店ごとに報告のツイートをされていますが、Twitterやブログなどで常に近況を報告するのも「ツール・ド・本屋さん」の特徴ですよね。

Twitterでの反応には本当にいつも励まされています。スマートフォンがなかったら、この企画は難しかったんじゃないかと思いますね。

──そこまでですか。

ただ、最初はノートPCを持って行こうとまで言ってたんです。旅に出る前のワクワク感も手伝って、ものすごい装備で行こうとしてたんですよ。憧れるじゃないですか、コッヘルでお湯を沸かしてラーメン食べるとか、夕焼けを眺めてコーヒーを淹れるとか。でも編集さんに「あれもいらない、これもいらない」と削られて。

あれもこれもと欲しがる横山に、担当編集M上氏が喝を入れる。

──夢見がちだぞ、と。

その編集さんの判断はほんとに正しかったですね。躁状態で考えてた荷物をほんとに全部積んで出発してたら、悲惨なことになってたと思います。

──他にも編集さんとのやりとりが旅行を左右したことはありましたか?

いやー、基本旅をしている間は放置されているので、常に思っていることは「もっと俺にかまってくれよ!」ってことです(笑)。連絡も用事があるときしか来ないし……。

──放置プレイだったんですね。信頼関係ができていたということで。

そんな殊勝なもんじゃないですけど、あ、ただ旅に出るにあたって、3か条の要求を出したんです。「交渉しやすいように横山裕二のゲッサン名刺を作ってくれ」「緊急ホットラインとして編集長の携帯番号を教えてくれ」そして「編集部とのやりとりに関しては、何を描いてもOKとしてくれ」という。それが全部あっさり受け入れられたので、だいぶ気が楽になったというか。

ゲッサン編集部に対して、3カ条を要求するシーン。横山の気合とは裏腹に、要求はあっさりと受け入れられる。

──名刺とホットラインはわかりますけど、やりとり全オッケーというのはけっこう豪気ですね。

ええ。もし編集部の人にイラっとすることを言われても、それをそのまんまマンガにできるので(笑)。溜め込まずに済んだというか。

──実際、かなりあけすけなやりとりが描かれていますもんね。というところで、4軒目です。時間的に、ここが今日のラストになりそうです。

「ツール・ド・本屋さん」in 調布市「くまざわ書店国領店」

まずはレジの店員さんに声をかけ、コミック売り場の担当者を紹介してもらうのが横山の黄金パターンだ。

マンガ家がいきなりやってきて色紙を描かせてくれ、という通常ありえない展開に困惑気味の店員さんだったが、親身なご対応により4軒目でも承諾をゲット。

POPを手渡すと書店員さんの表情がぐっと明るくなり、「あ、どうやらこの人ほんとにマンガ家なんだ」という心の声が聞こえるかのようだった。

本日のツール・ド・本屋さん、任務完了!

全国の書店さんを自転車で巡り、宣伝用POP描きの旅に挑戦する横山裕二(35)。ゲッサンが誇る“看板”描き作家は、編集部から課される無理難題ミッションをこなしながら今日もどこか書店さんの店頭に!!
さらにどこにでも闖入する横山裕二は、書店さんだけでは飽き足らず……あだち充先生をはじめとする大物マンガ家さんにも突撃……!!!
記念すべき第1巻は「四国編」「東海道編」「沖縄編」を収録!

横山裕二(よこやまゆうじ)

1977年2月8日生まれ。山口県出身。2006年にビッグコミックスピリッツ増刊カジュアル(小学館)にてデビュー。ゲッサン創刊号(小学館)より、読者ページ「ゲッサンしてみる。」内企画としてマンガ家の仕事場を訪問レポートする「仕事場見たいし!」を連載。2011年8月より、自転車で全国書店を回る「ツール・ド・本屋さん」を開始した。