コミックナタリー PowerPush - 夜麻みゆき「刻の大地」
懐かしの名作が未収録作も含めた愛蔵版に! 夜麻みゆきが原点と未来を語るインタビュー
1990年代から2000年代の初頭にかけて、エニックス(現:スクウェア・エニックス)の雑誌を主な舞台として活躍し、優れたファンタジー作品を世に送り続けてきた作家・夜麻みゆき。「レヴァリアース」をはじめとするその作品の世界観とキャラクターは、今なおファンを惹きつけてやまない。
そんな彼女の代表作のひとつである「刻の大地」の愛蔵版が、全6巻で復刊ドットコムより刊行される。コミックナタリーではこれを記念し、夜麻へのインタビューを実施。その発想の源泉や、誰もが気になる新作の構想について語ってもらった。
取材・文/坂本恵
ドラクエの影響で世界観ができていった
──先日「刻の大地」が復刊されるというニュース記事(参照:夜麻みゆき「刻の大地」未収録作加え復刊!サイン会も開催)を出したところ、ものすごい反響がありまして。
本当に光栄なことです。普段、家にこもって描いているだけだと反響というのはよく分からないものなので、こんなにもいろんな方が応援してくださっていると思うと、胸がいっぱいになりますね。
──「刻の大地」は「レヴァリアース」「幻想大陸」と同じく、オッツ・キイムの世界を舞台にした作品です。この世界観はどこから着想を得て作られたんでしょうか?
すごく単純なんですけど、「ドラクエ」「ウルティマ」や、TRPGの「ローズ・トゥ・ロード」など、子どもの頃に好きだったゲームですね。そういったRPG、TRPGの影響はかなりあると思います。
──夜麻先生はデビューも「ドラクエ4コママンガ劇場」ですしね。最初に「ドラクエ」をプレイしたのはどのシリーズですか?
もうタイムリーに1です。その世代直球なので。最初は弟がやってたのを見てただけだったんですけど、当時アクションやシューティングというジャンルがあるなか、ストーリー性のある斬新なRPGに、自分もハマっちゃいましたね。
──では世界観ありきで作品をつくっていかれたんでしょうか?
いえ、おそらくキャラクターからで、世界観はあとから付いてきたんだったと思います。最初は「レヴァリアース」のシオンとウリック、その後レムやザードが出てきました。「刻の大地」の十六夜、ジェンド、カイもそれからですね。
勧善懲悪に違和感を持ち、十六夜のキャラクターが浮かんだ
──十六夜、ジェンド、カイの3人はどのようにできあがったキャラクターなんでしょう。
当時、ファンタジーの世界ではモンスターが絶対悪であるということに疑問を持っていて。そこから自然と十六夜のようなキャラクターが浮かんだんです。やっぱり、昔のゲームやマンガって、勧善懲悪だったじゃないですか。そういったものを、なんとなく不思議に思っていて。
──「ドラクエ」でも、問答無用でモンスターを倒していきますしね。
そうなんです。で、十六夜の対照となるキャラクターとしてジェンドが生まれて。カイはその中間にあたる客観的な立場かなという感じです。
──ちなみに「刻の大地」の世界観はファンタジーで、みんな西洋風な名前ですが、十六夜の名前だけは和風ですね。
うーん、特に意味はないんですけど、中学生くらいのとき、教科書でふと目に留まった言葉だったんです。意味はわからないんですけど、美しい言葉だなと思って。私のペンネームより先に決まったんですよ。
──「夜」っていう文字がお好きなんですか?
あっ、それ最近気が付いたんです! 自分でも無意識に使ってたんですね。
──ジェンドとカイはどう名前を決めたんでしょうか。ジェンドはダークエルフの最後の生き残りだから、「ジ・エンド」でジェンドなのでは、という考察も目にしたことがあります。
うふふ、そういう声も聞いたことありますが違うんですよ。あんまり意味はなくて、ジェンドもカイも、当時あったゲームのタイトルから抜き出した文字列なんです。
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あらすじ
すべての魔物(モンスター)を束ねる悪の権化・邪神竜ディアボロス。
勇者ザードにより倒されたはずのディアボロスは時を経て復活、魔物たちは凶悪化して再び人間を襲うようになっていた。
真実を確かめるべくディアボロスの元へ向かったザードだが、彼が帰ってくることは二度となかった──。
それから3年後…。ザードの友人である聖騎士カイは、ザードが言い残した「人と魔物の共存」が可能なのか、その答えを求め、あてのない旅を続けていた。
ひょんなことから、魔物と心を通わせる不思議な少年・十六夜(いざよい)と、ディアボロスにより滅ぼされた種族“ダークエルフ”の生き残りであるジェンドと出会ったカイ。いつしか旅の仲間となった3人は、それぞれの目的のため、ディアボロスの居場所を探す旅に出発した。
夜麻みゆき(やまみゆき)
大阪府出身。代表作は異世界オッツ・キイムを舞台とした一連のファンタジー作品「レヴァリアース」「幻想大陸」「刻の大地」。著書に「トリフィルファンタジア」(全2巻、スクウェア・エニックス)などがある。2011年に新作読み切り「Kanon Texte」を発表するなど、現在も新作執筆に精力的に取り組んでいる。