手塚治虫の生誕90周年を記念して刊行されているマンガ書籍・テヅコミ(マイクロマガジン社)。手塚治虫を敬愛するマンガ家たちによるトリビュート作品が連載されているほか、毎号「はじめての手塚治虫」「ホラーな手塚治虫」「手塚治虫と萌え」といった特集を設けて、そのテーマに沿った手塚マンガを再録しているのも大きな特徴だ。
このたび、テヅコミのバックナンバーが一挙に電子書籍化。本ページではこれに合わせて、創刊号からVol.10までの特集テーマと、各号に収録されている手塚作品を紹介する。好みの作品が見つかったら、ぜひその号のテヅコミを読んでみよう。
文・構成 / 鈴木俊介
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創刊号
はじめての手塚治虫
手塚治虫が遺した作品の数は約700タイトル。テヅコミ創刊号では、“手塚初心者”にオススメする作品をマンガ家や書店員にアンケート調査し、ランキング形式で紹介している。アンケートの結果、上位に輝いたのは「ブラック・ジャック」「火の鳥」「鉄腕アトム」の3作。本号では現代作家によるトリビュート作品はもちろん、ランキング上位3作品の原稿を1話分ずつ再録しているため、“手塚作品入門”としてうってつけの1冊となっている。
- 再録されている手塚マンガ
- 「ブラック・ジャック」より「笑い上戸」
- 「火の鳥 鳳凰編」
- 「アトム今昔物語」
この連載作にも注目!
カネコアツシ「サーチアンドデストロイ」
創刊号の巻頭を飾ったのは、「どろろ」を原作に描かれるSF異形譚。クリーチャーと呼ばれるロボットが人間と共存するサイバーパンクな世界を舞台に、体中が機械という少女の戦いの日々が紡がれる。
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手塚治虫のヒロイン
「リボンの騎士」のサファイアが男装麗人だったり、「プライム・ローズ」のエミヤがビキニアーマーを着ていたりと、今なお人気の高いヒロイン属性を半世紀以上前に取り入れていた手塚。本号ではそんな手塚マンガのヒロインたちにスポットを当てている。再録作品の1つ「るんは風の中」は、ポスター写真の少女と生身の男子学生の恋物語を描いたもの。同作を原作にした読み切り「初恋は風の中」(作・石田敦子)も同時掲載された。
- 再録されている手塚マンガ
- 「リボンの騎士」
- 「エンゼルの丘」
- 「るんは風の中」
この連載作にも注目!
武礼堂「新約・リボンの騎士」
男しか王位を継げない国で、性別を隠して王子のフリを続けるお姫様の物語「リボンの騎士」。「新約」では王子の正体を確かめようと、宰相が美人暗殺者を送り込む。彼女の秘密は暴かれてしまうのか?
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手塚治虫のライフワーク
“生命の尊厳”をテーマに、多くの作品で自然破壊への警告、反戦などを訴え続けた手塚。本号ではそうした作品群を彼のライフワークとして紹介。永遠の命を持つ火の鳥を軸に、人間の苦悩や葛藤を描く「火の鳥」シリーズからは、人類の終末期が舞台の「未来編」を収録。手塚の絶筆となった「ネオ・ファウスト」では、長年研究に没頭してきた老教授が魔女の薬で若返り、人生をやり直すことに。やがて彼は生命を作り出すという野望を抱く。
- 再録されている手塚マンガ
- 「火の鳥 未来編」
- 「ネオ・ファウスト」
- 「猫の血」
この連載作にも注目!
和田ラヂヲ「和田ラヂヲの火の鳥」
毎号、原作とはまるで関係のないストーリー展開から唐突に現れる火の鳥が病みつきになるギャグマンガ。小難しいことは考えず頭を空にして楽しむ、引き算美・和田ラヂヲワールド全開の作品だ。
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手塚治虫の美麗
あでやかな女性、退廃的な美少年、どこか色っぽい動物や昆虫……。本号にはそうした、人を惑わす“美麗”の力を堪能できる手塚マンガが集結。「奇子」では4歳の頃から地下に幽閉され、無垢なまま蠱惑的に成長した少女が、やがて周囲の歯車を狂わせる。「ゼフィルス」は戦時中を舞台に、蝶に魅せられた少年の哀愁を描いた物語。「I.L」では落ち目の映画監督が、姿を自在に変えられる女性・アイエルに演技をさせ、人々の内面を暴いていく。
- 再録されている手塚マンガ
- 「奇子」
- 「ゼフィルス」
- 「I.L」
この連載作にも注目!
九部玖凛「亜夜子」
官能的な女性の絵を得意とする九部玖凛が、現代を舞台に「奇子」を執筆。豪農・天外家の長男が遺産を巡るトラブルに巻き込まれていくという骨子はそのまま、人物の性格などはアレンジされている。
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ホラーな手塚治虫
人間の心に潜む苦悩、狂気といった闇を描く作品が読みたければこの号を。アニメ放送も記憶に新しい「どろろ」は、全身の48カ所を魔物に奪われた百鬼丸が、体のパーツを取り戻すため戦う妖怪アドベンチャー。「赤の他人」の主人公はふとしたことから両親の行動に疑惑を抱き、周囲の人が得体の知れない生き物なのではと疑心暗鬼に陥る。連作短編シリーズの1編「八角形の館」では、壁にぶつかったマンガ家が運命を変えられる館を訪問。
- 再録されている手塚マンガ
- 「どろろ」
- 「赤の他人」
- 「ザ・クレーター 八角形の館」
この連載作にも注目!
ボクテンゴウ「京獣物語」
マンガ家志望の女の子が、ひょんなことから国と獣人族との争いに巻き込まれてしまう、「バンパイヤ」原作のバトルアクション。現代京都を舞台に、実在の人物や場所が登場するリアリティが魅力だ。
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手塚治虫と舞台
少年期を兵庫県宝塚市で過ごした手塚は、マンガ家になっても時間を見つけては劇場に足を運ぶ、芝居好きな人物だった。本号ではそんな手塚が、劇場や舞台の要素を取り入れた作品を紹介する。「おけさのひょう六」は民謡「佐渡おけさ」の誕生にまつわる創作民話。「七色いんこ」は代役専門の天才役者であり、稀代の大泥棒でもある七色いんこを軸にした人間ドラマだ。「カーテンは今夜も青い」では歌劇団を舞台に、ある事件の顛末を描く。
- 再録されている手塚マンガ
- 「おけさのひょう六」
- 「七色いんこ」
- 「カーテンは今夜も青い」
この連載作にも注目!
石田敦子「HeiSei七色いんこ」
劇場荒らしの怪盗・七色いんこが、平成の終わりに突如復活。「ブラック・ジャック」など手塚作品の舞台化現場に現れては、代役として手塚キャラを変幻自在に演じていく。果たしてその正体は?
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手塚治虫とアニメ
ディズニー映画を愛好していた手塚は、マンガだけでなく、アニメーションにも強い関心を持っていた。本号では、当時の視聴者に衝撃を与えた国産初の30分TVアニメシリーズ「鉄腕アトム」など、手塚が作り上げたアニメ作品の数々を紹介。またアニメへの情熱が込められたマンガとして、アニメ映画に青春を捧ぐ若者を描いた「フィルムは生きている」、手塚の半生が綴られた自伝マンガ「ガチャボイ一代記」などを再録している。
- 再録されている手塚マンガ
- 「フィルムは生きている」
- 「ブラック・ジャック」より「動けソロモン」
- 「ガチャボイ一代記」
この連載作にも注目!
しりあがり寿「懊悩!マモルくん」
マグマ大使が宇宙人・ゴアを撃退し、平和が戻った世界。だがマグマ大使とともに悪と戦った少年・マモルは、マグマ大使の妻であるモルに叶わぬ恋をしてしまい、悶々とした毎日を過ごしていた!
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手塚治虫とKawaii
ブラック・ジャックの“おくたん”を自称する、舌っ足らずでおませな女の子・ピノコ。愛を注いでくれた人や動物を、魔法を使って助ける一角獣の子供・ユニコ。宇宙人に改造され、アトムのような力を手に入れた子猫・アトムキャット……。何気ない仕草やポーズで、動物や人間の子供のかわいらしさを表現する名手だった手塚。この号にはそんな手塚の生み出した、“Kawaii”という言葉の似合うキャラクターが活躍するマンガが集められた。
- 再録されている手塚マンガ
- 「アトムキャット」
- 「ブラック・ジャック」より「ピノコ還る!」
- 「ユニコ」
この連載作にも注目!
時丸佳久「異世界ブラック・ジャック」
あのブラック・ジャックが、もしもおとぎ話の世界に転移してしまったら? 常識の通用しない異世界で、ブラック・ジャックがメスを片手に奮闘。お馴染みのキャラクター、名ゼリフも登場する。
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手塚治虫と萌え
帯に「“萌え”の起源は手塚治虫にあり!」と書かれたこの号では、萌え要素が楽しめる作品を特集。「ふしぎなメルモ」は大人にも赤子にもなれる特別な飴を手に入れたメルモが、事件や困難を解決していく少女マンガ。大人になったメルモは、とてもセクシーに描かれる。「さらばアーリイ」は青年と野人の娘の恋物語。「プライム・ローズ」は複雑な生い立ちを持つ少女戦士・エミヤが、圧政を強いる国に立ち向かう。露出度の高い衣装にも注目。
- 再録されている手塚マンガ
- 「ふしぎなメルモ」
- 「さらばアーリイ」
- 「プライム・ローズ」
この連載作にも注目!
蒼一郎「とらわれのエデン プライム・ローズ」
グロマン人が支配する帝国で、奴隷のような扱いを受けるククリット人を救うため、隻腕の女闘士・エミヤが奮闘。戦いの中で彼女は、自分の出自にまつわる秘密を知る。宿敵ピラールが今作では女性に。
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手塚治虫とギャグ
重苦しいテーマの作品にも、必ず笑いを織り込んだ手塚。ストーリーに関係なく現れるヒョウタンツギなどの不思議キャラも、物語の緊張をほぐす重要な役割を果たしている。現代日本にやってきた吸血鬼の父娘を描く「ドン・ドラキュラ」では、ドタバタ劇を通じて風刺色の濃い物語を展開。「すっぽん物語」は、サラリーマンが鼻に噛み付いたすっぽんに悩む不条理ギャグだ。本特集では多様な顔を持つ手塚のギャグに焦点を当てている。
- 再録されている手塚マンガ
- 「ドン・ドラキュラ」
- 「月と狼たち」
- 「すっぽん物語」
この連載作にも注目!
えのきづ「チョコっとドラキュラ」
吸血鬼の少女・チョコラが、成長して“チョコっと”大人に。青春を謳歌する彼女の日常を「琴浦さん」著者が描く。ドラキュラ伯爵はスマホに苦戦したり、男の娘を美少女と勘違いしたり、相変わらず。