役に入りすぎずナチュラルに
──ここからは、連載の第1回に登場いただいた、原作、そしてシリーズ構成・脚本を担当する西田征史さんからいただいた質問をお伺いしていきたいと思います。まず、それぞれのキャラクターに声をあてるにあたって役作りで一番意識した点をお聞きしたいのですが。
小原 第1話の収録のときに、リモートで初めて西田さんに対面させていただいて、その際に作りこんでないナチュラルな演技を見て、牡丹を任せようと思ったとおっしゃっていたんです。なのでお芝居では、牡丹らしさを残すために、役に入り込みすぎず、声はそこまで作り込まないで初々しさとのバランスを意識しました。13話を通して、純粋に言葉を受けてどう感じるかっていうのを大事にしていましたね。
──西田さんもインタビューの中で、小原さんの演技を「ナチュラルでエネルギッシュ」と表現されていたので、まさに狙い通りだったのかもしれませんね。
小原 そういうふうに思っていただけたのならうれしいです。
中井 恭平を演じるにあたっては、邪魔しない感じの存在感というか、ふわっといるなっていう人でいたいなという意識はありました。最終的に恭平のツッコミで終わるみたいなこともあるんですけど、それもツッコミで笑わすというよりは、このセンテンスはこれで終わりですっていう感じを目指しました。好感度もさして高くないけど、嫌われもしないみたいな見え方になればいいなって。
前野 隆之助は極力感情を出さないキャラクターで、1話のときから最終話までずっと淡々と理知的な演技に徹してほしいというオーダーでした。チームの絆だったり輪だったりというものに、隆之助も溶け込みつつあるみたいなシーンが中盤以降増えてきても、なんとか耐えていつものように淡々とやってくださいと、スタッフさんからの強いご要望がありましたので、そこは終始意識していました。
──ありがとうございます。もう1問、演じていて難しかったところはどこでしょうか?
前野 僕はやっぱり、チームに溶け込みそうな隆之助の感情を抑えるのがすごく難しかったですね。あとは説明セリフが多かったんで、そこの言い回しとかも難しかったです。淡々と読むのと棒読みって違いますし、立てるところは立てつつ抑えるところは抑えつつ、しかもちゃんと限られた尺の中で言わなくてはいけないっていう。
小原 牡丹は隆之助さんとはまた違った部分で、やりすぎてはいけなかったところです。全力で未知の世界を楽しんで、全力で悲しんで、すべてにおいて全力なんだけど、あまりお芝居に入り込み過ぎてはダメっていう。そのバランスが難しかったですね。ただ、後半は牡丹の成長もあって、一人前になってきてからは、そういうディレクションはなくなったので、より演技に入りこみやすく、バランスもあまり考えずに挑めたんですけど。
前野 あとは、皆さんそうだと思うんですけど、プレスコで動きとかがまだ鮮明にわからない状態で収録させていただいてたので、そういうテクニカルな難しさは皆さん感じていたんじゃないかなと思いますね。
──アクションシーンも多い作品なので、会話劇よりもさらに難しさはありそうですね。
中井 恭平であれば、冷静沈着というよりはむしろ「えっ!」とか「おっ!」とか、1つのことに対してすぐ驚く人なので、すごく自由なような、ものすごく不自由のようなって感覚はずっと感じながら演技していました。技術面以外だと、恭平がどれぐらいプロフェッショナルなんだろう?というのは考えながらやっていましたね。現場の状況を描写するにしても、仕事だと割り切って淡々としているのか、それとも「うわーひどい」とか、「ゆるせない」とか、感情が出るのか、その匙加減は難しく感じました。でもそれ以外は、本当にいい雰囲気の中で皆さんがやってらっしゃることに対して、反応を出していけばよい環境だったので、あまり悩みはなかったですね。
SFにもなれば人情話にも、話のバリエーションに注目
──最後に今後の見どころを教えていただけますか?
小原 まだ1、2話の段階では全員の距離が縮まりきってないので、牡丹が加わることで、このチームがどう変化していくのか見ていただきたいです。もちろんアクションも注目してほしいんですけど、細かい感情の変化とか、心の成長も見守っていただけたらより楽しんでいただけるんじゃないかなって思います。
──第3話は、まさにクルマと隆之助の関係を牡丹が変えていくお話なので楽しみです。
中井 1、2話はいわゆる「テスラ」っていうワードから一番ダイレクトに想像しやすい展開で、聞き覚えのあるような都市伝説じみた話も出てきますよね。今後も、もちろんテスラの欠片にまつわるお話なんですけど、縦軸がしっかりありつつもSFにもなれば人情話にもなるという話のバリエーションにも注目していただきたいですね。
前野 CIAや小さな家の絡みも徐々に増えていきますし、3つの組織が今後どういうふうに入り混じっていくのかが、「テスラノート」の1つの面白さでもあると思うので、各勢力の動きに注視していただけたら、面白い楽しみ方ができるのかなと思います。
- 小原好美(コハラコノミ)
- 6月28日生まれ、神奈川県出身。大沢事務所所属。主な出演作に「スター☆トゥインクルプリキュア」(羽衣ララ / キュアミルキー役)、「ドメスティックな彼女」(葦原美雨役)、「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」(藤原千花役)、「まちカドまぞく」(吉田優子役)、「無職転生~異世界行ったら本気だす~」(ロキシー・ミグルディア役)など。
- 前野智昭(マエノトモアキ)
- 5月26日生まれ、茨城県下妻市出身。アーツビジョン所属。主な出演作にTVアニメ「図書館戦争」(堂上篤役)、「暁のヨナ」(ハク役)、「はたらく細胞」(白血球<好中球>役)、「Dr.STONE」(金狼役)、「うたの☆プリンスさまっ♪」シリーズ(カミュ役)など。
- 中井和哉(ナカイカズヤ)
- 11月25日生まれ、兵庫県出身。青二プロダクション所属。主な出演作「ONE PIECE」(ロロノア・ゾロ役)、「銀魂」(土方十四郎役)、「血界戦線」(ザップ・レンフロ役)、「炎炎ノ消防隊」(秋樽桜備役)、「出会って5秒でバトル」(霧崎円役)など。