コミックナタリー Power Push - 「テラフォーマーズ リベンジ」
バトルやギャグ描写から生まれる“生き様感”
映画は同じクラスメイトの作品という気持ちで観ていた(大森)
──「リベンジ」はお話としては、燈たちが中国班やテラフォーマーから電波塔を奪取できるかどうか、というあたりまでになるかと思います。ここを最終回に定めた理由は?
福田 平たく言うと、そのあとの話まで入れるとまたいろんな要素があるので描ききれないんですよね。でも「電波塔を奪還すればなんとかなる」という、あのあたりで終わればちょっと解決したかなという雰囲気になるので、まとめやすかったんです。
──そのあたりは脚本家の方たちと相談されて?
大森 ええ。監督もシリーズ構成の荒川(稔久)さんたちも入れたメンバーで、どこまでの話にするかっていうのは随分長いこと議論しました。実は僕は、電波塔よりもうちょっと先の話までアニメにしたほうがいいのかなって思っていたんですけど、「この電波塔の話に集中したほうが、お客さんにとってはわかりやすくないですか」っていう意見が出て、そうなりましたね。
福田 ホントはね、火星から帰ってくるとこまでやりたかったんですけど、随分長くなりますから(笑)。
大森 電波塔での戦いは、火星に行った人それぞれの役割のがんばりを見せられるのもいいですし。非戦闘員も戦闘員と同じような精神で戦っているのが出てますよね。あそこらへんは、マンガ読んでるときもちょっとだけ泣いちゃったんですよ。
──2期の終盤にあたるシーンは、泣ける話が多いですよね。では「リベンジ」というタイトルにはキャラクターが自身の置かれた境遇や、ゴキブリにリベンジするという意味合いが込められているのでしょうか。
大森 そこは含みとして「いろいろございます」と言っておきます(笑)。人それぞれの「リベンジ」があってもいいんじゃないかと。
──(笑)。ちなみに2期がスタートする時期に「テラフォーマーズ」は、映画やドラマの配信、遊技機と、すごく多角的にメディアミックス展開がされていましたが、そういったほかの媒体から刺激を受けることはありましたか?
大森 メディアミックスがホントに広くてデカイですよね。「うわあ! なんかいろいろ展開してる! やべえな、でけえな!」ってちょっとビビリ気味でした。映画はアニメでもやった話だっただけに、若干の身内意識というか、同じクラスメイトの作品みたいな気持ちで観ている節がありましたね。「お客さんは喜んでくれるのかな」ってドキドキしながら。でも自分としては観終わったあと、「あ、俺なんかけっこう楽しく観れた」ってホッとしたんですよ。今、けっこう正直なことを言いましたよ(笑)。
福田 でも露出が増えてくれることに対しての感謝もあるし、スタッフ内でも「あっちには負けねえぜ」みたいな、ライバル意識とか対抗意識とかむき出しにしてやってくれる人が多いですね。
大森 あ、そうなんですか。「メディアが違うからそっちはそっちで」じゃないんだ。それはいいですね。
2期ではキャラクターの“生き様感”を見せたかった(福田)
──おふたりが考える「テラフォーマーズ」の魅力って、どういう部分だと思われますか?
大森 最初に読んだとき、ものすごい勢いがあって面白いなと思いましたね。主人公が1人でずっと動いていくのではなくて、燈とミッシェルの話があって、慶次の話、次はマルコスの話っていうふうに、海外ドラマみたいに展開がコロコロ変わるじゃないですか。その中で次の話を見ちゃうとか、次の巻を単行本で買っちゃう原因はなんなんだろうなって思っていたんですよ。そしたらある人に「それは感情軸に1本線が通ってるからだ」って言われて。味方サイドのキャラクターたちに共通点があるというか、感情軸はブレてなくて、ずーっと1本通ってるんですよ。
──なるほど。原作はアニメ化を企画する前から読まれていたんですか?
大森 前ですね。だからマンガ読みながら、「群像劇だし、アニメになったときに頼まれる監督はさぞや大変に間違いないな」と思ってました(笑)。
──その後携わることは知らずに(笑)。福田さんはいかがですか?
福田 そこは言いたいことを事前にちょっとメモしてきたんですけど……(紙を取り出す)。
大森 ちゃんとしてるな、福田さん(笑)。俺も見習おう。
福田 いえいえ。これで大したこと言わないからね(笑)。えーとね、この作品自体は、「火星に解き放ったゴキブリたちが人型になってる」っていう驚きから入ってはいるんですけど、2期は驚きの部分より、「過酷な環境に叩きこまれた宇宙船の乗組員たちが、そこでどう悪あがきしながらがんばってるのか?」っていうところが大事だと思っているんです。そしてそこからにじみ出てくる感情の部分、泣かせるとこだったりちょっとした笑いだったりとか、それが魅力だなと。さっきのギャグの話なんかもそうですけど、いろんなバトル、ギャグみたいなのを合わせた“生き様感”を見せたいなと。だから今回はそれをうまくまとめるための要素として、音楽のほうにちょっと変わったお願いをしてるんですよ。
──というのは?
大森 半分アテ書きみたいな感じの取り組みをしてるんですよね。例えば映画だったらコンテが上がって、それをもとに作曲してもらうみたいなこともあるんですけど、普通テレビのシリーズっていうのはスケジュール的にそうはいかないんですね。ある程度コンテが上がったときのことを想定して作る。
──大まかなイメージだけで音楽を作るんですね。
大森 だけど今回は福田さんが考えている音楽のイメージをもとに、音響監督の山口(貴之)さんと事前に2回ぐらい細かく話して、全部コンテなどを計算ずくで作りました。そのうえ山口さんが起承転結とかに対してすごく細かい劇伴メニューを出されたんですよ。「こういうふうにお願いしたいんです」って。僕もこの世界で20年近くやってますけど、あんな細かいメニューは、テレビシリーズで初めて見ましたね。そして劇伴って普通は1曲が2分ぐらいなんですけど、今回は平均で4分ぐらいあって、一番長いのは7分半ぐらいかな?
──細かい指定があるうえ、壮大な曲で。
大森 しかもその細かいメニューは僕も、劇伴作家の和田(貴史)さんに曲を頼む打ち合わせの当日に初めて見ましたからね。事前に見せたら「どうしよう、ああしよう」ってなるじゃないですか。だから当日に一発勝負で持ってったんだと思います。「えー! マジかよ?」とか思いながら制作会社の人を見ると、ちょっと顔色変わってましたけど(苦笑)、和田さんは見事に仕上げてくれましたね。
福田 いやあ、いい曲ですよね。だから今回はホントに音響監督の山口さんや、音楽の和田さんの力なくしては……っていう感じです。
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アニメ「テラフォーマーズ リベンジ」
⻄暦2620年。火星生まれの致死率100%の病原体、エイリアンエンジンウィルスのワクチン製造のため、異常な進化を遂げた人間大のゴキブリ、通称「テラフォーマー」のサンプルを確保するべく、膝丸燈らは火星へと降り立った。
想定外のアクシデント、テラフォーマー達の猛攻を受けながらも何とか生き延びた燈達であったが、任務遂行の裏で人類同士の争いが勃発する……。火星を舞台にした極限のサバイバル、その第2ラウンドが今始まる!
放送局
TOKYO MX、ABC朝日放送(ABC)、テレビ愛知(TVA)、BS11、テレ朝チャンネル1
キャスト
- 膝丸燈:細谷佳正
- 小町小吉:木内秀信
- ミッシェル・K・デイヴス:伊藤静
- マルコス・エリングラッド・ガルシア:石川界人
- アレックス・カンドリ・スチュワート:KENN
- 鬼塚慶次:小野大輔
- 三条加奈子:たかはし智秋
- 柳瀬川八恵子:豊崎愛生
- シルヴェスター・アシモフ:石塚運昇
- イワン・ペレペルキナ:赤羽根健治
- リュウ・イーウ:小村哲生
- ジョセフ:石田彰
- 蛭間一郎:杉田智和
- Blu-ray Disc「テラフォーマーズ リベンジ Vol.1」 / 2016年6月22日発売(以降毎月リリース、全7巻) [Blu-ray Disc+CD] 6912円 / ワーナー・ブラザースホームエンターテイメント / 1000603669
- Amazon.co.jp限定 初回仕様版
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イベントチケット優先購入抽選申込券(出演:細谷佳正、伊藤静、木内秀信、KENN、たかはし智秋ほか)、オリジナルミニドラマCD VOL.1「オーバー ザ トップ6」ほか豪華特典付き。
福田道生(フクダミチオ)
アニメーション監督。代表監督作品は、テレビアニメ「テラフォーマーズ リベンジ」「ぬらりひょんの孫~千年魔京~」「Hybird Child」「迷い猫オーバーラン」(第5話)など。
大森啓幸(オオモリヒロユキ)
アニメプロデューサー。2012年春よりワーナーブラザース ジャパン合同会社に所属する。2016年6月現在担当している作品は、テレビアニメ「テラフォーマーズ リベンジ」、テレビアニメ「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない」ほか。