アニメ「京都寺町三条のホームズ」富田美憂&石川界人インタビュー|「ああ、京都行きたいな」と思える“人が死なない”ミステリー

自分と清貴は、正反対のタイプ(石川)

──ご自身が演じているキャラクターについて、共通点あるいは相違点はありますか? お話を伺う限り、中学時代から美術館通いをされている富田さんは、葵のような作品の価値を見抜く「良い目」をお持ちなのではと思うのですが……。

富田 うーん……それは置いといて、葵とは出身地が同じですね(笑)。

石川 えっ、そこ?(笑)

富田美憂

富田 私も埼玉出身なので。アニメの第1話で葵は埼玉から京都に引っ越してくるんですけど、アフレコではそこに親近感を覚えたというか、気持ちを乗せやすかったっていうのはあります。

──内面的には?

富田 どうでしょう……。私に、葵のような純粋さはあるのかな?(笑)

石川 あってくれー。あってほしい年齢だ。

富田 葵は高校2年生なので私とほぼ同年代ですし、いろんなものに興味を持ったり刺激を受けたりして成長していく年頃だと思うので、そういう点は似てるかもしれないですね。

──石川さん演じる清貴はいかがでしょう。

石川 相違点はたくさんあります。さっきも言った通り僕は古美術に興味がないけど、清貴は古美術にも歴史にも精通している。あと、清貴は冷静沈着ですごく大人な男性なんですけど、僕は割と激情型で、子供っぽいところがたくさんあるし、服装にしても彼はキレイめですけど、僕はどっちかっていうとカジュアルなほうが好き……だから清貴と僕は、例えば学校で同じクラスになってもまず友達にはならないタイプ。ただ、共通点があるとすれば、過去に似たような失恋経験をしているところですかね。

──石川さんの失恋経験のこと、詳しくお聞かせいただいてもいいですか。

石川界人

石川 高校生の頃、片思いをしていた女の子がいて。その子と頻繁に連絡を取り合うようになり、「よっしゃ! あともうちょっとだ」って思っていたときに、友達に先を越されちゃったんです。その友達は、僕がその子のこと好きだったの知ってたんですけど。

富田 えー、ひどい。

──清貴も実は、恋愛で傷ついた過去を持っているんですよね。石川さんはその経験があることで、清貴の気持ちに共感できる部分もあるんでしょうか。

石川 いや、経験としては似ているんですけど、そのあとの感情の処理の仕方は全然違うんです。僕はダメならダメで「ああ、そうなんだ」とサクッと切り替えちゃったんですけど、清貴はそれを引きずっていて。だからやっぱり、自分とはあまり似てないですね(笑)。

──葵は清貴のことを「いけずな京男子」と評していますが、富田さんから見て石川さんはいけずですか?

「京都寺町三条のホームズ」の場面カット。

富田 えっ!? いや、とても優しい方なので、あまり意地悪なところはないのかなって思ってるんですけど……。

──今、石川さんは隣でものすごく意地悪な顔をしてますよ。

富田 前言撤回します!(笑) あ、そういえば次回予告で毎回「ホームズさん(清貴)はいけずですね」っていう決めゼリフを葵が言うんですけど、1回目の予告を録ったときに石川さんがアドリブで「いけずなんやで」って入れてきて、そこはホームズさんぽいなって思いました。

石川 そうだったね。面白いかなって思って。ええと、なんでしたっけ? 僕が富田ちゃんを「いけずだな」って思うところですか?

富田 えっ、なんで? そんな質問じゃなかったですよね?(笑)

──せっかくなので、続けてください(笑)。

石川 いや、でも……いけずではないかなあ。誠実な子だなって思います。

富田 (小声で)よしっ!

「京都寺町三条のホームズ」の場面カット。

石川 お芝居に対してもそうですけど、仕事そのものに対して非常に真面目で、人当たりもすごく柔らかいですし。かといってフワフワしてるわけでもなく、芯の通ってる感じがあって年下とは思えない。そういう意味では、客観的に見て葵ちゃんに近いですね。

富田 恐縮です。

──石川さんは、ご自身の中にいけずな要素はあると思います?

石川 まったくないと思います。僕がイメージするいけずな人って、普段は優しく接していながら、要所でからかうみたいな感じなんです。でも僕は、普段からいじり倒してたまに優しくなるっていう、まったく逆のタイプなので。小学生男子のメンタリティなんです。好きな子に対してちょっかいを出し続ける感じ。

富田 いけずな仕草は、ホームズさんがやるからカッコいいんじゃないですかね。

石川 そうだねえ。「ただしイケメンに限る」ってやつですよ。だから僕のはただの意地悪ですね。(隣で頷いている富田に)「ふんふん」じゃないよ!(笑)

──富田さん個人としては、いけずな京男子に惹かれますか?

富田 うーん、素敵だとは思うんですけど、私はどちらかというと裏表のないほうが……。

石川 おー。今、けっこうレアな情報が出ましたね。「裏表のない男性が好みです」と、僕は拡大解釈しましたけど(笑)。

普通の女子高生を演じるため、クセを取り払った(富田)

──先ほど石川さんは、清貴とご自身に接点がないとおっしゃいましたが、それは演技するうえでネックにはならないんですか?

石川 いや、お手本というか、清貴にすごく近い方がいるので。それは遊佐(浩二)さんなんですけど。

富田 ああー!

円生

石川 遊佐さんご自身も京都出身で、この作品では円生という、物語に深く関わってくる天才贋作師を演じてらっしゃるんです。僕は19歳のときに初めて遊佐さんと共演して、それ以来公私共に仲良くさせていただいているんですけど、遊佐さんは普段からすごく優しいんです。でも、たまに僕のことをいじってくれるときがあって、それがグッとくるというか、男なのにうれしく感じてしまうんです(笑)。まさにいけずな京男そのものなので、それをイメージするとすごくやりやすいです。

──確かにイメージぴったりですね。演技についてもう少し聞かせてください。清貴を演じるうえで気をつけていることはありますか?

石川 基本的には、“嘘くさく”と“滑舌よく”というのを気にしてますね。嘘くさくっていうのは、清貴は普段は標準語でしゃべるんですけど、感情が昂ぶったりすると京都弁が出てくるんです。つまり京都弁のときは本音をぶつけていて、標準語のときは自分を偽っているところがあるんです。だから標準語のときはなるべく素を見せないようにして。極端に言うと、共演者の方に「清貴との会話シーンはやりにくいな」って思われるようなお芝居を目指しています。

──滑舌に関しては?

石川 原作者の望月麻衣先生が、清貴役のオーディションに際して「滑舌が良い方がいい」とオーダーを出されたそうなんです。もともと僕は滑舌に自信がないので、そこは気をつけています。

──実際、骨董品の名前などは馴染みもありませんし、読み方も難しいですよね。

「京都寺町三条のホームズ」の場面カット。

石川 めっちゃ調べます。作品に重要度をつけたり、力の入れ方を変えたりしているわけでは決してないんですけど、ほかの作品の台本だと1話あたり1時間から1時間半でチェックが終わるのが、「ホームズ」は3時間くらいかかります。おっしゃる通り骨董品の読み方がわからないし、アクセントの位置がわからないし、京都弁のアクセントもチェックしなきゃいけない。あと、長ゼリフをどこで切るかっていうのも難しくて。

──切る?

石川 清貴のセリフには、推理のポイントとなるワードがちりばめられているんです。そのワードをあらかじめ引き立てておく必要があるというか。小説やマンガと違って、アニメは基本的に音で情報を伝えるので、そのワードがきちんと耳に残るようなセリフの区切り方を毎回考えています。

──富田さんは葵を演じるうえでどんなことを意識していますか?

富田 私はオーディションで合格したときから「なんで自分が選ばれたんだろう?」って考えていて、1つは葵との年齢的な近さがあるからだと思ったんです。実際、オーディションを受けたときは私もまだ高校生でしたし、それによって生まれるリアルさみたいなものもあるのかなって。ただ、葵はいわゆる普通の女子高生なんですけど、私がこれまで演じてきた女子高生のキャラクターって、かなりクセがあるというか……。

──「おしえて!ギャル子ちゃん」のオタ子や、「ガヴリールドロップアウト」のガヴリールですもんね。

富田 そう。特殊な子ばっかりで、普通の女子高生役は今回が初めてだったんです。なので、今までの自分の出演作の音声を片っ端から聴いて、例えば語尾とかに出る自分の演技のクセや染みついてしまったものを把握したうえで、それを全部取っ払ってストレートに、等身大で演じてみようと。

──演じすぎない、みたいな話ですか?

「京都寺町三条のホームズ」の場面カット。

富田 そうですね。素の自分もあえて出しつつ。そこに至るまでは葛藤もあって、役作りに関しては正直かなり悩みました。あと、これは音響監督さんからも言われていたことなんですけど、視聴者の方は葵の目線でいろんな出来事を体験するので、葵は作中のキャラクターでありながら、視聴者の代表でもあるんですね。それを、お芝居するときは常に心がけてます。

石川 今の、富田ちゃんが演技のクセを削ぎ落としてストレートに演じているっていう話を聞いて「確かに!」って思いました。

富田 ホントですか? よかったー!

石川 要は、葵というキャラクターから「富田美憂ってこういう子なんだな」っていうのが垣間見える瞬間があるんですよ。台本の解釈や文言の彩り方を通して。だから、自分で決めた演技のプランを実行できてるし、効果も上げているのがすごい。僕自身も富田ちゃんの演技に引っ張られることもあるし、牽引力のあるお芝居をする人なんだなって。

──「引っ張られる」というのは、清貴のお芝居が変わるということですか?

石川 僕が想定していた芝居とは違ったものが出てくる。そういうときは「ありがとうございます!」ってなります。やっぱり現場でのやり取りを通して変化したり、新しく生まれたりする表現が一番よいものだと思うんです。「解釈やニュアンス次第でそういう引っ張り方もできるのか」「引っ張られたときに自分はこうなるのか」っていう経験をさせてもらっているので、すごく勉強になっています。

富田 いやいやいや、こちらこそ毎回勉強させてもらっています!

アニメ「京都寺町三条のホームズ」
放送情報

テレビ東京:
2018年7月9日(月)より毎週月曜26:05~
※初回5分押し 26:10~
テレビ大阪:
2018年7月9日(月)より毎週月曜26:05~
※初回5分押し26:10~
テレビ愛知:
2018年7月9日(月)より毎週月曜27:05~
※初回5分押し27:10~
BSジャパン:
2018年7月13日(金)より毎週金曜24:59~
AT-X:
2018年7月11日(水)より毎週水曜22:00~

スタッフ

原作:望月麻衣・秋月壱葉「京都寺町三条のホームズ」(双葉社・月刊アクション連載)
監督:佐々木勅嘉
シリーズ構成:山下憲一
キャラクターデザイン・総作画監督:伊藤陽祐
アニメーション制作:アニメーションスタジオ・セブン

キャスト

真城葵:富田美憂
家頭清貴:石川界人
梶原秋人:木村良平
円生:遊佐浩二
滝山利休:小林沙苗
家頭誠司:小山力也
家頭武史:上田燿司
宮下香織:木下鈴奈
宮下佐織:堀江由衣

秋月壱葉・望月麻衣「京都寺町三条のホームズ①」
発売中 / 双葉社
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望月麻衣「京都寺町三条のホームズ①」
発売中 / 双葉社
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文庫 680円

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Kindle版 551円

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富田美憂(トミタミユ)
富田美憂
1999年11月15日生まれ、埼玉県出身。2014年、中学3年生のときに「声優アーティスト育成プログラム・セレクション」でグランプリを獲得し、声優の道へ。2015年、「干物妹!うまるちゃん」の土間タイヘイ(幼少期)役でデビュー。代表作に「アイカツスターズ!」の虹野ゆめ役、「ガヴリールドロップアウト」のガヴリール役、「メイドインアビス」のリコ役など。
石川界人(イシカワカイト)
石川界人
1993年10月13日生まれ、東京都出身。プロ・フィット声優養成所へ入り、2011年にラジオドラマ「AKIBA'S TRIP」で声優デビュー。2013年、「翠星のガルガンティア」で初の主役キャラ・レド役を演じる。そのほか、主な出演作に「ハイキュー!!」の影山飛雄役、「境界のRINNE」の六道りんね役など。