コミックナタリー Power Push - 「帝一の國」
古屋兎丸×木村了(赤場帝一役)×三津谷亮(榊原光明役)鼎談
謀略うずまく学園政権闘争劇、完結!ラスト飾るお祭りを語り合う
自然とマンガのキメ顔を演技に組み込んでいる(木村)
──役作りについて古屋先生からおふたりにアドバイスなさることもあったんでしょうか。
古屋 この2人はほっといても大丈夫だと思ってます。2人を見ると「あっ、本物がいる」と思うくらいですから。木村くんは僕がアドバイスをするでもなく、役者の本能で帝一の大事な部分を嗅ぎ分けて演じてくれるので。帝一のスネた顔とか、マンガ内のキメ顔をしっかり演技に組み込んでくれてるんですよ。
木村 言われてみると確かにそうですね。特別自分の中で意識しているというわけではないんですけど、自然とそういう表情になる。
古屋 三津谷くんも初めてお会いしたときに、ずっとお菓子の話でキャッキャしているのを見て「あっ、この人は光明だ!」って思ったから。
三津谷 (笑)僕は光明と共通点が多くて、お姉ちゃんがいるし、丸文字なんですよね。舞台のパンフレットに寄せ書きをしたときは「役に合わせて丸文字で書いたんでしょ」って言われたくらいで。あっ、これです。
古屋 ホントだ、これは光明だわ……。
三津谷 あとかわいいものが好きっていうのも同じで。僕は一輪車のクラブチームに入っていたんですけど、僕1人だけが男で、あとは全員女子。男の中で育ってこなかったから、光明の気持ちがすごくわかるんです。
木村 ホントに光明を演じるために生まれてきたって感じだよね。
──木村さんと三津谷さんは3度にわたってコンビを組んでみて、お会いした当初からお互いの印象が変わったりしましたか。
木村 僕は一貫して三津谷のことを女優として扱っていますよ。
三津谷 なんか僕がめんどくさい人だと思われちゃいそうだから、やめてよー(笑)。
木村 大切にしてるってことだよ。乱暴には扱えない。
三津谷 ホント? それはうれしいですけど。
木村 じゃないと泣いちゃうから。
三津谷 もう(笑)。でもお互いすごく信頼しあってるよね。今回の舞台ではこれまでのエピソードを、走馬灯のように振り返るシーンがあるんですけど、演じる上で嘘をつく必要がないんですよね。稽古も含めて自然とこれまでの光景が蘇ってくる。
木村 メンバーが変わらず、このメンツでずっとやってこれたというのが大きいよね。
これまでの作品の中でもっとも贅沢にページを使った(古屋)
──古屋先生から見た、最終章の見どころはどのあたりでしょう。
古屋 うーん、やっぱり光明が帝一の元に戻ってくるまでの一連の流れですかね。原作でも、帝一と光明が抱き合うまでのシーンは、僕が今まで描いたマンガの中で一番贅沢にページを使ったんですよ。「帝一の國」は1話45ページで、普段のプロットは原稿用紙5、6枚なんですが、あの回は原稿用紙2枚だけだったんです。それはつまり原稿用紙2枚の内容を45枚に伸ばすぐらい、大ゴマがたくさんあったってことなんですね。アップ、アップ、見開き、アップみたいな感じで。だから自分の中では重要なポイントだと思っています。
三津谷 なるほど。僕は最終章にして初めて帝一が自分の近くにいないっていう違和感を、自分の中でしっかり解釈して落とし込んでいかなきゃと思っています。稽古場でもいつも隣りにいたのに、それがいなくなるとまるで違う作品をやっているようなんですが、これまでと違う感覚っていうのが、まだ自分の中でモノにしきれていない気がしていて。
木村 これは演出の(小林)顕作さんも、見学に来ているスタッフさんもおっしゃっていたんですが、最終章が一番面白くなっていると思います。最後だからこそ全部出しきるつもりでやっていきますし、ライブビューイングもあるので、地方の皆さまにもぜひ観てほしいですね。
古屋 原作も1巻から14巻まで奇跡的に物語が破綻することなく、ずっと同じテンションで描き上げることができました。これだけキャラが多いと、うまく動かせないキャラも出てくるんですけど、「帝一」ではキャラを自分なりに活かしきれたなと思っています。最後まで読んだら14巻は感動すること請け合いだと思います、と一応自信をもって言っておきます。
木村 マンガがめちゃくちゃ面白かったから、僕たちもここまやってこれました。これは本当に僕、大好きなマンガですね。ぜひみなさんに読んでほしいです。
- 古屋兎丸「帝一の國」 / 発売中 / 集英社
- 1巻 / 473円
- 13巻 / 514円
時は昭和──。数多くの政治家や官僚を生み出す超名門校・海帝高校で、赤場帝一はその頂点である生徒会長を目指していた。奮励の甲斐あり、次期生徒会長候補者の1人に選ばれた帝一は、虚偽を交えて生徒を先導するライバル・東郷菊馬の陣営に対し腹心の榊原光明を潜入させるも、捕えられ逆に洗脳されてしまう。光明の変わり果てた姿に責任を感じ、死すら覚悟した帝一は一大決心をする。そして運命の生徒会長選挙当日を迎え……。ジャンプスクエア連載の学園政権闘争劇、最終巻の14巻は5月2日発売。
- 舞台「【最終章】學蘭歌劇『帝一の國』-血戦のラストダンス-」2016年3月17日(木)~27日(日)AiiA 2.5 Theater Tokyo
- 「【最終章】學蘭歌劇『帝一の國』-血戦のラストダンス-」
キャスト
木村了、入江甚儀、三津谷亮、吉川純広、谷戸亮太、細貝圭、冨森ジャスティン、市川知宏、佐藤永典、佐藤流司、原嶋元久、瀬戸祐介、大河元気(映像出演)、井上小百合(乃木坂46)、樋口日奈(乃木坂46)、平沼紀久、今奈良孝行、竹内寿、中谷竜、ぎたろー、大堀こういち
古屋兎丸(フルヤウサマル)
1994年にガロ(青林堂)より「Palepoli」でデビュー。以後、精力的に作品の発表を続け、緻密な画力と卓越した発想力、多彩な画風で、ヒット作をコンスタントに発表する。主な著書に舞台化、映画化を果たした「ライチ☆光クラブ」をはじめ、「インノサン少年十字軍」「幻覚ピカソ」「人間失格」など。現在ジャンプSQ.(集英社)にて「帝一の國」、ゴーゴーバンチ(新潮社)にて「女子高生に殺されたい」をそれぞれ連載中。「帝一の國」は3度にわたり舞台化されたほか、実写映画化されることも決定している。
木村了(キムラリョウ)
1988年9月23日生まれ、東京都出身。2002年、ジュノンスーパーボーイコンテスト特別賞の受賞をきっかけにデビューを果たす。これまでの出演作にドラマ「ウォーターボーイズ2」「のだめカンタービレ」や、映画「ヒートアイランド」、舞台「ライチ光クラブ」「學蘭歌劇『帝一の國』」シリーズなど。
三津谷亮(ミツヤリョウ)
1988年2月11日生まれ、青森県出身。俳優集団D-BOYSメンバー。ミュージカル「テニスの王子様」2ndシーズン・不二役で人気を博し、以降、多数の舞台で活躍。近年の出演作品に、「SHOW BY ROCK!! MUSICAL」「幽悲伝」、てがみ座第11回公演「地を渡る舟」など。2016年5月から6月にかけて、キャラメルボックス2016公演「また逢おうと竜馬は言った」で主演を務める。特技の一輪車では2000年、2004年の世界大会で優勝した。