高須クリニックの院長として知られる高須克弥のインタビュー本「ダーリンは71歳・高須帝国より愛をこめて」が発売された。同書は高須の彼女である西原理恵子が、高須との日々を綴った“誰得エッセイマンガ”「ダーリンは71歳」のスピンオフ本。「尿漏れ」「ツイ廃老人」「やわらかメンマ」……と、描かれ放題だった高須が、反論しながらも西原との関係をノロケている1冊だ。
コミックナタリーでは同書の発売を記念し、高須と西原2人にインタビューを実施。2人の普段の様子や本の内容も垣間見える賑やかな対談が行われた。最終ページにはダーリンとハニー、それぞれの視点から見る「ダーリンは71歳」と「高須帝国より愛をこめて」の作品紹介も用意しているので、あわせてチェックしてほしい。
取材・文 / 松本真一 インタビュー撮影 / 佐藤類
高須克弥×西原理恵子対談
これが男女逆だったら訴えられますよ(高須)
──高須さんは昔、マンガ家になりたかったという話を伺ったことがあるんですが、その夢は叶わなかったものの、今や「ダーリンは70歳」から始まったシリーズの登場人物です。マンガに描かれる側になってみての感想はいかがですか?
高須克弥 「と学会」ってありますよね。
──世の中のトンデモ物件を楽しむ集まりですね。
高須 息子が「と学会」に入ったから「僕も入りたい」って言ったことあるんですけど、「それはバードウォッチングに鳥が入会したいっていうものだ。ウェルカムと言うわけにはいかない」って断られたんですよ。
──高須さんはウォッチされる側だと。
高須 だからやっぱり僕は観察される側のほうがいい配役なのかなと。
西原理恵子 この人は観察してもそれを要約してわかりやすいように表現できないから、マンガ家は難しいでしょうね(笑)。
高須 できないね。才能がない。
西原 才能っていうか、そういう脳の病気だよ(笑)。理数系の人に取扱説明書を作らせたら機械が動く原理からすべて説明を書いちゃって、すごく長くなる人っているんですけど、それと同じですよね。この人にある国の歴史の話を聞いたら、ビッグバンまで遡って説明し始める。そうじゃないと不正確だと思っちゃうみたいで。
──要点だけをかいつまむというのが出来ないんですね(笑)。
高須 数学的に考えて組み立てていって、最後に頂上の話をしたいわけですよ。でも西原マンガはなんとなく雰囲気で描いて、最後も感情で決めて。西原マンガは全部砂上の楼閣ですよ。
西原 うるさいなあ……。
高須 いつもこうなんですよね。僕が一生懸命しゃべってると、最後は股間をグッと握って「やわチン野郎」って言われて終わる。
西原 掴むとびっくりして黙るんですよ(笑)。「やわらかいくせに偉そうなことを言ってるんじゃないよ」っていう。
高須 ひどいと思いません? 性的なことで黙らせようとするなんて、男性のマンガ家が女性に同じことやったらダメでしょう。「男だったら傷つかないだろう」と思ってること自体がおかしいんですよね。
──男女逆なら、セクハラで訴えられますね。
高須 訴えられますよ! 僕も訴えてやろうと思っても、「恥をかくのはお前だぜ」って言われるんです。
西原 マンガでも描いたね。私がベッドに入ってセクハラして、「助けを呼んでみろよ、恥をかくのはお前だぜ」って(笑)。
──脅し(笑)。
西原 でもこれはSMと一緒で、信頼関係あってのプレイなので。
高須 勝手に信頼関係とか言ってるけど、逃げようと思っても威嚇するもん。最近はもうこっちも学習してきて、いろいろ言っても無駄だってことで諦めてますけどね。苦界に身を落とした女みたいな感じ。
──もう汚れちゃったけど、そうやって生きていくしかないんだと。
西原 いまや私が退屈してると、彼のほうからパカっと股を開くようになりましたからね(笑)。
高須 (下を向いて)…………。
西原 恥ずかしがってる、恥ずかしがってる(笑)。あとは一緒に寝てて、起きたときにこの人が「朝ご飯食べない?」って言うから、そのたびに私がちんぽを揉んで、「違う違う、それは朝ご飯じゃないよ、食べられないよ」って彼がツッコむのがもうずっとお約束で(笑)。
──そういう2人だけの儀式というか、ルーティンワークがあるわけですね。
西原 「メガネメガネ……これメガネちゃうやんけ」みたいなお約束ですよね(笑)。やっぱりカップルってワンパターンになるじゃないですか。言葉もどんどん幼児化していって、もう人間の言葉をしゃべらなくなり始める。そういう2人だけの儀式と暗号が増え始めて。今かなりすごい状態になってますね。
「俺物語!!」を見て「あ、これでいいんだ」(西原)
──素晴らしいバカップルですね(笑)。
西原 バカップルです。でもこの「ダーリン」シリーズって、「俺物語!!」のパクリなんですよ。
──……すみません、どういうことですか?
西原 「俺物語!!」って「大和、好きだー!!」って言ってるだけの話ですよ? それなのに何百万部もパーンっていきましたからね。
──「だけ」ってことはないですけど(笑)。でも恋愛マンガによくある「交際までにさまざまな障害がある」っていう作品ではなく、カップルになってからのラブラブっぷりを描く話ではありますね。
西原 そう、だから「あ、これでいいんだ」って思って。ビルが爆発したり、外国人がマシンガンを撃ったりとかそういう派手なことやらなくても、何百万人というお客さんが待ってるんだなーと思って。
高須 「ダーリン」って「俺物語!!」のパクリなんだ?
西原 うん、パクリ。だいたい私はクリエイターじゃなくてアレンジャーなんですよね。パクリがすっごいうまくって……いや、うまいんじゃないな、うまくないからパクったことに気付かれないんですよ(笑)。デビューした頃は原律子のパクリのつもりだったけど気付いてもらえなかったし。
高須 原律子のマンガとは全然クオリティ違うもん。
西原 絵柄とか似てるじゃん。
高須 そうかなあ……。
──そういえば、高須さんはもともと西原さんのファンだったそうで。
高須 そう。
西原 私からしたら、ファンに手を出しちゃったってことですね、ふふ(笑)。芸人とかミュージシャンじゃなくてよかった(笑)。
──叩かれますからね(笑)。
高須 彼女のデビュー作の「ちくろ幼稚園」のときはね、本当に稚拙な絵を描いてるマンガ家だなって思ってたんです。
西原 (原律子の)写し描きまでしたのに……。
高須 あの頃の原律子のマンガってもっと毒が効いてましたもんね。でも西原の作品もだんだんと毒が効いてきて。「ぼくんち」はあれだけのために雑誌を買うくらい好きでしたから。
- 西原理恵子、高須克弥「ダーリンは71歳・高須帝国より愛をこめて」
- 発売中 / 小学館
-
書籍
1080円
熟年バカップル恋愛を赤裸々に描いた「ダーリンは71歳」のスピンオフ本です。「尿漏れ」「ツイ廃老人」「やわらかメンマ」などなど、描かれたい放題だった高須院長が、思いっきり反論に転じたロングインタビュー本なんです。彼女・西原理恵子さんの描き下ろしマンガも多数収録。感涙名作シリーズとなった「りえくまちゃんとぼく」の新作も!
- 西原理恵子「ダーリンは71歳」
- 発売中 / 小学館
- 西原理恵子「ダーリンは70歳」
- 発売中 / 小学館
- 高須克弥(タカスカツヤ)
- 1945年1月22日愛知県一色町生まれ。昭和大学医学部卒業。同大学院の医学研究科博士課程を修了し、1973年には医学博士を取得した。1976年に愛知県名古屋市にて高須クリニックを開設。同院は「YES、高須クリニック」のキャッチコピーでも知られる。1978年からは「11PM」などのテレビ番組にレギュラー出演し、一般的に美容整形を認知させた。また国際美容外科学会会長、日本美容外科学会会長にも就任している。
- 西原理恵子(サイバラリエコ)
- 1964年11月1日高知県高知市生まれ。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒。大学在学中よりアダルト雑誌でイラストを描きはじめ、1988年ヤングサンデー(小学館)にて「ちくろ幼稚園」でデビュー。破天荒な人生を叙情的に描くストーリーマンガの旗手としても知られ、「ぼくんち」で1997年第43回文藝春秋漫画賞を受賞。同作は2003年に観月ありさ主演で映画化もされた。2005年には「毎日かあさん(カニ母編)」で第8回文化庁メディア芸術祭漫画部門優秀賞、「毎日かあさん」「上京ものがたり」で第9回手塚治虫文化賞短編賞を受賞した。