Skypeを使って顔を合わさずに作った新アルバム
──そうやってリテイクを重ねて絵が決まるわけですね。パッケージがどうなるとか、デザインがどうなるというのはsupercellの別メンバー、宇佐(義大)さんなんかが担当するんでしょうか?
そうですね。僕らは「この曲に使う絵を用意してほしい」っていうことだけを聞いて描くので、どういう形になるかは知らないまま作業を進めます。まあ、1stアルバムと同じように画集を作るっていう話は聞いてたので、前回と同じような仕様になるかなとは思っていましたけど。
──じゃあ完成品は全然ご覧になってないんですか?
そうですね。途中のデータとかは確認してるんですけど、ちゃんとブックレットになった状態では今、初めて実物を見ました(笑)。
──そのへんの作業のやり取りはどういう流れで行うんですか?
Skypeでチャットしながらですね。まず「曲を作ったから、絵をお願いします」っていうふうにポーンと曲が投下されたら、絵を描く僕らが「じゃあこれに合う絵を用意してきます」って1週間くらいで描いて「どうっすかね?」って流れです。それで「うーん、ちょっと違うっすね」って言われたりして(笑)。だから話し合いとかディレクションというよりも、お互いに作品を投げ合うみたいな感じですね。
──なるほど。ryoさんは、supercellというのはユニット名じゃなくて、いろんな人とコラボレーションしていく現象みたいなものだっておっしゃってますけど、三輪さんもそう思われますか?
確かにサークル活動っていうより、作品のぶつけ合いをして、その中でどんなものが完成していくかが面白いっていうところがありますからね。逆に言うと「こういうものを作りましょう」みたいな指標はあんまりないんですよね。「画集を作ります」くらいの約束事しかないんです。
──「作品を投げ合う」というスピード感は、Skypeみたいなインターネットの技術があるからできることですね。
そうですね。Skypeがないと難しいと思います。supercellの場合、そもそもインターネットがなかったらつながってもいなかった人たちですしね。今回のアルバムに関しても、会ってミーティングしたことって1回もないですね。全部Skypeでやって、気がついたらみんなの絵が揃ってたみたいな感じです。
──リテイクもSkype上で指示されるんですか?
そうですね。たぶん会社みたいに同じ建物の中で仕事してるなら「ちょっとみんな会議室に集まって」みたいなことになると思うんですけども、みんなそれぞれバラバラの場所で仕事してるので。これがベストな形態だと思うんですよね。supercellでスタジオを構えるみたいなことをやっても、それぞれの仕事の足を引っ張るだけだから(笑)。
──言ってみればsupercellとしての活動場所はネット上にしかないっていうことですよね。ひと昔前の大手同人サークルとかなら規模が大きくなると事務所を構えるようなこともあったと思うんですけど、そういうのとは違う。
そうですね。たぶんニコ動とかで活動していらっしゃる人だと、SkypeとかTwitterでしかやりとりしない人って結構多いと思います。それが一番効果的というか、それでちゃんと作品ができあがってますしね。
supercellでは普段の仕事でやらないことをする
──supercellの活動が個人で行うイラストやマンガ家の活動にフィードバックされる部分はありますか?
結構あると思います。自分の普段やってる仕事とは心構えが別というか、supercellでは普段やってないことをやりたいというのが常にあるんです。ちょうどいい実験場というか、練習の場としてすごく活用させてもらってます。
──この活動の中で目指す目標なんかはありますか?
supercellの活動全体のことはryoさんが考えると思うんで、自分としてはryoさんが作った曲に最高のレスポンスができればいいなと思いますね。だからまあ目標っていったら、リテイクが出ない、一発OKで「これ、バッチリです」って言われるのが一番だと思いますね(笑)。自分としては「いま楽しいからいいか」ぐらいの気持ちでやっていたのが、気がついたら大きな活動になってしまってはいるんですけども、取り組む姿勢自体はあまり変わらないかなあと思います。面白がっていられればいいなという感じで。だから、Skypeで話してるとryoさんもたまに「ニコ動に投下しよっかなあ」とか「ミク使おっかなあ」みたいなことをぼそっぼそっと言うんですけど、「早くやったらいいのに」とか思うんですよね(笑)。
──やっぱりそれが「面白いから」ですか。
そうですね。なんか最近ニコ動もだいぶご無沙汰になってますし。まあでも、しばらく忙しそうなんで、なかなか難しいと思うんですけれども。それに、やるにしてもryoさん的には本気でやるんでしょうから。
──supercellの皆さんはみんな、やるならとことんやるんですね。そうするのが楽しいということですね。
少なくとも僕はそうですね。じゃなかったら、3年もやってないですよ(笑)。
CD収録曲
- 終わりへ向かう始まりの歌
- 君の知らない物語
- ヒーロー
- Perfect Day
- 復讐
- ロックンロールなんですの
- LOVE & ROLL
- Feel so good
- 星が瞬くこんな夜に
- うたかた花火
- 夜が明けるよ
- さよならメモリーズ
- 私へ
DVD収録内容
- 「君の知らない物語」×アニメ「化物語」コラボCM
- アニメ映画「センコロール」トレーラー映像
- PCゲーム「魔法使いの夜」トレーラー映像
- 「ヤングジャンプ」新増刊雑誌「アオハル」トレーラー映像
- 新曲「Perfect Day」Music Clip
初回生産限定特典
- supercellオリジナル全36Pフルカラーイラストブックレット封入
- supercellオリジナルデザインピック封入
- supercellオリジナルデザインケース仕様(illustrated by redjuice)
- 新曲ビデオクリップなどが収録されたDVD付き
初回限定盤イラストブックレット 参加イラストレーター
三輪士郎 / redjuice / huke / 宇木敦哉 / コザキユースケ / 優 / こやまひろかず / 粉冬ユキヒロ / なぎみそ / マクー / スガ
supercell(すーぱーせる)
コンポーザーのryoと複数のイラストレーター・デザイナーによって構成。VOCALOID「初音ミク」が歌唱するオリジナル曲をニコニコ動画にアップしたことから人気に火がつき、ニコニコ動画での楽曲の総再生回数は2000万回以上を記録する。2009年3月に発表したメジャー1stアルバム「supercell」のセールスは10万枚を超え、ゴールドディスクに認定された。続く1stシングル「君の知らない物語」もアニメ「化物語」の主題歌に起用され大ヒット。2011年3月には2年ぶりとなる2ndアルバム「Today Is A Beautiful Day」をリリース。
三輪士郎(みわしろう)
1978年生まれ、富山県富山市出身。1999年にウルトラジャンプ(集英社)掲載の「BLACK MIND」で商業誌デビューを果たす。現在は同誌に「DOGS / BULLETS & CARNAGE」を連載中。マンガ家としての活動のほか、イラストレーターとしても幅広いジャンルで活躍している。2008年からは音楽プロジェクトsupercellにイラストレーターとして参加。クールでスタイリッシュな絵柄で、マンガファンだけでなく音楽ファンからも人気を集めている。