10月より放送開始となるTVアニメ「SSSS.GRIDMAN」は、円谷プロダクションによる1993年の特撮ドラマ作品「電光超人グリッドマン」をベースに、新たに紡がれる少年少女のヒーロー物語だ。アニメーション制作は「キルラキル」「リトルウィッチアカデミア」などで知られるTRIGGERが担当。インターネットやコンピュータウイルスといった概念を先取りして話題になった「電光超人グリッドマン」を、当時の未来が現実となった2018年に蘇らせる。
コミックナタリーでは「SSSS.GRIDMAN」の監督を務めるTRIGGERの雨宮哲と、「ウルトラマンネクサス」や「ウルトラマンギンガ」など“平成ウルトラシリーズ”の脚本を多数手がけ、今作で雨宮と初タッグを組んだ長谷川圭一にインタビューを実施。本作が誕生した経緯や、「特撮ファンにもアニメファンにも楽しんでもらえる作品を」という本作に込めた思いについて語ってもらった。
取材・文 / 粕谷太智 撮影 / 柳川春香
最初は「ウルトラマン」をアニメ化したかった
──「電光超人グリッドマン」を元に新作アニメを作るという発表は、作品を知る人にとっては懐かしくもあり、「まさか今この作品を」という驚きもあったかと思います。そもそも監督は、2015年の「日本アニメ(ーター)見本市」で「電光超人グリッドマン」をアニメ化した「電光超人グリッドマン boys invent great hero」という短編を作られていましたよね。
雨宮哲 はい。最初は円谷プロさんに「『ウルトラマン』をアニメ化できませんか?」というお話をさせてもらったんです。そしたら「『ウルトラマン』はお貸しできないですが、ほかの作品で何かやりましょうか」とお返事をいただきまして。その頃ちょうど「日本アニメ(ーター)見本市」で、僕が1本担当することになったんですね。そこで円谷プロさんにご相談したら、「電光超人グリッドマン」か「アンドロメロス」なら許可がいただけるということだったので、じゃあ「グリッドマン」でお願いします、と。
──「電光超人グリッドマン boys invent great hero」を制作したことが、「SSSS.GRIDMAN」のアニメ化につながったということでしょうか。
雨宮 それが後押しにはなりましたね。「日本アニメ(ーター)見本市」は、個人のアニメーターが何をできるか、というコンセプトの企画なんですが、僕は監督である前にアニメーターなので、そのときは「描きたい」っていう気持ちが先行してたんですよ。「電光超人グリッドマン boys invent great hero」はストーリー云々よりも、グリッドマンのデザインが好きで、グリッドマンをただ描きたかっただけの企画なんです(笑)。なのであまりストーリーもなかったし、今度はもっとがっつり円谷プロさんと組んで作れたら面白いな、ということで動き出したのが「SSSS.GRIDMAN」ですね。
──なぜ「電光超人グリッドマン」を選ばれたんですか? 「アンドロメロス」はウルトラシリーズの世界観を継承した外伝的位置づけなので、そちらのほうが「ウルトラマン」には近い気がしますが。
雨宮 もちろん「アンドロメロス」にすることも考えましたが、「電光超人グリッドマン」はリアルタイムで観ていたから、こちらのほうが愛着があったのかな。でも小学生の頃に観た初回放送より、再放送で観たときのほうが印象が強かったですね。当時、ちょうど自分も主人公たちと同じ中学生だったんですよ。
──「電光超人グリッドマン」は怪獣とコンピュータワールド内で戦うという設定で、1993年の放送当時は一般に普及していなかったインターネットや、コンピュータウイルスといった概念を先取りした内容が斬新でしたよね。
雨宮 そういった部分も魅力的でしたが、個人的には怪獣が人間由来だというところが一番好きでしたね。怪獣を作り出す敵側のドラマも非常に面白いと思っていました。
──長谷川さんは「電光超人グリッドマン」をご覧になってましたか?
長谷川圭一 観てなかったんですよね。当時は美術関係の仕事をしていて、ちょうど撮影している東宝ビルに出入りしていたので、「現場が大変だ」とかそういう噂だけ聞いてました(笑)。
──では、雨宮監督はなぜ長谷川さんに脚本をお願いしようと?
雨宮 「SSSS.GRIDMAN」を作り始めたとき、おもちゃが出る予定もないのに、「第○話でパワーアップしますよ」とか「第○話で新しいメカが出ますよ」っていうのを先に決めたかったんですよ(笑)。なのでそういった玩具が先行するような子供向けの作品で書いたことがある人じゃないと、脚本をお願いするのは難しいなと思っていました。
──確かに特撮作品は、玩具の発売予定とストーリーの絡め方が難しいところでもあり、面白いところでもありますよね。それをアニメで再現しようとしたのは、やっぱり特撮好きとして?
雨宮 特撮好きだからというよりも、おもちゃが好きだからですね(笑)。そんな中で、円谷プロさんから「長谷川さんにお声がけできますよ」って言われて。僕は“平成ウルトラシリーズ”が好きで、長谷川さんは雲の上の人だと思っていたので、驚いたのを覚えています。特に長谷川さんが手がけたものだと「ウルトラマンギンガ」の1期の印象が強くて、怪獣が人間由来というところであったり、「ギンガ」のノスタルジックな感じとか、人間関係の閉塞感だったりが、非常に「電光超人グリッドマン」と近いなと思って。あとちょっと予算がなさそうなところも(笑)。
──「電光超人グリッドマン」は予算がなかったから、作りが簡単なコンピュータワールドで戦うことになったと噂されていますよね。
長谷川 予算がないとアイデアで勝負していかないといけなくなるんですよ。当時の「ウルトラマン」シリーズではお決まりだった防衛組織も出せないから、グリッドマンをアシストするのが子供たちになったり。「ウルトラマン」とは違うアイデアをいっぱい考えていった末に、そういう内容になっていったんだと思います。
雨宮 長谷川さんの「これしかないから、じゃあどうする?」っていう発想の転換の仕方が、僕は非常に好きなんですよ。それで「SSSS.GRIDMAN」もお願いできたらなと思って、円谷さんから長谷川さんに掛け合っていただきました。
知ってる人しか楽しめないようなものにはしたくない
──長谷川さんは、脚本のお話をもらったときはいかがでしたか?
長谷川 「電光超人グリッドマン」がコンピュータウイルスとか電脳世界を扱っていたってことは知っていたので、自分が関わっていたアニメの「ロックマンエグゼ」みたいになるのかな、と思ったのを覚えています。ただ最初期の企画書を見せてもらったら、全然「電光超人グリッドマン」じゃなくて(笑)。もちろん「ロックマンエグゼ」でもないし、誤解を恐れずに言うと「エヴァンゲリオン」みたいな。壮大な謎に満ちたSFって感じで。
雨宮 最初のプロットは、今とは全然違ったんですよね。
長谷川 「知ってる人しか楽しめないような昔のリメイクにはしたくない」という意向は聞いてたんですが、「これは新しすぎるな」と思いましたね。でもそこから時間が割とあったので、いろんな意見をみんなで詰めていったんです。
雨宮 ただ、「アニメファンが観やすい形にしよう」っていうのは、最初から変わってないと思います。今の特撮好きってアニメも観る人が多いんですよ。でもアニメ好きな人が特撮も必ず観るかっていうと、そうじゃない。そのぐらいアニメのほうが、間口が広くなっているんです。
──アニメファンが観やすい形にするために、具体的にどんなところに気を使っているんでしょうか?
雨宮 例えばキャラクターの扱い方ですね。特撮だったら、もちろん役者さんも大事なんですけど、変身前より変身後のほうがファンにとっては大事であることが多い気がするんです。一方でアニメだと、よりキャラクターの関係性を掘り下げていくことが必要とされる。あとはキャラクターデザインですね。アニメ誌に載っても不自然じゃないキャラクターデザイン、ビジュアルにしたくて。なので第1弾のキービジュアルにも、グリッドマンの姿はあえて入れませんでした。
──アニメファンとしては、アニメーション制作がTRIGGERというのも注目ポイントだと思います。先日行われた「ウルトラマンフェスティバル2018」での「SSSS.GRIDMAN」のトークショーでも、キャストの皆さんがTRIGGERのスタッフの熱量を賞賛されていました。スタジオの見学もされたと楽しそうにお話ししていましたよね。
長谷川 そういうことってよくあるんですか?
TRIGGERスタッフ どの作品でもお声がけはして、希望された方には来ていただいています。「SSSS.GRIDMAN」はほぼ全員来てくださいましたね。ありがたいことです。
雨宮 喜んでもらえてたならうれしいですね。アニメの音響と作画って、実は作業的にすごく分かれてしまってるんですよ。なのでキャストさんが絵を描いている現場を見ることもあまりないでしょうし、逆に絵を描く人があまり音を聞かないということもあって。もちろん芝居を聞きながら描いたほうが、その芝居にふさわしい絵になるので。TRIGGERのアニメーターはそういう部分をちゃんとやってくれて、ありがたいですね。
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長谷川さんの脚本に、絵コンテでアンサーを返す面白さ
- アニメ「SSSS.GRIDMAN」
- 放送情報
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TOKYO MX:2018年10月6日(土)より、毎週土曜25:00~
MBS:2018年10月6日(土)より、毎週土曜26:08~
BS11:2018年10月6日(土)より、毎週土曜25:00~
WOWOW:2018年10月6日(土)より、毎週土曜24:00~
- ストーリー
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舞台は2018年の日本。ある日、目覚めると記憶喪失になっていた高校1年生の響裕太は、古いパソコンの画面に映る“ハイパーエージェント・グリッドマン”と出会う。グリッドマンに「使命を果たせ」と語りかけられた裕太は、その言葉の意味と失った記憶を探し始める。戸惑いつつもクラスメイトの内海将や宝多六花、新城アカネらに助けられながら日々を送る裕太。しかし平穏に見えた日々は、突如現れた謎の怪獣によって踏みつぶされる。
- スタッフ
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原作:グリッドマン
監督:雨宮哲
脚本:長谷川圭一
グリッドマンデザイン:後藤正行(円谷プロ)
キャラクターデザイン:坂本勝
アレクシスデザイン:コヤマシゲト
怪獣デザイン:西川伸司、丸山浩、板野一郎、山口修、前田真宏
アシストウェポンデザイン:野中剛
ジャンクデザイン:三宮昌太
ヒロイック作画チーフ:牟田口裕基
3DCG監督:宮風慎一
3DCG制作:グラフィニカ
美術監督:渡辺幸浩(アトリエPlatz)
色彩設計:武田仁基
撮影監督:山本弥芳(グラフィニカ)
編集:吉武将人(グラフィニカ)
音楽:鷺巣詩郎
音楽制作:ポニーキャニオン
音響監督:亀山俊樹
音響効果:森川永子
ラインプロデューサー:竹内雅人
アニメーションプロデューサー:舛本和也
アニメーション制作:TRIGGER
- キャスト
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響裕太:広瀬裕也
グリッドマン:緑川光
内海将:斉藤壮馬
宝多六花:宮本侑芽
新条アカネ:上田麗奈
サムライ・キャリバー:高橋良輔
マックス:小西克幸
ボラ―:悠木碧
ヴィット:松風雅也
謎の少年:鈴村健一
アレクシス・ケリヴ:稲田徹
六花ママ:新谷真弓
なみこ:三森すずこ
はっす:鬼頭明里
©円谷プロ
©2018 TRIGGER・雨宮哲/「GRIDMAN」製作委員会
- 雨宮哲(アメミヤアキラ)
- アニメーター、アニメーション監督。アニメーターとして「天元突破グレンラガン」「パンティ&ストッキングwithガーターベルト」に参加後、「宇宙パトロールルル子」で第2監督を務める。監督作として「インフェルノコップ」「ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン」「電光超人グリッドマン boys invent great hero」がある。
- 長谷川圭一(ハセガワケイイチ)
- 脚本家。1997年「ウルトラマンティガ」第22話で脚本家デビューし、その後「ウルトラマンダイナ」「ウルトラマンネクサス」「ウルトラマンギンガ」など、多くの円谷プロダクション作品の脚本を担当する。TVアニメ作品では「デビルマンレディー」「ロックマンエグゼ」「墓場鬼太郎」「神撃のバハムート GENESIS」などに参加している。
2020年2月14日更新