「歩くオーフェンペディア」とみんなで呼んでました(小林)
──ちなみにマジクは以前のTVアニメでは女性の南央美さんが演じられていました。そこは意識されました?
小林 いやー、正直なところ、かなりしました。オーディションのお話をいただいたとき、どうしてもそのイメージは強くありましたし、キャラクターデザインもかわいらしい顔立ちをしていましたからね。女性と男性の違いはあれど、それなりの高さの、攻めた声を出さなきゃいけないなと思いました。だから受かったとき、うれしかったのはもちろんなんですけど、「どうしよう?」という気持ちもありました。あの声を出し続けられるかな、と。またアフレコ現場に入ってからの大久保さんのプレッシャーがすごくて……。
大久保 いやいやいや!(笑) 私はあくまでかわいいクリーオウとしてその場にいただけで、特に何も……。
小林 またまた。スタジオに入ったら、大久保さんが原作を読んでるんです。で、僕に向かって「見て見て、ほらここ。『声変わりもしてない』だって」と……。
大久保 原作の文章を伝えてるだけでしょ!
小林 「プレッシャーになるんで勘弁してくれ……」と伝えたのに、しばらくしたらまた同じように原作を見せて「ほら、マジク、女の子と間違えられてるんだよ?」って(笑)。
大久保 違うの。あれは「とにかくマジクはかわいいんだよ!!」って気持ちを伝えたいだけなの。
小林 そういう思いの強さはいいんだけどさあ(笑)。そこのプレッシャーと、やはり森久保さんですよね。オーフェンをまた演じるにあたって、たぶん、まわりのキャストとの掛け合いで一番違和感があるのはここだろうなと思って、そこの気負いもありました。
森久保 そうだったんだ。確かに、考える気持ちはわかる。でもアニメを収録する前にAudibleでの作業が始まって、原作のキャラクターを全部僕が、それらしい感じに演じてたわけ。その過程を踏んでたし、違和感はなかったよ。
小林 それを聞いて、いまさらですけどほっとしました。
──話を少し戻すと、アニメが放映される前から、まずアフレコ現場で、大久保さんという熱烈な作品のファンが厳しい目を光らせておられた。
森久保 そうです。すげー頼りになりましたよ。迷ったときは、全部瑠美ちゃんに訊いてました。
小林 現場で「歩くオーフェンペディア」とみんなで呼んでました。
森久保 ほんとそう。
大久保 私としては、オーフェンとして現場にいる森久保さんに「これで大丈夫だっけ?」と聞かれるのは、震えるほどうれしかったです。そういう気持ちは表に出してはいけない、あくまで私は役者としてこの現場に来てるんだ……と思いつつも、ちょっと出ちゃうところも、どうしてもありましたね(笑)。あまりにお芝居が素敵すぎて、収録が終わった後に、「カッコよかったです……!!」ってお伝えしたり。これはもう言わざるを得ないと。あの瞬間は、涙が出るくらい幸せでした。
森久保 でもさ、そう言いながら、一番好きなキャラはあの人なんでしょう?
大久保 ……サルアですね。たしかにサルアのことは男性として素敵だと思ってますけど、でも、でも、オーフェンがやっぱり一番ですよ。や、やだなー、もう! もう!
小林 でも僕も、現場でポソポソと「サルアが性癖に刺さるんだよ」ってつぶやいてる姿が印象に残ってますね……。
大久保 しかたないじゃん! 性癖にぶっ刺さるんですよ!!
──先ほどからオーフェンへの愛を熱く語ってくださっていたのに、まさかこんなオチがつくとは思いませんでした……。
大久保 好みのタイプがはっきりしているもので……。
できるものならずっと作り続けたい(森久保)
──では、〆に向かわせてください。まず原作をお読みになっている方に向けて、今回のTVシリーズの見どころを。
大久保 今回のTVシリーズは原作準拠でシナリオが書かれているので、改めて原作と照らし合わせつつ見ていただくと楽しいと思いますね。1巻が発売されたのは25年前ということで、それ以来手に取っていない方も、この機会に読み返していただくといいのかなと。
森久保 本当にね。原作ファンの皆さんは、いまさら僕が何を言わなくてもこの作品の魅力は十分わかってらっしゃると思うんです。それがこの令和の時代に映像化されて蘇る。その期待は裏切らないものになっているので、安心して観てください。
──原作未読で、今回初めて「魔術士オーフェン」の世界に触れてみようという人にとっての見どころはどうでしょう? こうした視聴者の皆さんの立場には、小林さんが一番近いのかなと思いますが。
小林 そうですね。25年前に始まった作品とは思えないくらい、今の時代にもハマる……言ってしまえば、「王道」な魅力のある作品だと、今回関わらせていただいて、すごく感じました。ストーリーが重厚なので、頭を使いながら観ないと置いていかれるかもしれないですけど、最近そういう作品もなかなか少なくなってきた気もするので、たまにはいいんじゃないでしょうか。アニメーション表現も今の時代に即したものになっていて、特に魔術の印象は、以前のアニメとまた全然違った魅力を感じましたし、まずはとにかく1話を観ていただいて、それで大丈夫だと感じたら、あとの話数も楽しんでいただけると思います。
大久保 私みたいなゴリゴリの原作読者からすると、原作未読の方に薦めるのは難しいところもあるんですけど(笑)。ひとつ言えるのは、今流行っているライトノベルとは、ストーリーの構成や登場人物の雰囲気がまた違うんですよね。そうした珍しさだとか、純粋にファンタジーとして、キエサルヒマ大陸という作り込まれた世界の魅力を楽しんでいただけたら。細かい設定を調べるのが好きな人は、絶対にハマる作品だと思います。まさに私がそういうタイプの人なので(笑)。25年前に始まった、歴史ある作品ということを一旦忘れて、今、この瞬間の「オーフェン」の面白さを楽しんでいただけたらうれしいですね。
森久保 うん、2人が話してくれたことがすべてだね。本当に、単純に、今の時代の新作アニメとして、面白いものができましたよ!という気持ちでいっぱいです。そして、今回アニメ化された部分から先も、原作のストーリーはまだまだ膨大にあるので、できるものならずっと作り続けたい。そう願いながら収録に臨みました。多くの人にハマっていただければ、それも夢じゃないような気がします。ぜひ、このアニメに、「オーフェン」の世界にハマってください!
2020年1月7日更新