去る11月2日に東京・早稲田大学にて開催された「早稲田祭2024」において、「StarryCube ANIME FES powered by 早稲田大学アニメ声優会」と銘打ったイベントが開かれ、野口の出演する「草食ドラゴン」「魔王様、リトライ!R」についてキャストとプロデューサーがその魅力を語るトークショーが行われた。
イベント前半は「魔王様、リトライ!R」ステージ、後半が「草食ドラゴン」ステージとして進行し、いずれのパートにも野口と藍沢亮プロデューサーが登壇したほか、前者にはルナ・エレガント役の鈴木愛奈、後者にはアリアンテ役の宮世真理子も参加。大学の講義室というイレギュラーな空間を舞台に、和気あいあいとしたトークが繰り広げられた。
当日はあいにくの雨模様。しかしキャンパス内は悪天候をものともしない活気にあふれ、そこかしこを学生スタッフたちがせわしなく駆けめぐり、その間隙を縫って多数の来場者が縦横無尽に行き交う盛況ぶりだった。言うまでもなく、本イベントの会場となった早稲田キャンパス15号館101教室も例外ではない。約15倍もの倍率だったという事前抽選制の参加チケットを勝ち取った幸運なファンが多数詰めかけ、作品グッズや推しタオルなどを机上に並べつつ開演を今か今かと待ちわびていた。
キャラになりきってアドバイス! 「魔王様、リトライ!R」ステージ
開演時刻を迎えて鈴木、野口、藍沢が壇上に現れると、客席からは盛大な拍手。早稲田大学を訪れるのが初めてだという鈴木は、「頭のいい空気を吸って、私もよくなりそうな気がしてます(笑)」と顔をほころばせる。一方、2018年に=LOVEとして「早稲田アイドルフェスティバル!!! in 早稲田祭2018」に出演経験のある野口は「今日は久しぶりの登校……登校じゃないですけど(笑)」とにこやかに再訪を喜んだ。
担当キャラクターの好きなポイントを問われた鈴木は、「ルナちゃんは三聖女の末っ子ということで、ちょっとわがままなところもあるんですけれども、すごく魔法の才能があってツンデレなところがかわいい」と力説。野口は「イーグルはすごく不遇な過去がありながらも周りの人を大切にする温かい気持ちをなくさない、芯の強さが素敵なところ」だとし、「その核にはルナという光の存在があるからだと思っていて。イーグルを好きになる過程で必ずルナも一緒に好きになれる」ところが最大の魅力であると述べた。
ライトノベル原作をアニメ化した前作「魔王様、リトライ!」に対し、コミカライズ版を原作としてスタッフやキャストを一新して制作された本作。鈴木は「前作では石原夏織さんがルナちゃんを演じられていたので、皆さんの中にもそのイメージがあると思う。なので石原さんが演じられたルナちゃんを丁寧に観直して、チューニングをしてからアフレコに臨みました」と明かす。一方の野口は「イーグルは壮絶な過去がある子なので、役に決まったときは『私にこの子を演じることができるのかな?』って不安でした。イーグルちゃんと比べると、私はすごく恵まれた生活をしているので(笑)」と笑わせつつも、音響監督からの助言も参考にしながら“芯の強さ”を表現することに注力したと語った。
続いて、鈴木と野口による生アフレコが披露された。舞台上にスタンドマイクが用意され、2人は実際の収録時に使用したものだという台本を片手にスタンバイ。イベント開催時点では未放送だった第6話より、イーグルのもとへルナが駆けつけるシーン、兵士に囲まれた2人が逃亡を図るシーンが上映される。鈴木と野口が映像に合わせて白熱の演技を披露すると、観客は息をのんで食い入るように見守った。
さらに「お悩み相談室」なるコーナーも展開。事前に募集したお悩みに対し、2人がボックスから引いたキャラクターになりきって答える企画だ。まず鈴木が「早起きするコツはありますか?」という相談に「霧雨零(属性:漢気)」として回答することに。この難題を前に、鈴木はやや野太い発声で「前日に! 早く! 寝ること!」とシンプルな解決策を提示してみせた。続く野口は「嫌いな食べ物を克服する方法」を「九内伯斗(属性:魔王)」として答えることになり、これまた「食え!」と一刀両断に。しかしすかさず素に戻って「ただ私の意見で言うと、嫌いなものを無理に食べなくても生きていけるから大丈夫だよー」と身も蓋もない助言を付け加え、鈴木も「小さい頃は『食べないと大きくなれないよ』って教わったけど、実際食べなくても大きくなれましたしね」と全面的に同調。「医療も発達してるし、今はサプリとかもいろいろあるから」と論を重ねた。
そして3つ目の質問には、2人が実際の役通りにルナとイーグルとして回答するという。その場で会場から相談を募ったところ、選ばれた女性から「深夜にラーメンを食べることがやめられない」という切実な悩みが打ち明けられた。これに対し、鈴木ルナは快活な口調で「先に野菜とかを食べてからにするとか?」との提案を行い、「どう思う? イーグル」と野口に水を向ける。野口イーグルは控えめなか細い声で「確かに、私も食べちゃうから……ルナが言ったとおり、野菜を食べてからラーメン食べようかなって思った」と返答。しばし微妙な沈黙が場を支配したのち、野口がおそるおそる「……合ってますか?」と問いかけると、場内は温かな拍手でこれに応えた。
すべてのコーナーを終え、野口が「こういうトークイベントという形が初めてですごく緊張していたんですけど、皆さん些細なことでも笑ってくださって、盛りあげてくださって。それに、愛奈さんと一緒にお話しできたことも光栄でした」と笑顔を見せると、鈴木は「皆さんと楽しい時間を過ごすことができて、本当に楽しかったです。衣織ちゃんの隣に座ることができて至福のひとときでございました。心におじさん飼ってるんで注意してください」と笑いを誘い、終始和やかなムードのまま前半ステージは幕を閉じた。
画伯が爆誕? 「草食ドラゴン」ステージ
宮世、野口、藍沢の3人が登壇した「草食ドラゴン」ステージは、第1期の名シーン振り返りからスタート。宮世の口から第1期の簡単なあらすじと自身の演じるアリアンテの役どころについて説明が行われたのち、「時間が押している」との理由から早くも生アフレコのコーナーへ突入することに。これには思わず宮世も「え、さっそく?(笑)」と苦笑するも、マイク前に立てば瞬時にアリアンテをその身に宿し、物語序盤でレーコと剣を交わしたシーンを凜とした声色で熱演。「憧れの女性像はたくさんあるんですけど、アリアンテもその1つというか。楽しくもあり、自分の理想も描きながら演じさせていただきました」と振り返った。
続いて野口から第2期の見どころ解説が行われ、彼女の演じるロゼッタの話題に。その役どころを「王家に数代に一度しか生まれないと言われるほどの大きな魔力を持った女の子なんですけど、王である姉を亡きものにして王位を奪おうとする……おてんばさんというか(笑)」と独特の表現で語った野口は、続けて生アフレコに挑戦。大魔導士プラバスの墓を暴こうとするロゼッタがヴァネッサに咎められるシーンを鬼気迫る芝居で披露し、喝采を起こした。
その後イベントは「草食ドラゴン流! ボケ集会」と題するコーナーへ。これは、事前に募集された大喜利回答から優秀なものをピックアップして紹介する企画。“アリアンテがなんとも言えない微妙な表情をしているカット”と“ロゼッタが炎をバックに高笑いをしているカット”がお題として提示されており、彼女たちが言ったら面白いであろうセリフを考えるという“写真で一言”的な内容だ。ステージでは、多数寄せられたという回答の中から厳選された6作品を紹介。「草食ドラゴン」の世界観ではあり得ないような生活感あふれる“あるある”が野口と宮世によるセリフ朗読で披露されるという、贅沢な遊びが繰り広げられた。
そして最後の企画は、「~邪竜様への愛を示せ!~イラスト対決!」。宮世、野口、藍沢の3人がその場で何も見ずに邪竜様(草食ドラゴン)のイラストを即興で描き、その出来のよさを競うというお絵描き対決企画だ。判定は客席の拍手によって行い、最も多くの支持を集めた作品の作者には叙々苑のお食事券1万円分が贈られるという。このレギュレーションが告げられた途端、がぜん目の色を変える3人。スタートの合図とともに真剣なまなざしでペンを走らせ始めた3人は、「私、うまいかもしれないです」「ドラゴンって手、何本ですか?」などの声も漏らしつつ、邪竜様と叙々苑への熱い思いを線の1本1本に込めて色紙に命を宿らせていった。
制限時間の1分が経過し、いよいよ作品発表の段へ。まず藍沢の作品がスクリーンに映写され、作者本人の口から「ドラゴンなのでトゲトゲしながら、手でピースしてる」様子を描写したとの解説がなされた。宮世から「このかいわれ大根みたいなのがピースですか?」と制作意図の確認が行われると、藍沢は「手です」と主張。「手が4本生えていて、背中には猛々しい尻尾というか……羽根ですかね」と詳細な解説がなされると、宮世は「クリーチャー感ありますね」と総括し、野口は「これがクレーンゲームにあったら人気出そう」との見解を示した。
続いてスクリーンに映し出された宮世の作品には、客席から「おおおー」と感嘆の声が上がる。シンプルな線ながら見事に特徴を捉えたその的確なアウトラインに、野口も「本当にすごいです!」と賛辞を惜しまない。「ちょっと目がいやらしくなってしまった(笑)」とストイックに反省の意を表明する宮世に対し、野口は「たまに邪竜様って一瞬こういう顔されますよね。見覚えあります。かわいいー!」とすっかり夢中の様子。会場の好意的な反応を受けた宮世は、勝利を確信したような口ぶりで「これは1万円、私のものに?」と口角を上げた。
3人が描いた草食ドラゴンは、スターリーキューブ公式Xアカウントでフォロワーにプレゼントされた。
最後に野口の作品が発表される。独特の画風に客席からクスクスと控えめな笑い声が漏れ聞こえる中、藍沢は「目つきが悪者っぽいですね」、宮世は「アメリカのキャラクターにいそう」と論評。その個性的な造形について、野口から「邪竜様といえば目が大きいっていうイメージと、トゲトゲしてるイメージがあったんですよ。ツノが黒光りしてるイメージもあったので黒く塗って、おなかはポテッとさせました」と制作意図が淡々と語られる。さらに「ただ、手足の数だけわからなくて。いっぱい描いとこうと思って付け足しました」と後ろ足が4本備わっている根拠について解説した。
判定の結果、客席からの拍手の量は3作品ともに大差はないように思われたものの、藍沢の「……宮世さんで」のひと言により宮世の勝利が確定。どこからも異論の声は上がらず、最終的には満場一致で宮世がお食事券を手にする結果となった。
イベントを終えた野口衣織を直撃!
こういうイベントに参加させていただくのが初めてで緊張したんですけれども、集まってくださった皆さんがすごく優しくて温かくて、ほんわかした空気感にとても癒されました。全然心配することなかったなって。今回「魔王様」と「草食ドラゴン」で同一クールに2作品も出演させていただけたことが、すごくありがたいなって改めて実感できるイベントでした。
──大学でのイベントというのは野口さんにとってめずらしかったんじゃないでしょうか。
大学の学園祭ってあまり来たことがないので、この雰囲気自体がすごく新鮮で。さっき構内をチラッとのぞいたら、雨の中でもたくさんの屋台が並んでいたり、「祭」と書かれた法被を着ている学生さんがいらっしゃったり、仮面ライダー?のような扮装をされている方もウロウロしていたり(笑)。「学園祭って、そんなことまでやるんだ?」と驚きました。皆さんとても楽しそうで、私も大学行ってみたかったなあっていう気持ちになりました。
プロフィール
野口衣織(ノグチイオリ)
2000年4月26日、茨城県生まれ。指原莉乃がプロデュースするアイドルグループ・=LOVE(イコールラブ)のメンバーとして活動し、声優としてもアニメ「走り続けてよかったって。」(大森千歌子役)、「齢5000年の草食ドラゴン、いわれなき邪竜認定 season2」(ロゼッタ役)、「魔王様、リトライ!R」(イーグル役)に出演する。またモデル・女優など幅広く活躍している。愛称はいおり。