=LOVE・野口衣織は声優として躍進中!「草食ドラゴン」「魔王様、リトライ!R」出演で感じた現在地とこれから

2024年の秋アニメとして、「齢5000年の草食ドラゴン、いわれなき邪竜認定 season2」と「魔王様、リトライ!R」がテレビ放送されている。「齢5000年の草食ドラゴン、いわれなき邪竜認定 season2」は、草しか食べない小心者のドラゴンが、思い込みの力で最強になった生贄の少女とともに魔王討伐を目指す物語。「魔王様、リトライ!R」は、自身の運営するゲームの魔王にログインしたまま異世界に飛ばされてしまった主人公の、現実に戻るための旅の物語が展開される。

コミックナタリーでは、両作に出演している野口衣織(=LOVE)にインタビューを実施。声優として躍進する野口に、両作で重要な役どころを演じた感想や、役への思いを語ってもらった。また11月2日に東京・早稲田大学の「早稲田祭2024」内で開催された両作のイベントにも潜入。バラエティコーナー、公開アフレコなど、見どころたっぷりなイベントの様子をお届けする。

取材・文 / ナカニシキュウ撮影 / 小川遼

ロゼッタは新しいタイプの“悪役令嬢”

──野口さんは今回、同一クールで放送されている「齢5000年の草食ドラゴン、いわれなき邪竜認定 season2(以下、「草食ドラゴン」)」と「魔王様、リトライ!R」の2作品に声優として出演されています。

本当にありがたいです……! このような素敵な作品に携わる機会を同時にいただけたことが本当にうれしくて、感謝の気持ちでいっぱいです。

野口衣織

野口衣織

──まず「草食ドラゴン」について伺いますが、どんな魅力のある作品だと感じていますか?

草食ドラゴンの豊かな表情と、周囲に振り回され続ける飾らない性格を見ているだけでも楽しい、とても愉快で面白い作品です。その半面、怪しげでシリアスなシーンもあるので、1話13分とは思えないくらい見どころ満載なところが魅力ですね。しかも毎話とても気になるところで終わるので、手のひらで転がされている感じもたまらないです!

──野口さん演じるロゼッタはどんな人物ですか?

最初は“圧倒的な悪役”というイメージがあったんですけど、原作や台本を読めば読むほど、「そうならざるを得なかったのかな」と感じるようになりました。強者であることが彼女なりの絶対的な正義であり、「邪竜様になりたい」という理想があるからこそ、不器用なまでに強さを求めてしまう。はたから見たら傲慢だったり破天荒だったりする子なんですけど、すべての行動に彼女なりの理由がきちんとあるんです。知れば知るほど、愛おしさの増してくる子ですね。

主人公の“邪竜”は、凶悪な容貌でありながらお人好しすぎる草食ドラゴン。元生贄の少女・レーコは、そんな彼を最強の邪竜と思い込み、草食ドラゴンと魔王討伐を目指す。

主人公の“邪竜”は、凶悪な容貌でありながらお人好しすぎる草食ドラゴン。元生贄の少女・レーコは、そんな彼を最強の邪竜と思い込み、草食ドラゴンと魔王討伐を目指す。

野口演じるロゼッタはアスガの国王・ヴァネッサの妹。王家に数代に一度誕生する大魔導師になり得るほどの才能と強い魔力を有した“白銀の忌み子”であり、ヴァネッサを亡き者にして王位を簒奪しようとしている。

野口演じるロゼッタはアスガの国王・ヴァネッサの妹。王家に数代に一度誕生する大魔導師になり得るほどの才能と強い魔力を有した“白銀の忌み子”であり、ヴァネッサを亡き者にして王位を簒奪しようとしている。

──演じるうえではどんなことを心がけましたか?

作品を読んだときに読者として感じたことを、演技に乗せてしまわないよう心がけました。例えば姉のヴァネッサと意見が食い違うシーンなどでは、読者視点ではヴァネッサのほうが正しいことを言っているように感じますよね? でもその感情を演技に乗せてしまうと、それはロゼッタの感情ではなくなってしまいますから。

──なるほど。悪役キャラクターならではの工夫や、難しかったポイントなどはありますか?

ロゼッタはヴァネッサのことをあまりよく思っていないように見えて、その割には「お姉様」という言葉をたくさん発する子なんです。でもその「お姉様」には「私のお姉様なのに?」と蔑むような気持ちが入っているので、そのニュアンスを表現するにはどういう呼び方をしたらいいんだろう?と悩みました。

──「お姉様」という言葉が持つ以上の情報量を込める必要があると。

そうですね。「お姉様」のバリエーションを出すのがとても難しくて……でも、その「お姉様」というセリフを言うたびにロゼッタが愛おしくなっていきました。

野口衣織

野口衣織

──特に印象に残っているシーンを教えてください。

第7話の、復活した大魔導士プラバスとロゼッタが相対するシーンですね。そこにヴァネッサが心配して駆けつけてくるんですけど、ロゼッタが「お姉様、無礼じゃないの」みたいなセリフを言うんですよ。すごく嫌味ったらしく「お姉様」と何度も呼ぶところがもう、悪役令嬢だ!って(笑)。そのシーンがすごく好きです。

──なるほど(笑)。

私はもともと悪役令嬢ものが大好きなんです。「草食ドラゴン」は悪役令嬢ものではないですけど、でもロゼッタは悪役で令嬢ではあるじゃないですか。ちょっと性格が破綻していたりして、今までに見てきた悪役令嬢ものに出てくる令嬢とはまた違った陰を背負っているよさがあるなって。あのシーンではまた新たなロゼッタの魅力が感じられて、キュンキュンしました。かわいいなって。

──ちなみに、「草食ドラゴン」はもともと中国でアニメ化された作品です。吹き替えは初挑戦だったと思いますが、いかがでしたか?

映像ができあがっている分、口の動きに合わせてお芝居をするのが難しかったです。ただ、現地の役者さんが演じられた音声を聴くことができるのは吹き替えならではで、ありがたかったです。感情の起伏や勢いなどを参考にして、よりロゼッタのキャラクター性を掴むための助けになりました。

イーグルとルナの関係性が尊い

──一方の「魔王様、リトライ!R」については、どんな魅力を持つ作品だと思いますか?

主人公がゲームのラスボスである魔王にログインしたまま異世界に飲み込まれるという異世界転生ものです。憑依したのがチート能力を持つ魔王様なので、物語を観ていくと無敵感に満たされて楽しいと思います! ああいう強くて賢くて無敵なキャラクターにはとても憧れますし、「いいなあ、ああなりたいなあ」って心がキラキラしちゃいます。それに加えて、かわいい女の子キャラクターもたくさん出てくるので、ほわほわ癒されるシーンも多いんです。カッコいいシーンとかわいいシーンのギャップも見どころですね。

──本作で野口さんが演じられたイーグルについては、どのようなキャラクターだと感じましたか?

優しくて繊細で、強い子だなあと。どんなに自分がつらい境遇にいても、他人を思いやる温かい気持ちをずっと忘れない謙虚な姿勢がとっても健気で……それはもちろんイーグル自身の努力でもあるんですけど、ルナという光の存在があったからこそのものだとも思うんです。この2人の関係性がすごく尊いなって感じます。

主人公は、自身が運営するゲームのラスボスである魔王・九内伯斗にログインしたまま、異世界へと飛ばされてしまう。「魔王様、リトライ!R」は九内が現実世界に戻る術を探すべく、新たな旅へ踏み出す物語だ。

主人公は、自身が運営するゲームのラスボスである魔王・九内伯斗にログインしたまま、異世界へと飛ばされてしまう。「魔王様、リトライ!R」は九内が現実世界に戻る術を探すべく、新たな旅へ踏み出す物語だ。

野口が演じるイーグルは迫害を受け、亜人であるという理由から両翼をほとんどもがれてしまい、希望を失って心を閉ざしている。

野口が演じるイーグルは迫害を受け、亜人であるという理由から両翼をほとんどもがれてしまい、希望を失って心を閉ざしている。

──演じるうえでどんなことを心がけましたか?

優しい子だけど、恨みや憎しみのような負の感情もちゃんと持ち合わせているがゆえの繊細さでもあって。自分を虐げてきた人たちに悪態をつくシーンもあるんですが、それをどこまでやっていいのか、ちょっとドキドキしました。やりすぎたくはなかったので!

──特に印象に残っているシーンを教えてください。

第6話の、イーグルのところへルナが駆けつけてくるシーンですね。イーグルにとっての光であり希望であるルナとようやく会えて、でももしかしたらここで死んじゃうかもしれないという緊迫した状況でもあるんですよ。そんな2人がお互いの絆を確かめ合うというか、「好き」という言葉は使わないけどお互いを思い合っていることが通じ合う、愛情のたっぷりこもったシーンなので。

──先ほども2人の関係性の尊さが魅力だとおっしゃっていましたが、それが最高潮に味わえるシーンであると。

最高潮です! 2人の関係性のよさが全部このシーンには詰まっていると思います。大好きです!

──ロゼッタとイーグルはタイプ的にかなり異なりますが、演じ分けに苦労はしませんでしたか?

まったく性格の違う2人ではあるんですけど、人から虐げられたり疎まれたりしてきたという点では共通する部分もあって。経済的な意味ではなく、人間関係という意味で環境に恵まれてこなかったのはロゼッタもイーグルも同じなんです。ただ、その環境から自分を奮い立たせるときの感情の持ち方や行動の選択が見事に真逆で、そこにこの2人の理想やプライドが表れているんだろうなと思いました。常に1人ひとりの意思を頭の中に置いて、芯の部分を大切に演じるよう心がけました。なので、最後まで緊張感のある収録でしたね。

野口衣織
野口衣織

野口衣織

──では、この記事を読む読者に向けて2作品のおすすめポイントを教えてください。

「草食ドラゴン」は絵柄もかわいらしくて面白展開も豊富で、1話13分という短めサイズでもあるので、緊張感の少ないアニメを楽しみたい方にオススメです! 「魔王様、リトライ!R」は強くて賢い魔王様がとにかく魅力的なので、最強になってみたい方は一緒に観ましょう! 数あるアニメ作品の中で見つけてくださったことがとってもうれしいです。ぜひこれからも観続けてください!

──ありがとうございます。

……っていろいろ言いましたが、なんの先入観もなく誰かのオススメでもなく、自分から自発的に観るアニメが一番面白いと私は思っているので、私の言うことはいったん忘れていただいて(笑)。自由にアニメを観て楽しんでいただけたら、それが一番うれしいです!

声優としての立ち位置を確立していきたい

──ところで、アニメ好きで知られる野口さんですが、アイドルとしても声優としても多忙を極める中でアニメを観る時間は取れていますか?

確保しています! その時間がないと生きていけないので!

──(笑)。1クールに何作品くらい観れている感じですか?

できるだけ3から5作品くらいは観続けられたらいいなと思ってるんですけど……私は1話1話を毎週観るよりも一気観したいタイプなので、リアルタイムで話題の波に乗れないのが悩みなんですよね。いつもみんなより1クール遅れている状態で(笑)。そもそも好きな作品の偏りがすごくて、新作だけじゃなく昔の作品を観るのも好きなので、観る作品数はそのときどきでけっこうまちまちではあります。最近は私の好きな悪役令嬢ものがアニメ化される機会が増えてきているので、それだけは欠かさずチェックするようにしています!

野口衣織

野口衣織

──アイドルとしても人気が増す一方ですが、その中で野口さんにとって声優のお仕事はどういうものになっていますか?

キャラクターの声を担当することでいろんな感情や世界に触れさせてもらっていて、自分にはない感覚をたくさん知ることのできる、刺激的で大切な時間になっています。

──アイドルと声優の両方をやっていてよかったと感じるのはどんなときでしょう。

アイドル活動の1つにお話し会というものがあるんですけど、そこでファンの方からアニメの感想とか「観たよー!」って報告を直接聞けるのがとてもうれしいです。

──声優として主要キャラクターを務める機会も増えてきていますが、その現状についてご自身ではどんな捉え方をしていますか?

自分ではまだまだだと思っていて……今回この2作品でいろんな声優の先輩方と収録をご一緒させていただいた中で、それを痛感しました。でもそれは、逆に言えば成長できるところがまだまだあるということでもあると思うので、ありがたい機会だったなとポジティブに捉えています。もっとできることを増やしていって、声優としての立ち位置を確立していけたらいいなという気持ちが強いです。

──これまではどこへ出ていっても「=LOVEの野口衣織です」と名乗ることが多かったと思いますが、少しずつ「声優の野口衣織です」と言う機会も増えていますよね。そこに喜びはあるんじゃないでしょうか。

ああー……でもなんか、まだ恥ずかしい(笑)。たぶんそれも「まだまだだ」と思っている自分がいるからこそだと思うんですけど。そう思っちゃうこと自体がよくないことだとはわかっているので、今後は自信を持って「声優をさせていただいています」と言えるように成長していけたらと思っています!