かわいく見せたいから服はよく着替えさせる。ごめんね作画の人

──服に関しては原作もこだわっていますよね。特にメイン4人は着る服の方向性がはっきりとあって。

篤見　アニメでもよく着替えてくれるのでうれしいです。後半の設定画を見せていただいたら、花名私服「G」とあって、そんなにも！と。

──「G」ということは、A～Fのパターンもあるということですよね。

橋本　こういうアニメを作るなら、そこはこだわらないといけない部分ですよ。この子たちがどんな服を着て、どういうふうに生活しているかというのが見たい部分の1つでしょうし。キャラクターをかわいく見せるのに必要な作業だから、そこはもう作画の人に「ごめんね」と言うしかない（笑）。

──服もそうですし、メインキャラクターの部屋やお弁当の中身にも、こだわりを感じます。

篤見　「たまてのお弁当箱は曲げわっぱにしてください」って、最初にお願いしました。あれは中身も美味しそうでした。

橋本　あそこは、プロップデザインの伊藤雅子さんが中身をすごく丁寧に描いてくれました。料理が得意なたまての作る弁当が美味しそうじゃなかったら、テレビに向かって「ちょっと待て」となるじゃないですか（笑）。そこで「食べたい」となるようなものを見せることで、観ている側の気持ちとアニメ内のキャラクターの気持ちが近づきますよね。

──キャラクターの生活を丁寧に描くからこそ、視聴者も彼女たちが実際に存在しているように感じる、と。

橋本　そうですね。小物自体や小物の持ち方、セリフ回しもですが、そういった細かな部分こそこだわるべき部分だと思います。

近藤さんが声優仲間と楽しくやっている様子は、まさに花名

──「スロウスタート」は「プキー」に代表される擬音もかわいいですよね。

橋本　アニメだと、まだ1話で1回言っているくらいですけど、アフレコを重ねてたまて役の伊藤彩沙さんもだいぶはっちゃけていますよ（笑）。「スロウスタート」はそれほど現場経験が多くないキャストをメインに起用しているので、最初はみんな泣きそうな感じになっていましたけど、最近はどっしりしてきましたね。彼女たちには遠慮せず、やるだけやってみてもらうようお願いしています。それで違ったら自分たちが修正するからって。

──橋本監督は、花名を演じられている近藤玲奈さんがキャラとマッチしてると先行上映会でおっしゃっていましたよね。

橋本　オーディション時、本当におどおどしていたんですよ。こっちも「大丈夫？ 元気ある？」みたいになって。本人も花名役が決まるまではかなりナーバスになっていたようで、受かったのを知ってお風呂で泣いたと聞きました（笑）。最近はずいぶんと仕事にも慣れてきたみたいで、当初の印象は薄れてきましたけど。でも自分たちから見ると、近藤さんが仲間に飛び込んでいって、楽しくなっている様子はまさに花名みたいで微笑ましいです。

篤見　最近はもう、4人ともばっちりですよね。

橋本　今は彼女たち以外の人選を考えられないくらいなので、起用できてよかったです。

栄依子と先生がメインの7話は「スロウスタート」の中で異質

──メインキャストには新人さんを起用しているというお話でしたが、原作を拝見していて栄依子は一番ナマっぽさを感じたキャラクターなので演じるのが難しそうだなと思っていました。同年代の子の中では大人びていて、自分でもその立ち位置をわかっていて、でも実際に大人な先生と絡むと軽くあしらわれてしまって。……栄依子と榎並先生の関係って妙にアダルティックというか「スロウスタート」の中では異質ですよね。

篤見　確かに、あの2人が絡む回だけイレギュラーな雰囲気になっているかも（笑）。最初はあんなに関わらせるつもりはなかったんですけどね。

橋本　最近の原作でもすごいですよね、あの2人。

篤見　途中まで栄依子はいろいろとがんばってみるものの、先生はまったく意に介さない予定でした。でもだんだん描いているうちに、栄依子のアプローチ、これはすごくかわいいのでは、榎並先生もこれはかわいいと思うのでは、という気持ちになってきまして……。

──榎並先生って元々メインキャラクターとして考えていたんですか？

篤見　全然そんなつもりはありませんでした。だから先生だけは当初から少しずつキャラクターが変わっているし、実は版を重ねるごとに修正しています（笑）。

──その栄依子と榎並先生がメインで扱われるのが、2月17日から放送される7話です。シナリオを拝見しましたが、この話は原作のとあるエピソードを軸に、百合好きが喜びそうな内容になっていました。こだわりがあれば教えてください。

橋本　7話は、これまでの「スロウスタート」とは違った感じにします。もしかしたらきららファンではない方々にも受けるかもしれません。先ほども話題に上がりましたが、普段の栄依子と、榎並と絡んだときの栄依子の違いを大事にして。演出も普段よりは突っ込んだ感じにします。

──具体的には？

橋本　自分はきらら作品の場合そんなにパースをきつくとらないんですよ。でも7話はパースをきつくとったり、光と影を入れたり、画面作りから変えています……と言ってもまだ完成していないので、放送時に「言ってたことができてないじゃないか」みたいなことにならないか怖いんですけど（笑）。

篤見　楽しみです。あと私はこのあとの水着回も期待しています。あの話のシナリオ会議はどうかしていましたよね（笑）。原作にはないアイデアがぽんぽん出て。

橋本　どうかしていたけど、すごく面白い回になりそうですよ。コンテを読んでいても超楽しかったですし。

──脚本だけ先に拝見させていただいたんですが、原作をすごく大胆に料理していますよね。原作だと4人が花名の部屋で水着を着てダラダラするのが長期間続いて、随分とマニアックだなという印象でした。

篤見　あの4人は、キャラ的にあまり外に出なさそうだったので（笑）。たまてや栄依子はインドアタイプじゃないけど、そっちの方が似合う感じがしちゃったんです。そしてゆるいネタでも水着ならいけるかも、と思い小ネタを重ねて段々と長くなりました。

橋本　シナリオ会議でも「これまとまるのか？」って雰囲気でした（笑）。7話から先はより一層いろんな人が楽しめるアニメになると思います。