制作スタッフの関係も「スロウスタート」だった
──1話の下校シーンや2話のスポーツテストの細かな描写は、アニメオリジナルですよね。ほかにも原作のエピソードをかなりシャッフルして構成されていますが、4コママンガのアニメ化では通常これくらいするものなのでしょうか?
橋本 人によるので、答えづらいところもありますが……4コママンガとアニメという違いがある中で、バラバラのエピソードをつなげるだけだとやっぱり少し弱いんですよ。それなら原作を読めばいいですし。だから30分のアニメとして観たときにどれだけ気持ちよく終わるかを考えて構成し直しています。そういう意味では、シリーズ構成の井上美緒さんが一番苦労したのは1話かもしれません。まだ書き始めだったし、花名が入学して、名前を覚えていないたまてたちに改めて自己紹介するという流れで終わることは決めていたので、そこにどういったエピソードを入れるか悩んだんじゃないでしょうか。
篤見 脚本会議には毎回参加しましたけど、本当にいろいろなエピソードを丁寧に拾ってつないでいかれるものだなと。
橋本 篤見さんに毎回来てもらってすごく助かりました。こちらで補えないこともたくさんあるし、「このキャラクターならこう言うんじゃないか」みたいな細かなところまで校正していただいて。
篤見 後半は、私が調子に乗ってたくさん直しちゃって。
橋本 みんな、7話とか8話くらいからガンガン乗ってきましたよね(笑)。
篤見 最初は「赤を入れていいんですよ」と言われても、どうしたらいいか少しよくわからなくって……。
──先生も現場にどんどん馴染んできたというか、制作スタッフの関係もリアル「スロウスタート」だったと。原作をいい具合に改変しつつも、アニメでは残念ながら触れられないエピソードもありますよね。例えば教師の榎並はロングヘアを切るエピソードがなく、最初からショートカットです。
橋本 そこは難しいところです。もちろん全部のエピソードをアニメ化したいけど、自分としてはそれ以上にアニメから入った人たちが「原作を買ってみようかな」となってほしい。そうした導入になるよう、アニメは少し噛み砕いて見やすくしないと興味を持ってもらえないと思っているんです。だから逆に、原作ファンには「アニメでこの話もやってほしかったよ」と言って、アニメから入った方に原作をアピールしてほしいですね(笑)。
──花名とたまてで“かなえたまえ”というユニットを組むという話は、原作では名前だけ登場する小ネタでしたよね。まさかアイドル姿のビジュアルが見られると思わず、「こんなシーンあったっけ?」と原作を読み返してしまいました。
橋本 そんなふうに、アニメが少しでも気に入ったらぜひ原作と見比べてほしいですね。「こんなシーンがあるんだ」とわかって、2倍楽しめると思います。
クラスメイト全員のスピンオフが作れるほど細かい設定がある
──原作は、クラスメイトのみんなにも細かい設定がありますよね。
橋本 すごいですよね、全員かわいいですし(笑)。安野さんから全キャラのデザインをもらったときも、かわいいから早くファンに見せたいとアニプレックスさんからお願いされたくらいです。でも結局、クラスメイトよりも、まずはメインの4人を好きになってもらおうということになりました。
篤見 最初は何人か固定メンバーがいたくらいで、きっちりとは決めていませんでした。でも思いつくままに描いていたらかなりの人数になってしまいかねないと。それからきちんと人数と設定を決めて作りました。
橋本 全員かわいくて、それぞれが部活は何に入っているとか誰と誰が仲がいいとか細かい設定まで決まっているから、いくらでもスピンオフを作れそうです。延々と終わらないでしょうけど(笑)。1話に教室で全員が座っているカットがありますけど、「あれ、花名が目立たないなあ」と思って(笑)。
篤見 「スロウスタート」を知らない人の前にクラスメイト全員を並べたら、花名たち4人がメインと言われても信じられないかもしれません。特徴的なビジュアルのたまてと冠はみんなメインに選ぶかもしれないですけど……(笑)。
橋本 5人目として、岩崎敬や藤井ばんびとかがグループにいてもおかしくない。
篤見 岩崎さんは見た目が気に入っています。
──存在感あるクラスメイトたちの背景には、そんなやり取りがあったんですね。
橋本 アニメを作る側としては、ありがたい反面、大変なところもあります。「うしろにこの娘とこの娘がいたらおかしいよね」とか「この2人がしゃべっているのが自然」みたいなことにも気をつけなければいけないので。
──栄依子を密かに慕っている椿森が画面にいないとおかしいシーンとかもありそうですしね。
橋本 ありますね。
篤見 椿森がオープニングにあんなにはっきり出てくるとは思いませんでした(笑)。
橋本 クラスメイトに関しては、色を付けるのも大変だったと思います。制服こそ一緒ですけど肌や目の色が違うし、少しずつ着こなしも違う。カーディガンやセーターの色も違うし(笑)。
篤見 そういった色彩の設計は、私がずっと大ファンだったホカリカナコさんにやっていただけてすごくありがたいです。
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かわいく見せたいから服はよく着替えさせる。ごめんね作画の人
- テレビアニメ「スロウスタート」
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- 放送情報
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- TOKYO MX:毎週土曜24:30~
- とちぎテレビ:毎週土曜24:30~
- 群馬テレビ:毎週土曜24:30~
- BS11:毎週土曜24:30~
- 関西テレビ:毎週木曜26:25~
- テレビ愛知:毎週火曜26:05~
- AT-X:毎週月曜20:00~
©篤見唯子・芳文社/スロウスタート製作委員会
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1944円 / SVWC-70331~2
- V.A.「スロウスタート キャラクターソングアルバム Step by Step」
- 2018年3月14日発売 / アニプレックス
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2700円 / SVWC-70333
- 篤見唯子(トクミユイコ)
- 「スロウスタート」をまんがタイムきらら2013年7月号より連載中。そのほか代表作に、テレビアニメ化された「瓶詰妖精」など。
- 橋本裕之(ハシモトヒロユキ)
- フリーの演出家、監督として多数のアニメ作品に携わる。監督作に「ご注文はうさぎですか?」シリーズ、「魔法少女育成計画」「ようこそ実力至上主義の教室へ」など。