2018年1月より放送中のテレビアニメ「スロウスタート」は、まんがタイムきらら(芳文社)で連載中の4コママンガを原作とした学園コメディ。病気で入試を受けられず浪人してしまい、1年遅れで高校に入学した少女・一之瀬花名(はな)が、周囲にそのことを隠しながら学校生活を送る様子を描いている。
コミックナタリーでは、原作者・篤見唯子とアニメの監督を務める橋本裕之の対談をセッティング。ナイーブなヒロインの心情を「足の動きで表現したいと思った」という演出へのこだわりや、百合好き必見のエピソードや水着回など、これから放送される要注目エピソードについても語ってもらった。
取材・文 / はるのおと
Story
──しあわせは、ゆっくりはじまる。
おたふく風邪のせいで入学試験を受けられず、中学浪人となってしまった少女・一之瀬花名。落ち込む彼女に母は「花名のことを知らない人ばかりの環境ならやり直しができるでしょ」と、従姉妹の志温が管理人をするアパートで1人暮らしを始めることを提案する。
親元を離れ、誰も知らない学校で1年遅れの高校デビューを迎えた花名。百地たまて、十倉栄依子、千石冠という友達もでき、不安だった学校生活は好調な滑り出しを見せる。浪人という事実をみんなに隠しながら──。
Character
一之瀬花名(いちのせはな)CV:近藤玲奈
中学浪人し、誰も自分を知らない場所で再スタートを切るため従姉妹の志温が管理人をしているアパート“てまりハイツ”で1人暮らしを始める。気遣いのできる優しい子。でも、ちょっと涙もろい。素直なのでなんでも信じる。
京塚志温(きょうづかしおん)CV:M・A・O
花名の従姉妹のお姉さん。花名が1人暮らしをしているアパート“てまりハイツ”の管理人を務めている。優しくておだやかな性格で、ちょっと天然。ナイスバディの持ち主。
「遠回りしてよかったでしょ?」これが作品で伝えたいこと
──テレビアニメの放送が始まり、取材当日の1月16日時点では第2話までが放送されています。アニメを観られてのご感想は?
篤見唯子 みんながとにかくかわいい。あと志温ちゃんにびっくりしました。
橋本裕之 びっくりと言うと、どんなところが?
篤見 すごく胸が揺れるなって(笑)。
橋本 そりゃあ、あれだけでかかったら揺れるでしょう(笑)。
──キャラが生き生きと動いていて、1話の冒頭からすごく力が入っていますよね。その中でも、志温の胸が揺れて、さらにその揺れを表現する専用のSEまで付いていたのには驚かされました。
橋本 あそこはキャラクターデザインの安野将人さんが作画を担当されていて、とてもこだわっていました。SEも、最初は普通に歩いている音が付いていたのだけど「いや、そうではなくて胸に音を付けてください」と指示を出してました。おかげで「最初から視聴者を釘付けにしよう」という仕上がりになりました。
篤見 志温が「高校の制服できたわよ」って持ってきたことに花名が「えっ」って驚くシーンなんですけど、見ているこっちは胸に気を取られてしまい、花名が何に驚いたのかもよくわからないくらいのインパクトで(笑)。私は、志温に呼ばれて花名が振り返ったときの髪がふわーって揺れるのがすごくいいと思いました。
橋本 その辺もやっぱり安野さんの仕事ですね。彼はまんがタイムきらら系のマンガが大好きで、中でも「スロウスタート」は好きだったらしく。最初に紹介されたときも、まだ作業をお願いすると決まっていないのにラフを描いて持ってきてましたからね。もう愛が深すぎて、熱がすごい(笑)。本当にありがたいです。
──篤見さんが、その熱を特に感じたところはありますか?
篤見 花名が部屋でお母さんと電話しているときに足の指をもじもじと動かしているんですよ。そこがかわいくって。
橋本 あれはどうしても入れたいカットでした。最初、花名はどちらかと言うと後ろ向きなんですけど、1話の最後では自分からみんなの輪に入っていく。そういう気持ちの動きを足で表現したいと思い、篤見さんがおっしゃった部分もまさにそうで。クラスメイトといるときはずっと緊張している花名でも、お母さんと電話で話すときは家族だからリラックスするんだというところを見せたかった。「大丈夫よ、花名はいろいろ考えすぎるんだから」ってお母さんが言うように「少し考え過ぎているだけで、別に根っからの寂しい子じゃないよ」って、花名の素が見ている人に伝わればいいなと。
篤見 花名は、2話くらいまでかわいそうな雰囲気があるんですよね。みんなに付いていけていない感じがして。
橋本 出会って間もないうちは気も抜けないし、関係性ができあがっていないのでやりとりもぎこちないですよね。3話目くらいまで進むと入学から時間が経ち、だいぶ友達らしくなってきますが。
篤見 最初はお互いに、対処に困ってる感じがするんですよね。
──確かに、原作1巻は花名が浪人していることを後ろめたく思い悩んでいて、少しシリアスな空気が強いです。
橋本 もちろん花名が暗いわけでも、うじうじしっぱなしなわけでもないけど、そうした雰囲気がある作品をどうアニメ化するかは考えましたね。アニメの場合、雑誌と違って1話で「面白くないな」とか「嫌だな」と思われると、もう2話は観てもらえない。と言っても1話で「スロウスタート」の魅力をすべて表現しきるのは不可能なので、まずは自己紹介と2話への引き作りに徹しました。それで2話や3話を観ていただいて、キャラクターのこともだんだんとわかって、それ以降も観てもらえればいいかなと。ただ原作を読むとわかるんですけど、3話の誕生日エピソードから先は、結構明るく楽しい感じになりますよね。
篤見 当初の花名だったら、誰かが「大丈夫だよ」と話しかけても「でも」とか言っちゃうと思うんですよ。でも最近の花名なら「みんなになら浪人のことを明かしても大丈夫かも知れない」と思えるはず。だから、もし打ち明け話をすることになっても、それほど暗いことにはならないでしょう。
橋本 そういう友達に会えたことが、花名にとっては一番幸せなことだと思うんですよ。変な話ですが、花名は浪人しなければそんな友達に会えなかった。もちろん違う人生だったらまた違う友達がいたのかもしれないですけどね。1話のBパートで栄依子が「遠回りしてよかったでしょ?」って言いますけど、このセリフが「スロウスタート」の伝えたいことだろうと捉えています。
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制作スタッフの関係も「スロウスタート」だった
- テレビアニメ「スロウスタート」
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- 放送情報
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- TOKYO MX:毎週土曜24:30~
- とちぎテレビ:毎週土曜24:30~
- 群馬テレビ:毎週土曜24:30~
- BS11:毎週土曜24:30~
- 関西テレビ:毎週木曜26:25~
- テレビ愛知:毎週火曜26:05~
- AT-X:毎週月曜20:00~
©篤見唯子・芳文社/スロウスタート製作委員会
- アニメ「スロウスタート」Vol.1
- 2018年3月28日発売 / アニプレックス
-
完全生産限定版 [Blu-ray]
7560円 / ANZX-12121~2 -
完全生産限定版 [DVD]
6480円 / ANZB-12121~2
- 篤見唯子「スロウスタート①」
- 発売中 / 芳文社
- STARTails☆「ne! ne! ne!」
- 2018年1月24日発売 / アニプレックス
-
初回限定盤 [CD+Blu-ray]
1944円 / SVWC-70331~2
- V.A.「スロウスタート キャラクターソングアルバム Step by Step」
- 2018年3月14日発売 / アニプレックス
-
初回限定盤 [CD]
2700円 / SVWC-70333
- 篤見唯子(トクミユイコ)
- 「スロウスタート」をまんがタイムきらら2013年7月号より連載中。そのほか代表作に、テレビアニメ化された「瓶詰妖精」など。
- 橋本裕之(ハシモトヒロユキ)
- フリーの演出家、監督として多数のアニメ作品に携わる。監督作に「ご注文はうさぎですか?」シリーズ、「魔法少女育成計画」「ようこそ実力至上主義の教室へ」など。