「少年院ウシジマくん」宮世琉弥が「闇金ウシジマくん」のさらなる沼へ、若かりし丑嶋馨に何を思うか

真鍋昌平「闇金ウシジマくん」の公式スピンオフとして、マンガワンおよび裏サンデーで連載中の「少年院ウシジマくん」。まだ闇金に出会っていない若かりし丑嶋馨の姿が、「闇金ウシジマくん外伝 らーめん滑皮さん」も手がける山崎童々によって描かれている。

「少年院ウシジマくん」の最新4巻発売に合わせ、コミックナタリーでは俳優でアーティストの宮世琉弥にインタビュー。「闇金ウシジマくん」「闇金ウシジマくん外伝 らーめん滑皮さん」を原作とするドラマ「闇金ウシジマくん外伝 闇金サイハラさん」に出演し、現在20歳と作中の少年たちに年齢が近い宮世は、本作にどのような感想を抱いたのか。作品の話題から派生し、自身に影響を与えた父親の存在、芸能活動において大切にしているポリシーなどについても語ってもらった。

取材・文 / ちゃんめい撮影 / 宇佐美亮ヘアメイク / SUGA NAKATA(GLEAM)スタイリスト / 徳永貴士

「少年院ウシジマくん」
原作:真鍋昌平 漫画:山崎童々

「少年院ウシジマくん」カット

舞台は少年院、主人公は15歳の丑嶋馨。中学2年生の冬、丑嶋は鰐戸三兄弟との抗争の末、鰐戸三蔵の頭部に金属バットを振り下ろし、傷害罪で少年院に収院された。初めての少年院、丑嶋は何を思うのか。時を同じくして級友の柄崎は、のちに就職することとなる闇金融・シシックを経営する獅子谷と接触し……。

「闇金ウシジマくん」で語られなかった若かりし丑嶋たちの、青く鋭利で殺伐とした日常を描く群像劇。フィール・ヤング(祥伝社)などで女性向け作品を発表していた山崎童々が描くことによって、これまでのシリーズとはまた違うタッチの丑嶋たちを見ることができる。

知られざるバックボーンに驚く、「少年院ウシジマくん」の魅力

──ドラマ「闇金ウシジマくん外伝 闇金サイハラさん」で硲悠斗役を務めるなど、マンガの実写化作品に出演されることの多い宮世さんですが、普段からマンガは読まれますか?

たくさん読みます。「ビー・バップ・ハイスクール」のようなヤンキーマンガや、「北斗の拳」「グラップラー刃牙」「ジョジョの奇妙な冒険」といった長編名作に、「プロゴルファー猿」や「オバケのQ太郎」「パーマン」などの藤子さん作品……。父親がマンガ好きなので、その影響もあって親世代のマンガをよく読んでいます。

──かなり幅広く読まれていますね。

あと、マンガといえば僕の地元の宮城県に石ノ森萬画館という石ノ森章太郎先生のマンガミュージアムがあるのですが、幼い頃に家族みんなでよく遊びに行った思い出の場所なんです。「サイボーグ009」に登場するサイボーグ戦士たちの等身大フィギュアが展示されていたり、石ノ森章太郎さんの作品の世界観を楽しめるんです。

宮世琉弥

宮世琉弥

──そんなマンガと近い距離で育った宮世さんですが、初めて「少年院ウシジマくん」を読んだときどんな感想を抱きましたか?

もともと「闇金ウシジマくん」を読んでいたので、まさかあの丑嶋たちにこんなバックボーンがあったなんて!と驚きました。若かりし丑嶋が少年院で仁科をはじめとするいろいろな境遇の少年たちと出会って成長して、だんだんと現在の丑嶋馨が形成されていく……。大前提、丑嶋は罪を犯したから少年院にいるので肯定できるものではありませんが、その成長過程に胸を打たれると言いますか、なぜか彼に正義を感じてしまうような不思議な作品でした。

──作中には丑嶋以外にも、少年時代の柄崎と加納、獅子谷兄弟の兄が登場するなど「闇金ウシジマくん」の始まりをたどるような作品になっています。

滑皮も登場しますよね。彼が登場したとき「うわ! 出てきた!」って思わず盛り上がってしまいました(笑)。「闇金ウシジマくん」を語るうえで欠かせないキャラクターたちが若い頃の姿で登場するというのは本当に自分の中で盛り上がりました。

丑嶋の人としての青さ、ブレているからこその面白さ

──特に印象に残っているシーンはありますか?

仁科が出院するシーンが一番好きです。掃除中の丑嶋がこっそり仁科を見送りに来て、何か言葉をかけたいけど、少年院では教官の許可なしに会話をしてはいけない。それで、丑嶋は送別の言葉の代わりに五訓(※少年院に入所すると読まされる教訓のこと)を叫ぶんです。2人の内に秘めた友情に思わず胸が熱くなりますし、ここで丑嶋に自分の芯が芽生えたように思うんです。ようやく丑嶋馨のスタートが切れたみたいな感じでとても印象深いシーンです。

──そうでしたね。

「少年院ウシジマくん」3巻より、仁科の出院シーン。
「少年院ウシジマくん」3巻より、仁科の出院シーン。

「少年院ウシジマくん」3巻より、仁科の出院シーン。

あと、猪背組の熊倉さんが大暴れするシーンでは思わず圧倒されてしまいました。熊倉さんが滑皮の彼女を傷つけた辰岡組に報復するのですが、その方法がもう容赦なくて。なんだか族とヤクザの違いみたいなものを見せつけられたように感じます。その後、滑皮は熊倉さんに忠誠を誓いますが、熊倉さんが彼を迎え入れるときの振る舞いも本当にカッコいいんです。ドラマだと僕は熊倉さんに銃を向けられてしまっているんですが(笑)。

「少年院ウシジマくん」4巻より、猪背組のヤクザ・熊倉が大暴れするシーン。熊倉は悶主陀亞連合(もんすたあれんごう)総長の滑皮に接触し、彼をヤクザの道に導く。
「少年院ウシジマくん」4巻より、猪背組のヤクザ・熊倉が大暴れするシーン。熊倉は悶主陀亞連合(もんすたあれんごう)総長の滑皮に接触し、彼をヤクザの道に導く。

「少年院ウシジマくん」4巻より、猪背組のヤクザ・熊倉が大暴れするシーン。熊倉は悶主陀亞連合(もんすたあれんごう)総長の滑皮に接触し、彼をヤクザの道に導く。

──特にお気に入りのキャラクターを挙げるとすると誰ですか?

仁科が大好きです! 彼の少年院内での振る舞い、そして出院後に選んだ道。そのすべてに筋が通っているように思うんです。仁科は自分の考えに強い信念を持っていて、それを絶対に曲げない。作中の細かいシーンで彼のそういった一面を垣間見るたびに、すごくカッコいいなと心を打たれます。

──なるほど。

丑嶋と同室の仁科。院内での素行もよく、頭がいいと教官からは評価されている。

丑嶋と同室の仁科。院内での素行もよく、頭がいいと教官からは評価されている。

あと、樺谷は今後の動向が気になるキャラクターです。すごく口が達者で、私利私欲のために平気で人を欺く悪いキャラなのですが、物語的にはすごくいいキャラクターなんです。「少年院ウシジマくん」のようなアンダーグラウンドな世界では、むしろ樺谷みたいなキャラが生き方的には正しいと言いますか、強く生き残っていけるんでしょうね。

宮世琉弥

宮世琉弥

──本作を読んだことで、「闇金ウシジマくん」のときから印象が変わったキャラクターはいましたか?

やっぱり丑嶋じゃないでしょうか。基本的な人柄や性格は現在の丑嶋馨に通じるものがありますが、「少年院ウシジマくん」の丑嶋はまだ人としての青さがある状態。少年院に入ったばかりの彼は、どちらかといえば本能的に動いているように見えますが、仁科や同じ寮の少年たちと出会ったことで成長していく。かと思えば、衝撃的な別れや事件が起きてまた揺らいでいく……。そういったブレている丑嶋が見れるのは本作だけですし、ブレているからこその面白さがあるなと思います。

「少年院ウシジマくん」1巻より、少年院に収容された当初の丑嶋。出院したら、知り合いの解体業者で働かせてもらう予定だと言っていた。

「少年院ウシジマくん」1巻より、少年院に収容された当初の丑嶋。出院したら、知り合いの解体業者で働かせてもらう予定だと言っていた。

父から学んだ「筋を通す」というポリシー

──ここからは作品と絡めて宮世さんご自身のことについてお伺いします。本作は丑嶋の人間性を形成した少年時代のお話でもありますが、宮世さんが少年時代に出会って影響を受けた人や出来事について教えてください。

父親です。幼い頃、僕の父に会社の会食に連れて行ってもらったことがあったのですが、家族でいるときと仕事をしているときの父の姿がまったく違うことに衝撃を受けました。でも、それと同時にすごく勉強になったんです。例えば、正座の仕方や会食でのマナーなど、ビジネスシーンでの礼儀や振る舞いを父の姿を見て学びました。

──今回の取材中、宮世さんの振る舞いや言葉選びがとても丁寧だと感じたのですが、それはお父様の影響だったんですね。作中で丑嶋は「ダサい生き方は選ばねぇ」としきりに言っていますが、宮世さんが人生において大切にしているポリシーをあげるとしたらなんですか?

筋を通すことです。これも父親の影響からくるものなのですが、父はやるといったことは必ずやり通す、絶対に曲げない人なんです。

──なるほど! だから先ほど好きなキャラクターで仁科を挙げられていたんですね。

そうです。筋を通す人、大好きなんです(笑)。

──仕事をするうえで大切にしたい心構えでもありますよね。

確かにお仕事の面でも活きていると思います。幼い頃、両親から「やりたいことをやりなさい」と言われて育ち、自分の意思で芸能界に入りました。両親も応援してくれて毎日事務所のレッスンに励んでいたのですが、いろいろあったときに「たまにはレッスンを休んで友達と遊びたい」と言ってしまったんです。そしたら父から「自分からやりたいと言った活動なのにそれを曲げるな!」と怒られたんです。この言葉がいまだに染み付いていて……。それ以来、どんな状況でもこのお仕事を辞めたいなんて思ったことは一度もありません。

宮世琉弥
宮世琉弥

宮世琉弥

どのルートから入っても「闇金ウシジマくん」の世界に沼る

──「少年院ウシジマくん」最新4巻では、丑嶋と同じ寮で過ごし友情を育くむも、とある事件をきっかけに自殺した三國の兄が少年院にやって来ます。一方で外の世界では、熊倉のもとについた滑皮に制裁を加えようと獅子谷が動き出すなど、熾烈な展開が待ち受けています。宮世さんは、今後丑嶋たちはどうなっていくと予想しますか?

三國の死はどのキャラクターの立場から見ても本当にしんどくてつらいからこそ、実は生きていた!という展開だったらいいなと思わず願ってしまいます。あと個人的には、丑嶋には早く出院してもらって仁科と再会してほしいです。丑嶋と仁科が少年院ではなく外の世界で会ったとき、変わらず友情を育むのか、それとも敵対していくのか。いっそ会わないという展開もありますが、2人にどんな化学反応が起きるのか楽しみで仕方がないです。

宮世琉弥

宮世琉弥

──最後に、「少年院ウシジマくん」を未読の方にオススメするとしたらなんと伝えますか?

「闇金ウシジマくん」を読んだことがある人なら、丑嶋たちの知られざるバックボーンに触れることができるこのうえない展開が待っています。反対に「少年院ウシジマくん」から読み始める人は、これから彼らのその後である「闇金ウシジマくん」を知れるというお得感があると思います。どのルートから入っても「闇金ウシジマくん」という世界に沼る未来が見えますね(笑)。あと、本作で描かれる世界は馴染みがない人の方がほとんどだと思いますが、この物語に触れることで今まで知らなかった世界を見る……。視野が広がっていくような感覚があります。ぜひ、1つの人生体験として「少年院ウシジマくん」を読んでみてほしいです。

プロフィール

宮世琉弥(ミヤセリュウビ)

2004年1月22日生まれ、宮城県出身。2019年、ドラマ「パーフェクトワールド」で俳優デビューする。出演作はドラマ「恋する母たち」「村井の恋」「君の花になる」、映画「恋わずらいのエリー」「おいハンサム!!」など。8月29日世界配信開始のNetflixシリーズ「恋愛バトルロワイヤル」にも出演している。またアーティスト・Ryubi Miyaseとしても活動中。2025年1月に国立代々木競技場第一体育館で2Day公演が控えている。