コミックナタリー Power Push - 「食戟のソーマ 弐ノ皿」
原作者・附田祐斗×米たにヨシトモ監督対談 全力で駆けるキャラを描く
超絶的な画力で料理マンガを描く(附田)
米たに 料理のシーンを描くうえで取材は欠かせませんよね。佐伯先生は「最初は何がなんだかちんぷんかんぷんだった」と言ってましたけど(笑)。
附田 「食戟のソーマ」は料理研究家の森崎友紀先生に料理監修で入ってもらっていますが、最初はその知識量についていくのが大変でしたね。森崎先生に「こういうのはどうですか?」と、マンガに使えそうなアイデアを提案していただいても、それがどういうものなのかがわからないことがあって(笑)。だから必死で料理レシピ本とかフランス料理の事典を読んで勉強しましたね。最近は自分でも取材へ行くようになって、なんとか森崎先生の知識に追いつくようになってきたかなと思います。
米たに そういう料理のアイデアを絵に落としこむのは、佐伯先生も大変でしょうね。しかもあの緻密な絵で週刊連載ですから。
附田 初代担当編集さんは「料理マンガって、今はあんまり超絶的な画力でやってる人がいないよなあ」とおっしゃってましたね。だから「画力のある佐伯俊が料理マンガをやるのっていいと思うんだよね」と。やっぱり佐伯先生の絵をアニメにするのって難しいですか?
米たに いやー、苦しいですよ(笑)。アニメでやると色も着きますし、佐伯先生の超画力の絵を動かさなければならない。どうすれば料理を美味しく見せられるか常に悩んでいます。あと「食戟のソーマ」って、マンガゆえに成立してる手法もいっぱいあると思うんですよ。例えば、マンガだと調理中に2時間経過したっていうことを、コマとコマの行間で表現できますけど、アニメだと音楽も続いているので、ごまかしきれなかったりするんです。冷蔵庫に入れて1時間待ちますとか(笑)。これは料理ものならではの難しさだと思うんですが。
創真は熱血キャラじゃない(附田)
附田 アニメ第1期の第1話に、創真が親父から「今日は店開けなくていいぞ」って告げられるシーンがあるじゃないですか。その中に、なんでもない夕焼けのシーンがパッ、パッ、パッと入ってるんですね。そこを見て「うわー、わかってもらってる」と感動しました。あの一連のシーンには創真が遠月学園という戦場に行く前の、最後の静寂があるなと思って。あの夜に創真の日常が終わる。そこを上手く表現していただけたのはうれしかったです。
米たに 実はあの第1話は、昨今のアニメの第1話としては禁じ手というか……。アニメは1話目で視聴者の興味を引かなきゃいけないので、普通なら遠月学園の編入試験を受ける原作の第2話から始めるべきなんですよ。レギュラーキャラが登場しない、日常っぽい描写が多い原作の第1話のようなエピソードは、後から回想で入れるのがセオリーというか。だけど、逆もまた真なり。ありがちじゃないところを目指すためにも、あえてプロローグからスタートしてみたんです。
──アニメ化にあたり、附田先生から要望を出すことはあったんでしょうか。
附田 僕は「アニメはアニメのプロに任せた方がいい」と思っていて、ほとんど口は出しませんでした。創真の性格についてくらいですね。「幸平創真は熱血キャラじゃないんです。あいつは誰よりも飄々としているし、実力を認めないやつにはとことん冷たいんです」って。だからオーディションでも「熱血キャラで演じられると困る」って話していましたね。それ以外の演出面は全部アニメスタッフの方にお任せしていました。ただ、「ここは原作でダレてる部分なので、巻きでお願いします」と言ったりした場面もありましたけど(笑)。
米たに 附田先生の応援アドバイスにはメンタル的にもだいぶ救われました。創真はとにかくキャラクターとして難しいんですよ。アニメのスタッフは主役という型に入れて熱血に描きがちになるというか、主人公オーラを出したがるんです。そのほうが描きやすかったりしますし。そこをあえて抜いて、飄々とさせていくというのはなかなか大変でしたね。
第1期が競歩なら第2期は全力疾走(米たに)
──アニメの第1期は「原作をかなり忠実に再現している」という印象を受けたのですが、第2期では「次はアニメならではの遊びや表現を盛り込んでみよう」という考えはあるのでしょうか?
米たに 基本的には第1期を作ったときの「できる限り原作をちゃんとアニメに変換する」という気持ちを引き継ごうと考えています。もちろん第1期でも変更しているところはいくつかあるんですけども、それは作品を活かすための変更であって、変えたいから変えるということじゃないんですよ。原作の魂をしっかり表現するというのを心がけたうえで、単行本のカバー裏に入っているような小ネタも活かしてあげると、原作未読の視聴者も原作を読んでみたいという気持ちになるんじゃないかと思って盛りこみました。
附田 アニメ第1期の予告で薙切アリスが黒木場リョウに、「(リンゴを)どうしてうさぎさんにしないの?」と怒るところまで拾っていただいていたのは感動しました。あれは公式のTwitterで描いた細かいネタなので。
米たに マンガのどこにも載っていない(笑)。そういう目に見えない魂も拾って、世界観をより伝わりやすくできるように心がけたのが第1期なんですよ。第1期は2クールありましたが、第2期は1クールなので、ちょっとスピードアップさせています。第1期が競歩のスピードだったとすると、第2期はもう全力疾走ですね(笑)。尻切れにならないようにするためにも、それくらいの疾走感でキャラが青春を駆け抜けていく姿を描こうと心がけています。
──第2期で描かれる選抜の本戦は、試合の回数も多いですしね。
米たに その辺りは附田先生も、原作を描いていてダレさせないようにするのは、大変だったんじゃないですか。
附田 ホントにつらかったですよ。
米たに (笑)。アニメで戦いが「次回に続く」になると、どうしても視聴者に「また『続く』か……」と思われちゃうんですよ。なので「1話の中でどこまで納得のいく形として決着させられるか」というのを心がけて構成させてもらっています。
附田 原作だと単行本になってしまえば一気に読めるところですけど、アニメって30分という枠でキメなきゃいけないですしね。
次のページ » 10話先まで話を決めても、どこかで180度変えていく(附田)
放送情報
- MBS:2016年7月2日より毎週土曜26時28分~
(※初回放送は7月2日26:58~ ) - TOKYO MX:2016年7月2日より毎週土曜22時00分~
- BS11:2016年7月3日より毎週日曜25時30分~
- アニマックス:2016年7月12日より毎週火曜22時00分~
(※リピート放送:2016年7月12日より毎週火曜27時00分~ ほか)
スタッフ
- 原作:附田祐斗・佐伯俊 協力:森崎友紀
(集英社「週刊少年ジャンプ」連載) - 監督:米たにヨシトモ
- シリーズ構成:ヤスカワショウゴ
- キャラクターデザイン:下谷智之
- 音響監督:明田川仁
- アニメーション制作:J.C.STAFF
- 音楽:加藤達也
キャスト
- 幸平創真:松岡禎丞
- 薙切えりな:種田梨沙
- 田所恵:高橋未奈美
- 葉山アキラ:諏訪部順一
- 黒木場リョウ:岡本信彦
- タクミ・アルディーニ:花江夏樹
- 新戸緋沙子:大西沙織
- 薙切アリス:赤﨑千夏
- 美作昴:安元洋貴 ほか
Blu-ray Disc「食戟のソーマ 弐ノ皿 第1巻<初回仕様版>」 / 2016年9月28日発売 / 7020円 / ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
DVD BOX「食戟のソーマ 弐ノ皿<初回仕様版>」 / 2016年11月23日発売 / 9612円 / ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
- DVD BOX「食戟のソーマ」 / ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
- 2016年8月24日発売 / 上巻<初回仕様版>(1~12話収録)/ 9612円
- 2016年9月28日発売 / 下巻<初回仕様版>(13~24話収録)/ 9612円
附田祐斗(ツクダユウト)
福岡県出身。2010年に週刊少年ジャンプ(集英社)にて、サッカーを題材にした「少年疾駆」で連載デビューを果たす。その後、佐伯俊とタッグを組み、2012年より週刊少年ジャンプにて「食戟のソーマ」を連載開始。同作はテレビアニメ化、ゲーム化、ノベライズなどさまざまなメディアミックスが展開されるヒット作となる。
米たにヨシトモ(ヨネタニヨシトモ)
アニメーション監督。代表監督作品に「笑ゥせぇるすまん」「勇者王ガオガイガー」「ベターマン」「BRIGADOO まりんとメラン」「星の海のアムリ」 「Dororonえん魔くんメ~ラめら」、映画「ザ・ドラえもんズ」シリーズ、「劇場版TIGER&BUNNY」シリーズなど。