〇〇ができない兎鞠まりが嫉妬「ちょっとずるいやん!」
──作中の優希に共感できる場面はありましたか?
配信者の視点になっちゃうんですけど、VTuberにとって“ママ”と呼ばれるイラストレーターさんや、“パパ”と呼ばれるモデラーさんへのリスペクトの気持ちをちゃんと持っているんだなとわかる場面が多くて、そこに共感しました。
──兎鞠さんのデビュー時のイラストはご自身で手がけられたものですが、2021年からはイラストレーターのなつめえりさんによるキャラクターデザインになっています。ですから、兎鞠さんにとっては、ご自身となつめさんが“ママ”ということですね。
はい、兎鞠となつめえりママはプライベートでもときどきご飯を食べに行ったり、仲良くしていただいています。あとは優希くんが「かわいい」と言われることにだんだん慣れてくるところも、わかるなあって。
──兎鞠さんは以前は「かわいい」というコメントに、「兎鞠の中身はおじさんだよ」と牽制することもあったようですが、さすがに慣れたんですね。
さすがに慣れましたし、もう言ってほしいですね、むしろ! 小さい頃から「かわいい」って言っていただくことが割と多くて、もともとちょっと慣れてはいたんですけど。中学校の制服の採寸で女性用のサイズで測られたりとか、女の子と勘違いされてしまう優希くんに近い経験もしていて(笑)。自分もこういうことあったなって思う場面が多くて、少し恥ずかしくなりました……。
──まさしく優希のような経験をされていたとは……!
はい(笑)。逆にASMR配信ができたり、あざといセリフをすらすら言えるところは、もう絶対自分にない部分ですね。なんか恥ずかしくなっちゃうんですよ……。だから、そういうことできるのって「ちょっとずるいやん!」って思いますね。
──配信中のゆかが繰り出すあざとい言動は視聴者や、ママであるイラストレーターの柿崎ゆること遊佐薫や、大手事務所に所属する人気VTuber・浮雲ふわりとして活動する空木華のハートを撃ち抜いていきます。
ゆかちゃんがゆるママのお膝に乗せてもらったときに、破壊力満点のひと言を放ったじゃないですか? あれ、ずるいですよねー!
──先ほどご自身にはできないとおっしゃっていましたが、できるのであればやってみたいですか?
いやちょっと……(考え込む)、恥ずかしいですね! 兎鞠には厳しいんじゃないでしょうか。それに兎鞠の場合、なつめえりママのお膝に乗っかるってことですよね!? これも公表しているんですけども、兎鞠って身長が182cmあるのでなつめえりママを潰してしまう……! だからやっぱり無理ですね!
“中の人”たちも含めたラブコメも魅力的
──「失恋したのでVtuberはじめたら年上のお姉さんにモテました」ではタイトルの通り、優希がVTuber活動をきっかけにさまざまな女性たちと出会い、彼女たちから思いを寄せられることとなります。先ほど話に出た薫や華以外にも、優希が思いを寄せていた先輩・一ノ瀬遥や海外プロゲーマー・エミリーといった個性豊かなヒロインたちが登場しますが、兎鞠さんはどなたが気になりますか?
個人的には華ちゃんを応援しているので、「早くくっつけ!」のひと言に尽きますね! 優希くんがゆるママ(薫)とも仲良くなっていくのでそこくっついちゃうのかな、どうかなとちょっとヒヤヒヤしながら見ています。最初からその2人で優希くんを取り合っているシーンが多いじゃないですか。ライバル同士なのに、ゆるママがコミケのあとのご飯に華ちゃんも連れていって、優希くんをめぐって嫉妬し合うみたいなシーンがよかったです。
──コミケのシーンといえば、薫と初めて対面した華が大勢の人がいる前で「自分が浮雲ふわりだ」と堂々と名乗ることができないので、「例のアレ やらせてもらってる」とひそひそと自己紹介していましたね。
ね、言ってましたね(笑)。企業に所属しているVTuberのしっかりしたところがちゃんと出てるなと思いました。
──一方の優希は配信者と1対1で話せるイベントで、自分が白姫ゆかであることをあっさり明かしていました。配信者としてこの自己紹介はかなりヒヤッとされたんじゃないかと思ったんですが。
めちゃくちゃヒヤッとしましたね……! 「いいの!?」って思いました。そもそも優希くん、顔出しでモデル活動もしていてすごいですよね。VTuberじゃなくてもうYouTuberですよ!
──(笑)。ちなみに優希がゆかの活動の一環としてモデルにトライするきっかけになったのは、薫からの誘いでした。兎鞠さんはイラストレーターとしても活動されていたことがありますが、裏方としてもファンとしても優希を支える薫の姿は兎鞠さんの目にどう映りましたか?
自分が一生懸命がんばったお仕事で生まれたイラストが注目を浴びている様子を見る喜びってありますよね。ゆかちゃんが人気になってゆるママが喜ぶシーンはとても共感できました。だからゆるママも好きなんですが、やっぱり華ちゃんのビジュアルが好き!
──兎鞠さん一押しの華は、部屋の壁一面にゆかの写真を貼るなど、次第にゆかや優希へのヤンデレめいた執着心が明らかになっていきますが、そこのシーンはいかがでしたか。
明確に華ちゃんがいいなと思ったのは、そのお部屋でのシーンだったんですよ。それまでそんなにヤンデレみたいな気配ってあんまりなくて、ただただぐいぐい来る人なのかなと思ったんですが、お部屋を見て「めっちゃ好きじゃん!」って。
──びっくりするかと思ったんですが、逆にそのシーンが決め手になったんですね。
実際、「そう来たかー!」ってちょっと頭抱えちゃったんですけど。でも、そのときにいいキャラだなって思いました。華ちゃんがどういうふうに変化していくのか楽しみですし、今後の優希くんのいろんな恋愛模様も楽しみです。VTuberの恋愛を描くとなると、“中の人”たちも含めたラブコメになってくるので、そこも面白いポイントだと思います。
VTuber知識がない人こそ読んでほしい
──デビュー当初はあまり自分に自信が持てなかった優希ですが、ファンの声援を受けながら経験を積み、今では顔出しでモデルとして活動するまでに成長します。兎鞠さんは活動を通して自分が変わったと思うことはありますか?
あのときが転換期だったなと思う時期が自分の中でありまして。デビューしてから1~2年ぐらい、ゆるゆるとした配信が多くて、リスナーさんからもちやほやしていただいていたんですね。でもこの環境で続けてもVTuberとして伸びていかないんじゃないかってすごく悩んだんです。かわいいいだけじゃ人気も出ないし、このまま環境に甘えていくのはよくないなと思ったので、より多くの人を楽しませる方向に活動をシフトしたんですよ。その結果いろんな人に見てもらえるようになって、そこで初めて自信がつきました!
──思い切って挑戦したことが結果に結びついたことで自信につながったんですね。話は変わりますが、作中ではVTuberやリスナーが思わず頷いてしまうような“あるある”が随所にちりばめられています。兎鞠さんが配信者の視点で一番印象的だった“あるある”はなんですか?
チャンネル登録数の伸び方を見たときに、優希くんがめっちゃびっくりしてるところですね。兎鞠も登録者数が3桁増えたときは驚きましたし、1万人を超えたときに「もう1万人越えたんだ!」って思いましたから。それに何かきっかけがあると急に伸びたりするのでそこでも驚きますし。あとは、個人的に推していたVTuberさんとか推しのイラストレーターさんに認知されたときに「やったー!」ってなってるところも。兎鞠も同じ経験をしたことがあるので!
──優希はもともとふわりが推しだったので、彼女からコラボに誘われて本当にうれしそうでしたね。この作品では、優希が美少女の姿でデビューすることもそうですが、あっという間に人気になったことや顔出しでのモデル活動、周囲の女性がどんどん彼を好きになっていくことなど、優希にとって予想外なことで溢れています。兎鞠さんがこれまで約6年間の活動で予想外だったことはなんでしょうか。
さっきも少しお話ししましたが、チャンネル登録が伸びたことがものすごく予想外でした(笑)。もともとしゃべることが不得意でイラスト以外何も取柄がなかった自分が、人前に出てこういう活動して、たくさんの人に推してもらえたっていうことが一番の予想外です。人生って本当に何があるかわかんないですよね! だからこのマンガを読んで、何かの一歩を踏み出す人が増えたらいいなあって思います。
──ちなみに兎鞠さんは、このマンガをどういう人にオススメしたいですか?
そうだなあ……。意外とVTuberのことをあまり知らない人に読んでほしいなって思います。さっきも話に出たVTuberあるあるがいっぱいありますし、モデルの用意とかトラッキングのやり方とか、活動を始めるためにはこういう準備があるんだっていう知識がすごく豊富なので、そのあたりを読んでVTuberにも興味を持ってもらえたらうれしいです!
プロフィール
兎鞠まり(トマリマリ)
2018年7月から活動を続けているバーチャル美少女受肉系VTuber。主にゲーム実況、雑談をメインに個人で配信を行っている。