TVアニメ「進化の実~知らないうちに勝ち組人生~」が10月4日に放送開始。美紅によるライトノベルを原作とする同作では、いじめられっ子だった高校生・柊誠一がRPGのような異世界に飛ばされたことから物語が始まる。空腹のあまり、偶然見つけた“進化の実”を口にした誠一は、見た目がどんどんイケメンになり、チート級のスキルも得て、勝ち組人生を手に入れていく。レベル700超の“元”ゴリラである美少女・サリアとともに、冒険者として生きる誠一の姿を描くファンタジーだ。
コミックナタリーでは、誠一役の下野紘にインタビューを実施。誠一に共感を覚えるきっかけとなった学生時代の思い出や、稲田徹と花澤香菜が2人1役で演じたヒロイン・サリアへの思いを語ってもらった。なお下野がコミックナタリーの特集に登場するのは2019年以来約2年ぶり。アニメ・声優に大きくスポットが当たったこの2年間に感じたことを聞いた。
取材・文 / 佐藤希
叫びの演技に関してはいろいろ鍛えてきた
──「進化の実~知らないうちに勝ち組人生~」はいじめられっ子だった男子高校生・誠一が異世界で“進化の実”を食べたことで、見た目も中身もレベルアップしていく、という物語ですが、台本を読んでのご感想をお聞かせください。
台本を読ませていただいてまず思ったのが、「あ、すごいしゃべるな」と……。
──(笑)。
台本をめくってもめくっても、僕がしゃべっているなと。1話と2話が特にそう感じました。いろいろなキャラクターがたくさん登場する中で、僕だけがこんなにしゃべっていていいのかな(笑)、これがずっと続くのかなとドキドキしながら台本を読んでました。あと叫ぶシーンが多いですね。
──PVが解禁された際のコメントで下野さんは誠一役に「まぁ叫ぶ叫ぶっ!!(笑)」とおっしゃっていましたね(参照:アニメ「進化の実」第1弾KV&PV公開、井上麻里奈・稲田徹・西尾夕香の出演も発表)。本編を少し拝見させていただいたんですが、過去に下野さんが演じられたどのキャラクターよりも叫びのシーンが多いのでは?と思いました。
そうかもしれません(笑)。なんなら全編通じてずっと叫んでるんじゃないのかっていうくらい。特に第1話は、収録が終わったときに“やりきった感”がすごいと思ってました。アフレコのときにしっかり映像ができあがっていたので、キャラクターの表情もわかりやすくて怒りや悲しみ、喜びなど多種多様に叫ばせていただきました。
──収録はご苦労されたのではと思いましたが、いかがでしたか?
呼吸が厳しい場面もありましたけど、叫びの演技に関してはいろいろ鍛えてきたと思っていますし、僕は叫んでなんぼみたいな声優なので(笑)。誠一役はこれまでの積み重ねが実を結んだと思います。これだけ叫んで喉を壊さなくなってきたのは、今までいろいろなことをやってきたからだなと。ただ、ご覧いただく際はボリュームを少し下げていただいたほうがいいですよ、と視聴者の方にお伝えしたいです。
──いつも通りの音量で観ていたらびっくりされる方もいるかもしれないですね(笑)。RPG風の世界で誠一の冒険が描かれていきますが、あらすじを読んだご感想を伺いたいです。
思っていたより展開が早いというか、いろいろなことが次々と起こるので、僕自身も話が進むごとに驚いています。「こういう展開になるんだ!」という驚きが随所にあって、決してまったりさせてくれる物語ではないんだなと思っています。
男性ばっかりの声優イベントのような集中的なイジられ方
──下野さん演じる誠一は、元の世界では冴えないいじめられっ子でしたが、異世界で急にレベルアップしたことから見た目も中身も進化して、勝ち組人生を歩んでいきます。誠一についてはどういう印象をお持ちですか?
勝手ながら親近感を覚えています。僕も学生時代はクラスでもどちらかというとイケていないグループで、イケているグループの人たちにイジられていたので。わかりやすい例えで言うと、男性ばっかりの声優イベントに登場したときに、いきなり「最後は下野さんに歌っていただきましょう!」と振られるような、集中的ないじられ方(笑)。だからいろいろなことに振り回されている誠一に共感できるポイントが多いんです。
──ご自身の学生時代を重ねられたんですね。誠一は進化の実を食べたことによって急速にイケてる側に行きますが、その点はどう感じられましたか?
今まで冴えないポジションにいたから、なおさら本人は戸惑いますよね。いきなりイケている側に配置されると、「今までの生き方が無駄になるのかな?」とか「そういうふうに扱ってほしいわけじゃなかったんだけどな」と、丁寧に扱われて逆に寂しくなるような。その感情が誠一にもあるので、演じるうえでの戸惑いや不安のようなものはなかったですね。
──元の世界にいた誠一と、進化後の誠一だと全然顔が変わりますよね。痩せたのもありますが、回を追うごとに顔がカッコよくなっていきます。
監督からも「誠一が進化していくごとに声をカッコよくしていってほしい」と指導をいただいていて、演技を変えていっているんです。進化していって、誠一の“顔の安定期”に入るまでは多少声も試行錯誤していました。
──誠一がいきなり、見覚えのあるキャラクターに変わる場面も多々ありました。
そうですね(笑)。いきなり鼻がシャープになったり、彫りが深くなったり……。オマージュのようなものがあるな、と僕もびっくりしました。でも先ほどの、進化の過程で声を変えていく話のように、顔がコロコロ変わるのも、ある意味で進化の実の副作用的なものだと思ってやりきりました。
──物語のキーアイテム・進化の実ですが、もし下野さんが進化の実を食べたとしたら、どういうスキルが欲しいですか? 理想の姿も、もしよければ伺いたいです。
リアルな話をすると、もう少し皮と脂肪を落として……という理想の姿はあるのですが……。スキルだったら、空を飛べたらいいなと思います。どこか遠くに行ってみたい気持ちもあるのですが、都内だと移動がスムーズにいかなくて「もう!」と思うことがあるので、そうならないように。短距離の瞬間移動でもいいです。空を飛ぶスキルと瞬間移動能力はいつも欲しいと思っています(笑)。
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稲田さんが「私は花澤香菜」と思って演じている