「シャインポスト」キーワードは“嘘”、輝くアイドルたちの一筋縄ではいかない人間ドラマをキャストが語る

「シャインポスト」はコナミデジタルエンタテインメントとストレートエッジが贈るメディアミックスアイドルプロジェクト。世界観設定・小説執筆・脚本を駱駝、キャラクターデザイン原案をブリキと「俺を好きなのはお前だけかよ」のコンビが務めており、TVアニメでは監督を及川啓、アニメーション制作をスタジオKAIとアニメ「ウマ娘 プリティーダービー Season 2」のスタッフが担当している。またアニメ放送に先んじてキャスト陣によるライブイベントが開催されており、今後はゲームも展開予定だ。

コミックナタリーではアニメが放送されることを記念して、作中アイドルグループ・TINGSのキャストである青天国春役の鈴代紗弓、玉城杏夏役の蟹沢萌子、聖舞理王役の夏吉ゆうこ、祇園寺雪音役の長谷川里桃、伊藤紅葉役の中川梨花によるインタビューを実施。アニメのもとになった駱駝による小説の印象、それぞれが演じるキャラクターの魅力、アフレコやライブの裏話を語ってもらった。記事末にはTINGSのライブ衣装に扮したキャスト陣のフォトギャラリーも掲載しているので、お見逃しなく。

取材・文 / 齋藤高廣撮影 / 曽我美芽

TVアニメ「シャインポスト」あらすじ

大きな夢を抱くも、小さな成果しかあげられないアイドルユニット・TiNgSの玉城杏夏、青天国春、聖舞理王。崖っぷちの彼女らの前に現れたのは、敏腕マネージャーという触れ込みながらも、まるでやる気がない男・日生直輝だった。だが彼には1つ特別な力が備わっており……。“絶対アイドル”を目指す少女たちの物語が動き出す。

キーポイントは“嘘”、一筋縄ではいかないアイドルもの

──キャストの皆さんはアフレコ前に駱駝先生による小説版を読まれたとのことですが、その印象を教えてください。

鈴代紗弓(青天国春役) まずアイドルもののライトノベルが珍しいなと思いました。しかもアイドル側ではなくマネージャーの直輝くん目線で話が進んでいくので、男性主人公目線でどんなふうにアイドルの子たちと絡んでいくんだろうというところも興味があって。実際に読んでみると、現実にありそうな展開と、“嘘を言った人が光って見える”というファンタジー要素が絶妙な塩梅で混ざり合っているのが、この作品の大きな魅力のひとつなんじゃないかと感じています。あとはスポ根ものに近いアツさがあって、見守ってあげたくなるキャラクターが多いですよね。

左が青天国春、右が鈴代紗弓。

左が青天国春、右が鈴代紗弓。

蟹沢萌子(玉城杏夏役) 青天国春ちゃんが「世界中の人にアイドルを大好きになってほしい、輝く道標になりたい、それがシャインポストだ」っていうふうに言うんですけど、この“シャインポスト”っていう言葉がいいなと思いました。私も普段≠MEというグループでアイドル活動をしていて、アイドルのすばらしさや魅力がたくさんの人に届いてほしいという思いがあるので、このシャインポストっていう言葉はストンと腑に落ちたというか。読んでいるとTINGSのみんなの言葉に力をもらえて、同じアイドルとして「がんばりたいな」という気持ちになります。

左が玉城杏夏、右が蟹沢萌子。

左が玉城杏夏、右が蟹沢萌子。

夏吉ゆうこ(聖舞理王役) 私はキャラクターがみんな個性豊かだなと思いながら読み進めていったんですけど、読んでいくうちに1人ひとりにギャップがあるなと感じまして。例えば春ちゃんの第一印象は本当に王道のアイドル、かわいい子というイメージだけど、読み進めていくにつれて、そのイメージからすると意外な悩みを抱えているっていう。そんなふうにみんなが悩みを持っていて、解決に向かってがんばっていく。一見かわいい雰囲気を被った作品だけれども、ちゃんと読むと一筋縄じゃいかないアイドルものだなって。

左が聖舞理王、右が夏吉ゆうこ。

左が聖舞理王、右が夏吉ゆうこ。

長谷川里桃(祇園寺雪音役) 「シャインポスト」のキャラクターはすごく人間っぽいよね。アイドルもののキャラクターはキラキラしていてかわいくて、みんなを惹きつける魅力があるんですけど、この作品のキャラクターはそういう魅力の裏側に、今ゆうこちゃんが言っていたような葛藤を抱えているんです。私の中ではアイドルには嘘をついていてほしくない、アイドルと嘘って対極のものというイメージがあるんですけど、その嘘をわざわざキーポイントに使っているのがアイドルものとして新しいところだと思います。

左が祇園寺雪音、右が長谷川里桃。

左が祇園寺雪音、右が長谷川里桃。

中川梨花(伊藤紅葉役) 実は「シャインポスト」では初期段階に楽曲のレコーディングがあったので、その後に小説を読んだんですね。収録のときも歌詞を読みながら「こういうことかな」と想像していたんですが、実際に小説を読んだら「あ、歌詞のあそこはこういう意味だったんだ」って新しい解釈が生まれて。それぞれの楽曲に物語が絡んでいて、1人ひとりが成長したときの気持ちを歌ったものになっているんです。物語と曲が合わさって初めて届くものがあるなと思いました。

左が伊藤紅葉、右が中川梨花。

左が伊藤紅葉、右が中川梨花。

キラキラしているように見えても、その人なりの悩みや葛藤がある

──ご担当のキャラクターについてもお聞かせください。

鈴代 春ちゃんは気持ちを何重にもオブラートに包んでいる子なので、そういう意味では複雑なキャラクターで、すごく人間らしさがありますね。だからアイドルのキラキラした感じを出そうとすると、デフォルメした演技に偏ってしまいそうになるんですけど、リアルっぽい芝居も入れるよう意識しました。

──ご自身でも共感する部分はありますか。

鈴代 抱えているものそのものは自分とは違うんですけど、私も考えごとが多い人間なので、考えすぎていろいろ葛藤してしまうところは似ているなと思います。逆にキラキラしているところは憧れるんですけど、自分が「こういう人みたいになりたい」って思っている人とか、キラキラしているように見える人でも、その人なりの悩みや葛藤があると思うんですよ。そういう意味で、私は春ちゃんのことをすごく素敵だと思うけど、春ちゃんには春ちゃんなりの悩みがあって、そこがすごく現実的だなって感じました。

TVアニメ「シャインポスト」より。

TVアニメ「シャインポスト」より。

蟹沢 杏夏ちゃんはみんながあたふたしているところでも冷静なしっかり者なんですけど、ジョークのことになると周りが全く見えなくなって、杏夏ちゃんの世界に入ってしまうところが面白くもありかわいいポイントだなと思っています。

──公式サイトのキャラクター相関図では、紅葉以外のTINGSメンバーから「ジョークのセンスは残念」と辛辣な評価が下されています。

蟹沢 そうなんですよ! ひどい!(笑) あと杏夏ちゃんはアイドルとしての姿をすごく大事にしている子で、ハーフツインの髪型や大きいリボンにこだわりを感じますし、私服もピンク色で、リボンやフリル付きの服を着ています。街中で正体がバレて「キャー!」って言われるシチュエーションにも憧れがあるようなタイプ。“絶対アイドル”の螢さんを目標に淡々と努力を積み重ねている真面目な子なんですけど、アイドルとしてのプロ意識が強いからこその悩みを抱えています。私もアイドルとしての熱い気持ちを持っているので、そこは杏夏ちゃんと通じるところがあります。その熱さを杏夏ちゃんに注ぎながら演じられたらいいなと思いながら、アフレコに臨んでいます。

TVアニメ「シャインポスト」より。

TVアニメ「シャインポスト」より。

夏吉 理王は一言で言うと、全部がまっすぐで地続きなキャラクターです。ほかのTINGSメンバーは「こういう一面があって、でも裏ではこういうことを思っていて……」と二面性のある子が多いのかなって思うんですけど……理王にも嘘や隠しごとはありますが、でも理王の場合は真っ直ぐさゆえにそうなってしまっただけで、自分では裏表を作れない子なんですよね。そこがかわいいところです。真っ直ぐゆえに器用になりきれず、結果的にすごく子供っぽい振る舞いをして周りを困らせてしまう。その気持ちはすごくわかります(笑)。実はアフレコのとき、マネージャーさんに「日常シーンのギャーギャー言っている姿が、仕事してるときの夏吉さんそっくりですよ」って言われて(笑)。

長谷川 えー、そうなの!? でもたまに、はちゃめちゃなときはあるかも……。

鈴代 仲良くなってくるとその部分が出てくるよね(笑)。

夏吉 最初はそういうところが出ないようにがんばってるんだよ!(笑) でも理王は出さないようにがんばろうとしても、多分できないんですよね。だからこそ、ありのままに感情を出して人と仲良くできるところはすごく憧れます。気持ちがわかるからこそ恥ずかしくなるときもあるけど、こんなふうに真っ直ぐでありたいなと思える、演じていて大好きなキャラクターですね。

TVアニメ「シャインポスト」より。

TVアニメ「シャインポスト」より。

長谷川 雪音ちゃんは、演じることになったとき「まさか私が」と思ったキャラクターでした。これまで雪音ちゃんみたいなカッコいい役を演じたことがなくて、お芝居の引き出しがまったくなかったので「どうしよう」と。それに雪音ちゃんは元子役でお芝居が上手という設定なんですが、普段から何かを演じているキャラクターなので、まず祇園寺雪音ちゃんが誰かになりきっていて、その奥に伝えたいことがあって、さらにその雪音ちゃんを私が演じるという……必ずしも本当に言いたいことを言っているわけではないことも多くて、そういう表現がすごく難しかったです。及川監督にも駱駝先生にも「雪音は難しいキャラクターなのでがんばってください」と言われました。

──長谷川さんもお芝居を生業にしているというところで、共感できるポイントはありましたか。

長谷川 「お芝居はやったことがあるけど、アイドルは初挑戦」という点は同じなので、そこは共感できました。自分が今まで培ってきた表現がアイドルの仕事では生かされない、「この現場はこうじゃないんだ」という経験があると、「雪音ちゃんもきっとこういうふうにアイドルの現場とお芝居の現場の違う部分を感じているんだろうな」と思います。

中川 紅葉は年齢が理王と同じ最年少で、アフレコ前にもらった資料には「傲慢おバカキャラ」って書いてあったんです。だから当初はわんぱくな、アイドルグループに1人はいる妹系の元気な子なのかなって思っていたんですけど、実はアフレコを進めていくにつれて、一番大人な性格だということがわかってきて。普段は大人っぽいところを出さないんですけど、ふとしたときに誰かに寄り添える、「誰かを1人ぼっちにさせたくない」というキャラクターなんです。私自身も「こういう、常に周りを気にかけられる人になりたいな」って、演じていて姿勢を正されます。

TVアニメ「シャインポスト」より。

TVアニメ「シャインポスト」より。

──誰かに寄り添うキャラというのは、原作小説を読んでいても強く感じました。

中川 いい意味で自我がないというか。悩んでいる人や、1人で寂しがっている人がいたら、その人の悩みが紅葉の悩みになる、という子なんですよね。もちろん子供らしい部分やかわいらしい部分もちゃんとあって、紅葉は天然おバカなので、私も気付かないぐらいサラっと天然ボケを言うんですよ。みんなスルーしてるけど、よく考えたらこれボケてるよね、みたいな(笑)。最初は雪音がツッコんでくれていたのに……(笑)。

長谷川 最初の方は雪音が全部回収していたので大変だったんですけど、話数を重ねるにつれてスルーというスキルを覚えたみたいで、すごく楽ですね(笑)。