TVアニメ「SHAMAN KING」特集 日笠陽子(麻倉 葉役)インタビュー|不安なとき、葉が「なんとかなるさ」と言ってくれる

不安に押し潰されそうなとき、
葉が「なんとかなるさ」と言ってくれる

──葉についても伺っていきたいと思います。日笠さんにとって、葉の魅力はどんなところにあるのでしょうか。

麻倉 葉(CV:日笠陽子)。「シャーマンファイト」に参加するため上京してきた、霊が視える少年。ユルい性格で、口癖は「なんとかなる」。あるとき600年前の侍の霊・阿弥陀丸と知り合い、彼を持霊にする。

ユルさ、ひいては心の大きさ、懐の深さなのではないかと思っています。たぶん、彼の中で本当は考えていることや、感じていることっていっぱいあると思うんです。でもそれをすぐには表に出さないで、例えば誰かに対して怒っていたとしても「自分にとってはこう見えている物事でも、相手の立場から見たらまた違ったふうに捉えられるのではないか」と考えることができる。中学生とは思えないほど大人びた考え方の持ち主ではないのかと思っています。

──原作のバトルシーンでも、戦っている相手のことを受け容れようとしていたり、彼らが抱えているものを理解しようとしていたりする印象がありますよね。戦うときの葉を演じる際に、気を付けたことはありますか。

1クール目の話数を収録しているときは、よく音響監督さんに「どの役と戦っていても、気持ちで負けないで」と言われたので、そこは意識するようにしました。私は戦いから逃げがちというか、ちょっとへっぴり腰なんですかね(笑)。相手を大ベテランの先輩方が演じているということはもちろんありますが。

──序盤から蓮やファウストⅧ世をはじめ、強敵と戦いますよね。

そうですね。この頃の葉はまだ修行中の身という感じで、心のブレがあります。ライバルとの戦いでまん太がピンチになったときに動揺したり。それがだんだんいろんな人との出会いや戦い、修行などを経て成長していきます。だから、序盤の葉は「ユルくない」と思われる方もいるかもしれないのですが、音響監督さんと相談しながら、そのブレ、心の振幅を表現していきました。

──収録の際、武井先生からアドバイスをいただいたことはあったのでしょうか。

収録がスタートした頃はよく顔を出してくださって、私があまりに不安そうな顔をしていたからかもしれないのですが、「自信を持って!」と言われましたね(笑)。

──励まされたんですね。

武井先生も心の奥底にいろいろなものを抱えていらっしゃるんじゃないかと思うのですが、それをあまり表に出さない、穏やかな方なので「本当にこの人から葉が生まれたんだな」と感じました。

──これまでの収録で、特に気合いを入れて葉を演じたエピソードはどこでしょうか。

ファウストⅧ世(CV:子安武人)。ドイツ出身のネクロマンサーで、職業は医者。亡き最愛の妻を蘇らせるため、シャーマンファイトに参加した。

やっぱりファウストとのエピソードかな。葉が自分の生い立ちを語る話ですし、彼にとってまん太がどれだけ大切な存在なのかわかるシーンや、珍しく激昂するシーンもある。これはかなり覚悟を決めていかねばならないと思いながら臨んだエピソードでした。

──確かに原作でも、ここでは葉がそれまで見せなかった側面が描かれます。

あと、このエピソードはファウスト役の子安(武人)さんのお芝居が本当に素晴らしかったですね。子安さんは2001年版シリーズからファウスト役を続投されていますが、以前よりもマッドさが増していて。普段お会いするときの子安さんは気のいいお兄ちゃんなのですが、改めてすごさを見せつけられて悔しいです。「ずるいな」と(笑)。

──2001年版シリーズでも、子安さんの演技は印象的でしたよね。逆に、これからの収録で掛け合いを楽しみにしているキャラクターはいますか。

X-LAWSのメンバーです。子供の頃に2001年版シリーズを見ていたときはあまり理解していなかったのですが、この作品には本当にいろんな正義があるんですよね。誰も悪くないというか。X-LAWSもそんな正義を持っている勢力の1つで、規律が厳しくて、自分たちが信じるもの以外をシャットアウトしている人たち。そういった対話が難しく、考え方も異なるキャラたちと、葉がどんなふうに関わり戦っていくのか……。演じながら、いろいろなことを考えさせられそうだなと思っています。

──どんな掛け合いになるのか楽しみですね。これから葉とは長い付き合いになりますが、日笠さんが彼を演じていくにあたって「ここだけはブレないようにしよう」という軸に据えているものがあれば、教えていただけますか。

そうですね……。「なんとかなるか」という心構えですかね(笑)。

──葉らしく、ということでしょうか。

葉を演じていく中で「なんとかなるさ」というセリフが出てくるのですが、言っているうちに「あ、本当にそうかも」と教わることがありますね。「SHAMAN KING」の収録では、不安やプレッシャーに押し潰されそうになった瞬間も、どこかで葉が「なんとかなるさ」「なんとかなるなる」みたいに声をかけてくれている気がします。「やるっきゃない、なんとかなる」という気持ちで臨んでいます。

この時代だからこそわかる、「SHAMAN KING」の魅力

──最後に、作品を楽しみにしている方へのメッセージをいただければと思います。まずは改めて、「SHAMAN KING」という作品の魅力をお聞かせください。

原作の「SHAMAN KING」は、禅の道に通じるような物語だと思います。「自分の信念ってなんだろう」と考えているキャラクター同士が出会って「人と関わっていくのは難しいけど、いろんな見方があって、面白い」ということを経験していく。「答えは見つからないね」と悩んでいく。1人ひとりが自分の信念について考えながら生きている、今の時代にも通じるところがあります。本当に20年前くらいに連載されていた作品なの?と思うくらい。

──先ほどおっしゃっていた、いろんな視点からものを考えようとするという葉の魅力とも通じる話なのでしょうか。

TVアニメ「SHAMAN KING」より。

そうですね。だからバトルもののアニメとして面白く観ていただきたいのはもちろんなのですが、この時代だからこそ見える、作品の奥底にある光のようなものを見つけてもらえたら、よりうれしいです。今はこの「SHAMAN KING」という作品をいちから積み上げて作っているところで、支えてくださるキャストの皆さんと一緒に演じていく中で、葉という存在が少しずつできあがってきています。1人でも多くの方にいい作品だな、面白いなと思ってもらうことが私の使命ですし、その使命をまっとうしている最中ですので、原作や2001年版シリーズのファンの皆さんにも、また「SHAMAN KING」に触れたことのない方にも観ていただきたいですね。