コミックナタリー PowerPush - 謝男 シャーマン
「俺はいつも、強さとは何かを描いてきた」土下座哲学を打ち立てるまでの経緯を語る
来年の今頃は日本中が「謝男」という言葉を知ってるだろう
──そんな拝一穴の名前は、板垣さんの師匠である小池一夫さんの代表作、「子連れ狼」の拝一刀を想起させますね。
そう、そこからきています。拝って名前はいかにもじゃない。で、下の名前は一穴主義の一穴で、下品にひねってまとめてみた(笑)。
──小池さんにはご報告されたんですか。
劇画村塾出身の人間は小池先生を塾頭と呼ぶんだけど、塾頭に電話をして「新連載のキャラクターに拝の名前を使いたい」って申し込んだら、大喜びしてたよ。「もうどんどん使ってくれ」って。だから俺としてはね、拝一刀の末裔と考えたっていいんじゃないかと思ってる。
──「謝男 シャーマン」にそんな裏設定が?
今後の展開で匂わせるかも知れない。弟子としては師匠の「子連れ狼」をね、少しでも思い出してもらいたいという気持ちもありますし。
──そして名前と言えばそもそも「謝男 シャーマン」というネーミングセンスが脱帽ものですが、これはどんなシチュエーションで思い付かれたんでしょう。
思い付いたときのこと、よく覚えてますよ。俺の打ち合わせはいつも、歩きながらなんです。そのほうが考えがダレないんだよね。おかげで担当編集は7kg減量したらしいけど。で、いつもどおり仕事場の先にある公園を歩いてるとき、タイトル考えようってことになって、あれは公園のトイレの前を通り過ぎるときだったんだけど、担当に「これはまあ仮名なんだけど……謝る男と書いて謝男(シャーマン)ってどうだ?」って。
──字面ごと降ってきたんですね。タイトルが。
そう。「謝罪であり、感謝であり、祈祷師であり……良いと思わないか?」って聞いたら、担当は「謝男……これは仮名というより、決まりですね」と。近所の公園で即決しました。
──あらためてネーミングを自己採点していただけますか。
文句ない、100点満点だと思ってる。幾重にも意味が込められていて、どの角度から見ても隙がない。さらに口にしたときの語感も良い。もう来年の今頃はね、日本中が知ってる言葉ですよ(笑)。
ドラマ化を想定しているから、あくまで学園ものとして
──来年とおっしゃいましたが、「謝男 シャーマン」が今後どういう展開を見せるのか、今のところまったく予想がつかない雰囲気です。
俺だって予想がつかない。誰か知ってるなら教えてほしいですよ。
──作品の着地点みたいなのは決めてらっしゃらないということですか。
そうですね。次回のことは次回考えればいいって考え方。おおむね確かこっちだよね、くらいの方向性を持っていればそれでいいと思ってます。「範馬刃牙」をあと10話で終わらせると発表したとき、俺は最終話までどうするかなんて、考えてなかったからね。ちゃぶ台ひっくり返すシーンのあと考えてなかったんだから。
──その逸話は他のインタビューでも読ませていただきましたが、本当だったんですね。
当然不安も強いストレスもあったけど、でもそれ以上に自分に対する期待もあったし、何より刃牙と勇次郎っていう親子に対する信頼がすごく強かったんで。こいつらならやれる、何らかの決着を付けられるっていうのが。だから「謝男 シャーマン」も、自分と拝という男を信じて進んでいこうと思ってますよ。
──ということは「謝男 シャーマン」は学園ものというより、拝の一代記として描かれていくんでしょうか。
いや、あくまで学園ものとして描いていくつもりです。なぜなら構想段階からTVドラマ化を視野に入れてますから、あくまで学園ドラマのフォーマットの中で展開したほうが、ドラマ化されやすいんじゃないかと(笑)。いずれにせよ「謝男 シャーマン」がどうなっていくのか、自分でも楽しみにしています。
比類なき土下座漫画スタート!! あの板垣恵介が魅せる圧倒的境地!! 感謝、謝罪、祈願、様々な局面で繰り出されるフォーム!! それが生み出す奇跡を体感せよ!! 満を持して放つ本気の板垣ワールド、ここに開眼!!!!!!!!!!!
板垣恵介(いたがきけいすけ)
1957年4月4日、北海道出身。高校を卒業後地元で就職するが、後に退職し20歳で陸上自衛隊に入隊。習志野第1空挺団に約5年間所属し、アマチュアボクシングで国体にも出場した。その後身体を壊して自衛隊を除隊し、様々な職を経験しながらマンガ家を志す。30歳のとき、漫画原作者・小池一夫の主催する劇画村塾に入塾。ここで頭角を現し、「メイキャッパー」でデビュー。1991年に連載スタートした「グラップラー刃牙」は、「バキ」「範馬刃牙」とシリーズを重ねることで、格闘マンガの新たな地平を切り拓いた名作となった。他の代表作として、「餓狼伝」(原作:夢枕獏)、「バキ外伝 疵面」(作画:山内雪奈生)、「謝男 シャーマン」などがある。