アニメ「シャドーハウス」|自らもとことん参加、ソウマトウが語るスピード感あるアニメ制作の舞台裏

TVアニメ「シャドーハウス」の放送が4月10日にスタートするのに併せ、コミックナタリーでは同作の特集を展開している。第3弾となる今回は、満を持して原作者のソウマトウが登場。アニメ化決定から短期間で放送までたどり着いたスピード感のある制作の舞台裏や、顔がなく表情の見えない登場人物をメインに据えた原作が生まれるまでの背景、原作・デザイン担当のり、作画担当ひっしからなる2人組ユニットであるソウマトウがコンビを組むまでのエピソードなどを語ってもらった。なお本インタビューには、のり、ひっしではなくソウマトウとして回答してもらっている。

取材・文 / はるのおと

「アニメ化しづらい作品だろうな」と思っていた

──ソウマトウさんはいつ頃アニメ化の話を聞いたんでしょう。

原作「シャドーハウス」の単行本4巻。第50話までが収録されている。

2019年に50話くらいまでの無料試し読みをWeb上で行ったのですが、その反響が大きい中で、アニメ化が決まったことを聞きました。

──無料公開ってそんなに効果があるものなんですね。

「シャドーハウス」は出だしの頃は割と地味に連載していたんですが、無料公開のタイミングでいろいろな方にTwitterなどで感想を語ってもらえるようになったり、紙の単行本が売り切れたりしたんです。無料公開については担当さんに提案されたときに「どうせ読んでいる人が少ないんだったらやってみようかな」っていう感じで承諾しました。そんな中でアニメ化の話を聞いたときは「そんなことある?」という驚きが大きかったです。決定後にはすぐに制作が始まったのでとてもスピーディでした。

──アニメ化決定から短期間で放送開始というスピード感だと、喜んでいる間もなかなかなさそうですね(笑)。

決まったときはもちろんうれしかったですけど、それよりずっと「アニメ化しづらい作品だろうな」と思っていたし、そもそも何か形あるものが見えないとあまり信じないタイプなので実感が湧かなかったんです。「この企画もなくなるかもな」と思っていたくらいでした(笑)。だからアニメ化が発表されて以降のほうがようやく実感が湧いて喜べています。

──ソウマトウさんはアニメにどのように関わっているのでしょうか?

「シャドーハウス」のPVより。

主な工程はほぼすべて監修させていただいています。アニメ化が決まった際に「関わるなら全部関わる、関わらないなら全然関わらないほうがいい」と担当さんに助言をいただいたので、「どうせならできるところまでやろう」と関わることにしました。ただ脚本の監修はかなり重く、連載と並行して行うのは体力的に大変でした。

──1話を拝見して驚いたのがエミリコの設定に関するオリジナルの展開でした。そういった部分の監修が大変だったのでしょうか?

あれは原作でも、もともと描こうと思っていたのですが、「特に重要でもないかな」と思って使わなかった話なんです。そこはもともとあった話を付け足しただけだったんですが、脚本会議をしていた段階ではまだ原作で出していない要素やエピソードもアニメで描くという話になって、その調整が大変でした。連載中のエピソードでやっていることの2歩先ぐらいの話のプロットも考えて、そこに近づくような話や要素をアニメの脚本に入れ込むという、気が狂いそうな作業でした(笑)。

──では原作とアニメを見比べるのも楽しそうですね。大変とは言え、アニメに関わる作業は新鮮だったのでは?

初めて部屋の外に出て、お屋敷の一角を目の当たりにしたエミリコ。

はい。アニメのことを知らないというか制作のノウハウがなかったので、どういうふうに進行するのかっていうのも最初はわからなかったんですけど。まずは連載用に作成していた資料をお渡ししたんですが、館の3Dデータなど膨大に作っていたので、「この間取りがこうなっています」といった話はスムーズでした。あと「シャドーハウス」は海外向けにカラー版を作っているんですけど、その資料はアニメの色彩設定に役立ったようです。そういう意味ではアニメ化に際して作らなきゃいけない設定資料が少なかったかもしれないですね。

すすの出方やこびりつきの動きまで監修

──ソウマトウさんは、アニメを観られてどんな印象を抱きましたか?

思っていた以上に重厚な雰囲気でびっくりしました。キャラクターの線画やそこに色が乗ったものは監修していたので知っていましたけど、それだけだと仕上がりのイメージができなかったんです。でも背景が付いて撮影処理されたものを観ると原作の印象と近く感じました。

「シャドーハウス」のPVより。 すすと対峙したエミリコ。

──演出的な部分ではいかがでしょう?

すすが動いたり、エミリコが画面をコロコロと動きまわったり、生き人形たちの口ずさむ歌に曲が付いたり。マンガではできない表現に感動しています。

──すすに関しては「あんなふうに動くんだ」と納得感がありました。あれも監修されたのでしょうか?

すすやこびりつきはパターンをいくつか出していただいて、それからすり合わせしていきました。

──ちなみにどんなパターンがあったのでしょうか?

すすだとふわーっとしているとか、ギュッとしているとか出方が違いました。こびりつきだと動きが違って、緩慢だったりゴキブリみたいに素早く動いたりとか。そういったパターンもありました。けっこう試行錯誤していただいていますね。