ソウマトウ原作によるTVアニメ「シャドーハウス」の放送が、いよいよ4月10日にスタートする。同作の特集を複数回にわたって展開中のコミックナタリーは、その第2回として原作ファンを公言する高杉真宙へのインタビューを実施した。
Webサイト・幻冬舎plusで連載中の自身のマンガ評「漫画喫茶・タカスギへようこそ」をはじめ、ダ・ヴィンチ(KADOKAWA)、「王様のブランチ」「メレンゲの気持ち」などさまざまな場所で「シャドーハウス」をおすすめ作品として挙げている高杉。聞けば「シャドーハウス」とは2020年の新型コロナウイルス感染症の流行に伴う自粛期間中に出会い、自身が2020年に読んだマンガの中で一番の作品だったという。インタビューではその魅力の源泉や、実際にアニメ第1話を視聴してもらったうえでのアニメ化に寄せる期待などについて尋ねた。
取材・文 / はるのおと 撮影 / ヨシダヤスシ
森薫さんの「シャーリー」を思い出していたけど……
──高杉さんはどういったきっかけで「シャドーハウス」を読んだのでしょうか?
1年くらい前、自粛期間が始まって「何か面白いマンガないかな」と探していたときに、ちょうどWebで「シャドーハウス」の1、2巻が無料で公開されていて。それで初めて読みました。最初は絵のきれいさに惹かれて読んでいたんです。「主人とその世話係の話だから、言ってみれば『シャーリー』みたいだな」なんて思いながら。
──「エマ」「乙嫁語り」で知られる森薫さんの作品ですね。
そうです、絵の細かい感じが似ていますし。ただ「シャドーハウス」は日常ものなのかなと思っていたら、徐々に彼女たちが暮らす館に関する謎が出てくるじゃないですか。そこからどんどんお話にハマっていって。1、2巻を読み終えてすぐに続きを買いに行きましたし、ソウマトウ先生の過去作「黒-kuro-」も読ませていただきました。
──高杉さんは作者の過去作品なども“掘る”タイプのマンガ好きなんですね。
そうですね(笑)。「この作者さんはほかにはどんな作品を描いてるのかな」と思って読むことが多いです。「シャドーハウス」も「黒-kuro-」もダークファンタジーという点が共通しているし、ほのぼのとした空気から入って、徐々に不穏な空気を出してくる感じが似ていますよね。
──確かに。ちなみに幻冬舎plusでのご自身の連載「漫画喫茶・タカスギへようこそ」や雑誌、テレビ番組で「シャドーハウス」を推薦されているのをお見かけしていたのですが、同業者の方や友達にも薦められましたか?
薦めました。自粛期間にたくさん読んだのも含めて、僕が2020年に読んだマンガで1位だったので、紹介させてもらっています。だからアニメ化されると聞いたときはうれしかったし、「あの絵が動くんだ」と想像して楽しみになりました。
「説明に困るマンガ」、でも面白い
──ここからは「シャドーハウス」の見どころについて、具体的に伺っていきます。まずストーリーですが、高杉さんは以前、「漫画喫茶・タカスギへようこそ」で本作を「ダーク要素やミステリー要素などが含まれていて、ジャンル分けするのがかなり難しい漫画です」と評していました。
いつも「説明に困るマンガだな」と思います(笑)。先ほども少し触れましたが、最初はほのぼのしたギャグっぽいところもあるのに、徐々にダークな要素やミステリー要素が入っていくんですよね。しかも序盤にも伏線やちょっと不思議なことがあって、それらがあとで回収されていく面白さもあります。本当に先の展開が読めないんですよ。シャドーや生き人形は実はどういう存在なのか、なんて最初は全然想像できなかったです。
──シリアスな中に、ちょっとギャグっぽい描写が入る、あの力の抜けた感じもいいですよね。
はい。ストーリーだけ見るとどんどん重くなっていくけど、エミリコをはじめ、キャラクターの元気や勇気のおかげでそれが軽減されるんですよね。僕は“お披露目” というエピソードが好きなんですけど。
──“お披露目”は、子供のシャドーが成人するための試験ですね。エミリコとケイトも、同期のメンバーと一緒に挑戦します。
あそこは新しいキャラクターが続々と出てくるし、シャドーハウスの謎の確信に迫っていくところもある。そして同期のシャドーや生き人形が少しずつ仲間になっていく感じもいいんですよね。
──本作はジャンルとしては少年マンガ、というわけではないですけど、そういった要素も含まれている。
そう、まさか「シャドーハウス」であんな熱い話があるとは思ってもみませんでした。そんな感じで、ダークでサスペンス的な要素もありつつ驚きの展開や熱いところもあるし、絵もかわいらしいので、スルスル読めます。
──その絵については、どんなところに魅力を感じますか?
僕は絵が描き込まれている作品が好きで、そこからハマりました。こういうゴシックな雰囲気の作品って、洋服とか家具とか描き込まなきゃいけないものが多いし、すごく大変だと思うんですけど。あと驚きなのは「シャドーハウス」ってトーンを使ってないんですよね。物の影とかもトーンでなく線だけで表現していて、すごいですよ。
──作者の強いこだわりを感じます。
それと、顔が見えないシャドーだからできる話や演出も好きです。シャドーのケイトが笑ったか笑ってないかというエミリコとのやり取りとか、シャドーが起こしたとある事件の犯人がわかってない状態だけど、その犯人の表情を見せるとか。ああいうのもいいですよね。
──キャラクターについてはいかがでしょう。好きなコンビはいますか?
ジョンとショーンもボケとツッコミで元気なコンビだから好きなんですけど、どれか一組選ぶならパトリックとリッキーです。パトリックが好きなんですよ。最初はあんなにツンケンしていたのに、6巻ではあんなことがわかって。今後どうなっちゃうんだろう……。
──ネタバレになるので先のほうの話は避けましょう(笑)。もし「シャドーハウス」が実写化したら高杉さんは誰を演じてみたいですか?
僕、趣味で読んでいるマンガは実写のことをなかなか考えられないんですけど……やるならシャドー?
──どう黒ずくめになるのか難題ですね(笑)。
あとはやるとしたら少し強そうな成人済みのキャラクターでしょうか。
──今日の撮影の高杉さんは強キャラ感が出てましたよ。
本当ですか? 「貴族っぽくティーカップ持ってください」と指示されて、「貴族っぽくってどんなんだろう」と必死に考えながら撮られていましたけど(笑)。撮影中にパンを食べられたのはうれしかったです。TVアニメの第1話を先に拝見したんですが、エミリコがパンを食べるところでとても喜んでいたのが印象的で、自分も食べたくなっていたので。
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TVアニメは想像通りの「シャドーハウス」で感動
2021年4月10日更新